今回の緊急事態宣言は既に2回延長されており長期化している。宣言発出の期間が長引くと「宣言慣れ」や「自粛疲れ」が出てきて、宣言の人流抑制効果は弱まる。また、政局の感染対策に五輪関係とそれ以外で誰が見ても明らかなダブルスタンダード(二重規範)が存在しており、それが緊急事態宣言の効果を弱める大きな要因になっている。たとえば、都内の飲食店では感染対策として酒類の提供は禁止されているのに、オリパラ選手村には酒類の持ち込みが自由になるといった具合だ。これではまじめにルールに従うことがバカらしくなって緊急事態宣言に従わない人が出てくるのは当然だろう。今後、人流の増加→リバウンド発生→五輪開催前後で感染第5波が襲来という事態になれば、4月25日から6月20日までの行動制限による経済損失(東京だけで数兆円に上る)はすべて水の泡になってしまう。その責任はダブルスタンダードを適用した政策当局にある。
コメンテータープロフィール
1971年神奈川県生まれ。95年慶応義塾大学経済学部卒業、同年銀行系シンクタンク入社。99年日本経済研究センター出向、00年シンガポールの東南アジア研究所出向。02年から05年まで生保系シンクタンク経済調査部主任エコノミストを経て、現在はBRICs経済研究所代表。同研究所の活動とあわせて、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」など各種メディアにも出演中。また、雑誌・WEBでの連載や各種の講演も多数行なっている。『図説BRICs経済』(日本経済新聞社)、『増税なしで財政再建するたった一つの方法』(角川書店)、『オトナの経済学』(PHP研究所)、『日本の「地下経済」最新白書』(SB新書)など著作多数。
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