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「成人」が20歳から18歳へ――契約トラブル、結婚、年金、少年法、みんなはどう考えた?

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きょう1月10日は成人の日。今年、「成人=20歳」という考え方が変わる。2022年4月1日に18歳、19歳の人は、この日から成年に。明治時代から140年以上変わらなかった「大人の基準」が改定される。成年年齢の引き下げについてYahoo!ニュースがユーザーにコメント欄で意見を求めたところ、800件を超えるコメントが寄せられた。「社会参加への責任意識が増す」という肯定的な意見もあれば、契約トラブルなどに関する不安の声も。成人式はいつ行われる? 少年法や年金はどうなる? 結婚は何歳から? さまざまな疑問に専門家が答える。(12月7~8日のコメント、計806件を基に構成)(監修:京都産業大学教授 坂東俊矢/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

なぜ成年=18歳に?

2016年、若い世代に政治への意識を高めてもらおうと選挙権年齢が20歳以上から18歳以上へ引き下げられた。これにより高校3年生を含む18歳、19歳の若者も選挙に参加できるようになった。そうした中、市民生活の基本法である民法でも、18歳以上を「大人」として扱おうとする議論がなされ、2022年の4月から成年年齢を18歳に引き下げることとなった。

Yahoo!ニュースコメントに集まった期待と不安の声

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期待の声については、成年年齢引き下げによって、責任感が養われ、自立への一歩になるという意見が多く寄せられた。「自分のやったことにケジメをつけさせるためにも、成年年齢の引き下げには賛成」といった声や、「犯罪に関しては18、19歳を未成年扱いしてほしくない」などの少年法に関する指摘があった。「選挙権も18歳なのだから一律でよい」と、「基準」をそろえたほうがよいというコメントも。「高卒で上京して就職したので、社会人になってから『未成年のため親権者の同意が必要』という書類に出くわすたび、親に郵送して返送してもらって面倒だった」など、経済的自立が早かった人からの賛同もあった。

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不安の声について特に多かったのは、契約トラブルに関する声。「18歳でだまされて借金だらけになる人が続出したりするのでは。従来なら20歳未満までは未成年者取り消し権が使えていた」「マルチ商法や借金など、友人とお金が絡むことを、その場の空気に流されずにきちんと拒否できるのか不安」など、分別がつかないうちに金銭問題を抱えることを危惧する声があがった。「学校教育の中に実社会で通用する実践的な経済の仕組み、お金のこと、社会に出ることの責任を学べるようにすべきだ」といった教育の必要性を唱える声も多く聞かれた。「高校生のうちに、振り袖やら何やら準備するのは、卒業式の準備やら大学受験やらで、本人も親も大変」というコメントも。

「成年年齢引き下げ」について、みんなのギモン

コメント欄で多く寄せられた疑問について、京都産業大学法学部教授で弁護士の坂東俊矢先生に聞いた。

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18歳になったらひとりで何ができる?

成年には「ひとりで契約を交わせる」「父母の親権に服さなくなる」という意味があり、成年になるとひとりの「大人」として尊重され、社会活動に参加できるようになります。そのため、例えば「ローンを組む」「クレジットカードを作る」「部屋を借りる」など、さまざまな契約をひとりで自由に結べます。また、婚姻・性・国籍に関して自らの意思で判断できるほか、国家資格の取得も可能です。一方、20歳未満の飲酒や喫煙は継続して禁止され、競馬や競輪、競艇などの公営競技も、非行防止の観点から参加できません。

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18歳成年は早い?

法務省の調べによると、成年年齢を18歳とするのは、成年年齢のデータがある187の国と地域のうち141の国と地域で、世界の主流は「18歳成年」です。また、アジア圏だと中国は18歳ですし、韓国は2013年に20歳から19歳に引き下げました。シンガポールは、飲酒は18歳からできますが、成年年齢は21歳とされています。台湾は日本と同じく、2023年1月から18歳に引き下げる方針です。

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少年法はどうなる?

20歳未満の少年が刑事事件を起こした場合、少年法に基づいて、全員が家庭裁判所に送致されます。成長途上の少年に適切な教育や措置による更生を促すためです。もっとも、16歳以上で故意による犯罪で被害者を死亡させた事件については、検察官への逆送致が原則で、通常の刑事手続きで審理されます。これに加えて、2022年4月1日から、18・19歳の少年を「特定少年」として、死刑、無期または法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件についても、家庭裁判所から検察官への逆送致が原則となります。例えば、強制性交や強盗などが該当します。また、特定少年が検察庁によって起訴された後は、実名報道も可能になります。

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なぜ一律18歳ではない? お酒やタバコはなんでダメ?

