ストップ・リバウンド -コロナ禍 いま、私たちがすべきこと-

prologue 緊急事態宣言、長いトンネルの出口は

この約1年間で、2度の緊急事態宣言が出された。新型コロナウイルスの感染者数は予断を許さない状況ではあるものの、ピーク時と比べると減少している。

ようやく長いトンネルの出口が見えてきたのだろうか。

ただ、「第2波」「第3波」と続いたように、感染の「波」はまた襲ってくる可能性がある。今後、緊急事態宣言が解除されたからといって、すぐにコロナ禍前の日常が戻ることはない。

  • 2020年に中止された行事やイベント、
    今年は開催できるのだろうか

  • 大切な人に気兼ねなく会える日は、
    いつやってくるのだろうか

この1年、誰もが不安を抱えながら過ごしてきた。もう2度と、感染の「リバウンド」を繰り返すわけにはいかない。

冬を越えれば、その先に春はやってくる。日常を取り戻せるかどうかは、これからの私たちの過ごし方にかかっている。

chapter1 もう繰り返せない、新型コロナウイルスが奪ったもの

重すぎる負担、悲鳴をあげる医療現場

そもそも「医療崩壊」とは

医療崩壊とは、一般的には「必要とされる医療」が「提供できる医療」を超えてしまうことを指す。

提供できる医療は医師、看護師、放射線技師、薬剤師などの医療従事者や、人工呼吸器、ECMO(体外式膜型人工肺)などの医療機器などによって制限がある。

新型コロナの患者数の急激な増加は、新型コロナ以外の患者への医療にも大きく影響を与える。

  1. 01

    医療現場に重い負担が続く

    重症者用病床の使用率が高止まりした。救急患者の受け入れ先がすぐに決まらない「搬送困難」なケースも、全国で増加した。通常の診療や急患、手術にも影響が出る病院が相次ぐなど、重い負担がのしかかっている。

    全国の救急搬送困難事案の発生件数

    ※「救急搬送困難事案」とは、救急隊による「医療機関への受け入れ照会回数4回以上」かつ「現場滞在時間30分以上」の事案として、各消防本部から総務省消防庁あてに報告のあったもの

    出典:
    総務省消防庁
  2. 02

    医療従事者からの声

    Yahoo!ニュースのコメント欄に、この1年、重い負担に苦しんできた医療従事者の声が届いている。一部抜粋して紹介する。

    コロナ受け入れ病院で勤務しています。病院は一杯一杯です。他の病気の方が入院できず先延ばしになっています。感謝の言葉は不要です。それが仕事ですから。ですが、我々医療職のことを案じてくださるのであれば、行動で示してください

    最前線で働いてる方にと言う声をものすごく聞きます。当然私自身も、大変な思いをしている同志がいること理解しています。でも最前線だけが影響を受けているわけじゃないんです。系列病院がコロナの受け入れを対応しているからと、うちの病院から人が派遣されていきました。ということはうちの病院が手薄になるということ。でも仕方ない、みんな頑張ってるんだからって思って踏ん張るしかないんです。患者さんはいますから

    同業職種の皆様へ、この様なご時世ですが社会がどう変わろうが、医療が進歩しようが最後は人間の温かさ、優しさ、お互いを思いやることが最大の治療・感染予防だと改めて思います。もう少し、もう少しだけ頑張りましょう

    出典:
    【#最前線からあなたへ】医療現場で対応にあたるみなさん、思いを書きませんか?
  3. 03

    医療従事者の家族にも差別や偏見が

    新型コロナは人々に不安や恐れを引き起こし、嫌悪・差別・偏見も生まれた。日本医師会は、2020年10~12月に起きた医療従事者らへの風評被害が全国で約700件あったとの調査結果を発表。感染した医療従事者やその家族は「風評被害の拡大を恐れ、針のむしろに置かれたような気持ちでの生活を余儀なくされることがある」と日本赤十字社は指摘している。子どもの保育園・幼稚園などから登園自粛を求められるなどの事態も報告された。

    出典:
    日本赤十字社日本医師会日本災害医学会

コロナが変えた、私たちの「当たり前」

  1. 01

    迎えられるはずだった「日常」

    感染拡大によって、これまでの「当たり前」は音を立てて崩れ去ってしまった。

    「お世話になった人にお祝いしてもらう結婚式を挙げたい」、
    そう願うことも許されないの?

    県外に住む家族は病院に入ることができない。
    最期の別れにすら立ち会えないなんて

    目標としていた最後の大会が中止になってしまった。
    青春を懸けていたのに

    こうした悲痛な叫びの数々を、何度耳にしただろう。

    感染への懸念から、冠婚葬祭や学校行事などは軒並み中止に。妊娠届の件数も減っていて、妊娠や出産を控える人が増えたとみられる。

    コロナ禍は、大切な人生の節目にも、暗い影を落としている。

  2. 02

    コロナが奪った「雇用」 突然、終わりを告げた「学生生活」

    新型コロナの影響で 倒産した企業の数
    1000件以上
    倒産発生累計件数(各月20日時点の数値)

    業種別上位

    • 飲食店

      168

    • 建設・工事業

      89

    • ホテル・旅館

      79

    この春に卒業予定の高校生を
    対象にした企業の求人数
    37万人 (前年同期比) 20%減

    2020年10月現在

    この春に卒業予定の大学生の
    就職内定率
    82% (前年同期比) 5ポイント減

    2020年12月現在

    2020年4~12月に 中退した学生
    28000

    (うち約1300人が新型コロナの影響と確認)

