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星周一郎

星周一郎

認証済み

東京都立大学法学部教授

報告

見解1985年に、ダンプカーに轢かれて救急搬送された10歳の男児の治療に関して、両親が信仰心を理由に輸血を拒否し、その男児がほどなく死亡するという「大ちゃん事件」が発生し、世間に衝撃を与えました。それから40年が経とうとしています。 2008年には「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」が策定され、医療機関の対応にも一定の方向性が示されてはいます。たしかに成人に関しては、輸血拒否は本人の責任で、その結果について医師の免責証明を用意することで、一定の解決が図られているという評価もありうるところです。 しかし、児童の場合、親権者による輸血拒否・治療拒否には「医療ネグレクト」という児童虐待の性質があることは否定できません。国は一昨年に、信仰の強制や恐怖心のあおりなども含めて、虐待にあたるとの指針を示しましたが、現場では十分に浸透していない実情があるようです。 早急な体制整備が求められるところです。

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同じ記事に対する他のコメンテーターコメント

  • 多田文明

    詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

    解説今回、国による初めての調査で重要なことが明らかになっています。 去年9月までの3年間で「医療機関を…続きを読む

  • 山脇由貴子

    元東京都児童相談所児童心理司 家族問題・心理カウンセラー

    補足親の信仰が関係する虐待は、児相の介入も極めて難しいと言えます。実際には強制されていても子どもも、親の…続きを読む

コメンテータープロフィール

1969年愛知県生まれ。東京都立大学法学部卒業、博士(法学・東京都立大学)。専門は刑事法。近年は情報法や医事法にも研究対象を拡げている。著書として『放火罪の理論』(東京大学出版会・2004年)、『防犯カメラと刑事手続』(弘文堂・2012年)、『現代社会と実質的刑事法論』(成文堂・2023年)、『アメリカ刑法』(訳・レクシスネクシス・ジャパン・2008年)など。

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