若者に対する法律適用の年齢の区切りとして18歳と20歳がよく使われています。法律はそれぞれ保護する利益や趣旨が違うため、すべての法律に一律の年齢区分を定めることは適切ではなく、現実的にも難しいでしょう。例えば、飲酒は20歳未満に対して、1922年3月30日に公布された「未成年者飲酒禁止法」で禁止されました。これについては、若者の飲酒が肉体的、精神的な健康に与える悪影響及び青少年による非行の防止などが、法律の守ろうとしている利益です。これは成年年齢が18歳になったからといって変わるわけではありません。ですので、法律名を「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」と変えて、20歳による区分が維持されることとなりました。

成人式は18歳から参加?

成人式を定める法律はなく、実施時期や対象年齢などは、あくまで地方自治体の判断に委ねられています。ただ、国民の祝日に関する法律で、1月の第2月曜日が成人の日とされていることもあり、今までは8割を超える自治体が、成人式を行う年度内に満20歳 となる人々を対象に、成人式の実施をしてきました。18歳の場合、1月は大学入試や就職などで多忙です。また、18歳で成人式が終わっても、お酒は20歳になってからしか飲めません。ですので、これからの成人式がどう変化するのかは不透明です。いずれにしても「大人」として若者を迎え入れる意義と方法について、みんなで考える必要があるのだと思います。


18歳になって自由に契約できるのはよいこと?

契約は、豊かな生活を送るための法律的手段です。それを自分の判断で結べるようになることは、とても大切なこと。でも、契約をすれば義務も生じます。ものを買えば代金を支払わなければならないし、借金をすれば利息を付けて返済しなければなりません。また、悪質業者は契約という仕組みを使って、若者をだますことが多々あります。「君も大人ならひとりで今、決めなさい」といった常套句で契約を迫るのです。国民生活センターによると、18・19歳では、ダイエットサプリなどの健康食品や、高額収入を得るためのノウハウを称した情報商材の契約トラブルが報告されています。今後はそれに加え、20歳代前半で多い美容医療やエステなどの美容関連トラブルに巻き込まれることも考えられます。上手に契約を活用するには、自らの消費生活に関して、冷静に判断する大人のセンスが必要です。

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離婚後の扶養義務は18歳まで? 大学進学費用の請求はできなくなる?

両親が離婚したとしても、親には子どもの扶養義務(民法877条)があります。これは経済的に自立できていない子どもに対する親の義務で、年齢で区切られているわけではありません。ただ、18歳で未成年者でなくなる場合、それ以降は両親の離婚に際して親権者を定める必要がなくなります。実務的には家庭裁判所での養育費の算定が20歳を基準になされてきたこともあって、今後は18歳以降の養育費は必要ないとの誤解が生じることは考えられます。大学進学の費用を請求できることは今後も変わりません。養育費を定める際にきちんと合意し、できれば公正証書などの文書にしておくことが大切です。

年金保険料は何歳から支払う必要がある?

例えば、国民年金法の被保険者は「20歳以上60歳未満の者」と年齢で定められています。ですので、国民年金の加入義務や保険料の支払い義務が、成年年齢が18歳に引き下げられても自動的に18歳からになることはありません。もし18歳からにするのであれば、法の改正が必要になります。そのため、今回の成年年齢の引き下げが年金制度に影響を与えることはまずないと私は思います。

トラブルに巻き込まれないために...

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SNSなどでは「簡単に稼げる」「〇%OFF」といった過大な広告や書き込みで関心を引き、契約を結ばせようとする手口が横行しています。情報を細部まで読み込むことが必要です。契約で分からない点は確認し、万が一のトラブルを想定して、メールや音声記録で証拠を残しておくことも推奨します。消費者契約法では、「説明と違った」「店から帰らせてもらえなかった」などの場合、契約を後から取り消すことができます。トラブルにあった際は、消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話をかけて相談してみましょう。

また、2022年4月以降は、18歳の高校3年生同士でも自分たちの意思のみで結婚できるようになります。トラブルを防ぐため、事前に結婚に関して、家族で話し合いや取り決めをするのもよいでしょう。自立するということは、自分ひとりで決めることではなく、信頼できる相談先や相談相手を持つことです。契約、結婚、仕事など、判断や選択に迷った際はためらわず相談してみましょう。

記事作成の基となった記事はこちら。【みんなで考えよう】成年年齢引き下げ、来年4月から  「よい点」「不安な点」あなたはどんな意見?(Yahoo!ニュース)

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