Yahoo!ニュース

星周一郎

星周一郎認証済み

認証済み

東京都立大学法学部教授

報告

「補助金はもらい得であり、いかに多くの額を受けられるかが担当者の腕の見せどころ」といった誤った感覚は、古くからあります。しかし、補助金の原資が税金(公金)であることは言うまでもありません。そのため、昭和30年には補助金等適正化法が制定され、罰則も設けられています。 本件では、刑法上の詐欺罪での立件が視野に入れられているようです。詐欺罪に関しては、犯人側での「欺く行為」の存在、金銭交付の担当者が「騙されて交付した」、犯人側がそれらを認識している、などの要件が必要で、一般的には、それらの証拠での立証には困難を伴うことも多いです。 補助金等不正受交付罪は、立証のハードルはそこまで高くはありません。 本件の業務委託料が「補助金」にあたるか否かは報道からは不明瞭ですが、本件の悪質性や被害額の多額さなどを踏まえ、詐欺罪での立件が勘案されていると思われます。 今後の捜査の成り行きが注目されます。

こちらの記事は掲載が終了しています

参考になった2240

同じ記事に対する他のコメンテーターコメント

  • 多田文明

    詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

    幾ら旅行業界が厳しいとはいえ、一流企業が国民の血税を過大請求をして受け取るとは、大変な問題です。 …続きを読む

  • 山岸久朗

    弁護士(山岸久朗法律事務所代表)

    法律家の間では、詐欺罪の立件は最も難しい分野の事件であると認識されている。それは、実行行為の時点で、…続きを読む

コメンテータープロフィール

1969年愛知県生まれ。東京都立大学法学部卒業、博士(法学・東京都立大学)。専門は刑事法。近年は情報法や医事法にも研究対象を拡げている。著書として『放火罪の理論』(東京大学出版会・2004年)、『防犯カメラと刑事手続』(弘文堂・2012年)、『現代社会と実質的刑事法論』(成文堂・2023年)、『アメリカ刑法』(訳・レクシスネクシス・ジャパン・2008年)など。

関連リンク(外部サイト)

星周一郎の最近のコメント