Professional2019.10.25

男性の家事育児、意識調査で7割が「語りづらい世の中」 そう思う事情を考えてみた

(画像:アフロ)

Yahoo!ニュースでは、配信いただく媒体社との共同・連携企画に取り組んでいます。朝日新聞社と連携し、今年から不定期で実施している連載「父親のモヤモヤ」は、「父親」が感じる葛藤や悩みなどを通じて、誰もが生きやすい社会にするためにはどうすればよいかを探る企画です。9月に公開した「パパ友」編では、ユーザーに意見を問う意識調査「みんなの意見」と連動。その投票結果や反響を振り返り、朝日新聞記者の高橋健次郎さん(@takahashi__k)が記事にしました。 news HACKでもご紹介します。

「パパ友がいない」――。仕事と子育ての両立に悩み、葛藤する父親から、こんな言葉を聞くことがあります。周囲に同じ境遇の父親がおらず、孤独を感じるというのです。そうした様子を描いた記事が、Yahoo!ニュースで掲載されました。あわせて実施された「男性が家事・育児を語りやすい世の中になっていると思う?」と題した意識調査では、「思わない」という声が7割近くを占めました。背景には何があるのでしょうか。

昔に比べれば、語りやすい環境

意識調査は、9月21日から10月1日まで実施され、1万2899票の投票がありました。質問は、「思う」と「思わない」の2択です。「思う」は33%(4257票)、「思わない」は67%(8642票)という結果でした。父親が家事や育児について語ることに、まだまだ抵抗のある社会と見られています。


Yahoo!ニュース 意識調査「男性が家事・育児を語りやすい世の中になっていると思う?」の投票結果画面

もちろん、昔に比べれば、語りやすい環境にはなっているでしょう。そうした実感を込めたコメントもありました。

「昭和の時代に比べれば、全然話しやすい時代ですよ。同年代ではSNSでイクメンですよって表明している記事が多いですから」

「以前に比較すると、かなり男の家事、育児が当たり前になってきていると思う」

語りやすくはなっているが……

しかし、多数を占めたのは、「男性が家事・育児を語りやすい世の中になっていると思わない」という意見でした。

なぜ、こう感じるのでしょうか。

特に、当事者である父親目線で考えてみます。一つに「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えが色濃く残っていることも影響していそうです。例えば、職場の上司が「男は仕事」という強い意識を持っている場合、語りづらさを感じるでしょう。

では、ほかの理由はないのでしょうか。コメント欄にヒントがありました。

「語るだけなら、ひと昔前よりは全然話題にしていると思う。実行を伴っているかどうかは、また別の話」「『語りやすくはなっているが、実際家事・育児に積極的にかかわっていない』と言えるでしょう」――。

関わりの濃淡が「語りづらい」に


9月22日配信の記事に登場した「#ゆるゆるお父さん遠足」は、SNS上の呼びかけが実際のつながりに発展(画像の一部を加工しています)(写真:withnews)

こうした指摘はもっともです。

総務省の社会生活基本調査によると、6歳未満の子どもがいる共働き世帯の育児時間(1日平均)は、16年時点で夫は47分。10年で18分増えましたが、一方の妻は16年時点で167分です。夫は妻の3分の1にも満たないのが現状です。家事時間も含めると、格差は拡大します。
 
全体でみれば、父親の家事や育児への関わりが進んでいません。ここから考えると、女性に比べ、男性の方が家庭への関わりに濃淡があると言えます。

父親が家事や育児について語りづらい背景には、さまざまな理由があるのでしょう。ただ、この関わりの濃淡が、語りづらい要因の一つとなっているのかもしれません。

例えば、共働き世帯で、仕事に大きな制限をかけて家庭に関わっている父親と、妻が専業主婦の家庭で、稼ぐことへの期待が大きいことに加えて家事や育児への関わりを求められている父親とでは、モヤモヤの質が異なるでしょう。葛藤の中身が異なっているとわかれば、そもそも語ろうという意識が起きないことも考えられます。語りたい相手とは、往々にして、同じ思いを共有できる人だからです。こうした時に、「語りづらい」と感じることもあるでしょう。

夫婦で家事や育児にどう関わるかは、家庭の実情によってケース・バイ・ケースです。正解はありません。ただ、共働き世帯が増えていることもあって、父親の家事や育児への関わりが、より濃密になっていく傾向は続きそうです。そうした時に、より同じ境遇の人が増えてくれば、体験やモヤモヤもより共有しやすく、語りやすくなっていくのかもしれません。

父親のモヤモヤ、お寄せください

仕事と家庭とのバランスに葛藤を抱え、子育ての主体と見られず疎外感を覚える――。共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、このようにモヤモヤすることがあります。

一方、「ワンオペ育児」に「上から目線」と、家事や育児の大部分を担い、パートナーとのやりとりに不快感を覚えるのは、多くの場合「母親」です。父親のモヤモヤにぴんとこず、いら立つ人もいるでしょう。「父親がモヤモヤ?」と。

父親のモヤモヤは、多くの母親がこれまで直面した困難の追体験かもしれません。あるいは、父親に特有の事情があるかもしれません。いずれにしても、モヤモヤの裏には、往々にして、性別役割や働き方などの問題がひそんでいます。

それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながるはずです。語ることに躊躇しながらでも、#父親のモヤモヤ について考えていきたいと思います。

記事に関する感想をお寄せください。母親を子育ての主体とみなす「母性神話」というキーワードでも、モヤモヤや体験を募ります。こうした「母性神話」は根強く残っていますが、「出産と母乳での授乳以外は父親もできる」といった考え方も、少しずつ広まってきました。みなさんはどう思いますか?

いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)、ファクス(03・5540・7354)、または郵便(〒104・8011=住所不要)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

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