    2020年12月現在

    出典:
    帝国データバンク、厚生労働省、文科省
  3. 03

    不安が増大し差別やデマが生まれた

    コロナ禍は人々の心につけ込み、「争い」や「疑心」を生んだ。

    感染者やその家族に対する誤解や偏見による差別被害が発生。感染が発生した施設を感染源のように扱ったり、お店の営業を再開したら「なぜ営業しているのか」と電話で罵られたり、といった事例が報告されたという。

    一方、不安や恐怖から生まれた憶測やデマなどが社会問題に。特に2020年2月末頃のトイレットペーパーに関する誤情報は、全国でトイレットペーパーなどの紙製品の買い占め問題にも発展した。

    トイレットペーパーなどの紙製品の買い占め ティッシュ トイレットペーパー購入制限

    また、新型コロナの流行に伴う外出自粛などの行動制限によって、不安やストレスを感じる人が相次ぎ、緊急事態宣言中の2020年4〜5月に「何らかの不安を感じた」とした人は63.9%に上った。

    出典:
    大田区、総務省、厚生労働省

chapter2 最後の緊急事態宣言にするために、私たちにできることは?

政府が警戒「コロナ慣れ」

感染防止対策として「自粛」が呼びかけられるようになってから約1年。政府は国民の「緩み」を警戒している。

Yahoo!ニュースでは、危機意識が緩む「コロナ慣れ」の実感を問う調査を実施。回答した約27万5000人のうち、コロナ慣れを「感じる」「やや感じる」と答えた人が全体の90%を超えた。

出典:
Yahoo!ニュース みんなの意見
危機意識が緩む「コロナ慣れ」、感じますか? 感じる77% やや感じる14% 感じない5% あまり感じない3% 分からない/その他1%以下

いま、私たちがすべきことは?

感染拡大を止めるため、私たちはいま、何をすべきなのか。また、国内で接種が始まったワクチンにどう向き合えばいいのか。感染症専門医の忽那賢志先生に聞いた。

感染症専門医

忽那賢志先生からのコメント

Dr.Satoshi Kutsuna

過去最大の規模となった第3波は、2021年1月上旬にピークを迎えましたが、緊急事態宣言後徐々に感染者数は減少し、3月上旬には緊急事態宣言が解除される見込みです(編注:2月時点のコメントです)。1月の間は高齢者や基礎疾患のある人など、本来新型コロナと診断された時点で入院すべき方々も自宅療養を余儀なくされるなど病床のひっ迫が問題になりました。2月以降、徐々に状況は改善されてきています。これも皆さんのご協力のおかげです。医療従事者の一人として心より感謝申し上げます。

新規感染者数が減り、緊急事態宣言が解除されたとしても、これで新型コロナの問題が終わったわけではありません。過去に流行を繰り返してきたように、今後また第4波、第5波と流行が訪れる可能性は高いでしょう。それを防ぐためには緊急事態宣言解除後も、マスク着用、3密を避ける、こまめな手洗いといった基本的な感染対策は継続しなければなりません。

2月17日からまずは医療従事者を対象にワクチン接種が開始されました。今後、高齢者や基礎疾患のある方など接種対象者が広がっていきます。ワクチンを接種するかどうかは効果と副反応とを十分に吟味し、個々人が判断するべきものですが、新型コロナの収束につながる可能性のある希望の光です。信頼できる情報源から正しい情報を得て、接種についてぜひご検討ください。

基本的な感染対策 マスク着用 3密を避ける こまめな手洗い

医療従事者からあなたへ

長引くコロナ禍によって私たちの生活は大きく変わり、疲労も色濃くなってきた。

気の緩みが警戒される現状を、最前線でコロナと向き合う医療従事者はどう見ているのか。29万人以上の医師が登録する日本最大規模の医療従事者向けサイトm3.com(エムスリー)に寄せられた、医療従事者の声を紹介する。

  • 外科部長

    関東 50代

    昨年2月のコロナの院内発生以来、夏休みもなく年末年始の休暇もなく働いている医療者がいることを一般の患者さんには知ってほしい。特に流行初期に風評被害を受けた際には、職員全体が精神的に強い不安感を持つような状況に陥ったことも知ってほしいと思います。また入院患者のご家族への病状説明に毎日2時間くらい電話説明をしているストレスは本当につらく、ご理解いただけたらと思います。

  • クリニック院長

    九州・沖縄 50代

    医療従事者の大半は感染対策も徹底し、外出も極力控えていると思いますがそれでも感染することはあり得ます。その際に根も葉もないうわさ含め誹謗中傷をされるという話を実際聞きますと本当につらく思います。中には家族間でも亀裂が入ってしまう事例を聞くとさらにやるせなくなります。

  • 産婦人科

    関東 60代

    最近外来の受診控えが目立つ。特に検診は自覚症状が始まる前に異常を見つけるのが目的で行われるので、悪性腫瘍など自覚症状が出た時には進行してしまっているという事態になりかねない。来年度が心配だ。また定期的な投薬をしている人で服薬を中断し、病状が悪化して来院するケースも以前より多い印象がある。受診控えを防ぐためにも早く医療者に予防接種を打って、受診は危なくないという風潮にしたい。

  • 総合病院外来看護師

    中部 50代

    今既に市中感染が起こっている中、常に自分がかかっているかもしれない。だとしたら、どのような行動を取るべきか?と、常に想像しての行動をする。そして不幸にも罹患(りかん)してしまった方が戻って来た時には心からねぎらいの言葉をかけてほしい。

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いま、悩んでいるあなたへ

Yahoo!ニュース 新型コロナウイルス 不安や悩みを抱えていたら

新型コロナによる影響で、心の不調や生活への不安を感じる人が増えています。身近な人に助けを求めることに加え、相談に乗ってくれる窓口を活用する方法もあります。相談先をまとめました。

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