Professional2018.07.13

記者になって取材現場から見えたもの【Yahoo!ニュース トピックス編集部→神奈川新聞・出向社員インタビュー】

報道の現場を経験することで、ニュースを届ける使命感や責任感をより深く身につけようとの狙いから、新聞社との人材交流を行っているYahoo!ニュース トピックス編集部。news HACKではこれまでも、双方の強みや編集ノウハウを学ぶ社員の様子をお伝えしてきました。現在も編集部には神奈川新聞社から1人の方が出向。今回は、その交流で2017年4月から神奈川新聞社に出向し、主に横浜市政担当記者として活動している仲里和に話を聞きました。地方紙という独特の現場で過ごした1年余り。果たして彼女は何を学び、そして何をYahoo!ニュースに持ち帰ろうとしているのでしょうか――。

取材・文/友清 哲
編集/ノオト

初の編集部配属の新卒社員が、新聞社出向に至るまで

――まずは神奈川新聞社への出向が決まった経緯から教えてください。

最初に会社から言われたのは、「新聞の記事がどのようなフローで出来上がっているのかを学んで来い」ということでした。Yahoo!ニュース トピックス編集部では、普段取材に行ったり、記事を書くことはありません。なので一番の目的は、私たちが日常的に受け取っている記事が、どのような取材を経て、仕上げられているのかを、現場で体感することでした。

もともと2011年4月の入社時から、いつか実際に新聞社やメディアの記事をつくっている現場を知る機会があればいいなと考えていました。ただ、私よりも前に同期のスタッフが西日本新聞さんに出向していたので、もうチャンスはまわってこないだろうなと思っていたんです。なので、出向を命じられた時はちょっと驚きました。ですが、新聞社で挑戦できるのはこれがラストチャンスかもしれないと思い、喜んでお受けしたんです。

――仲さんはYahoo!ニュース トピックス編集部に初めて配属された新卒だったとお聞きしましたが、もともと報道志望だったのでしょうか。

メディア志望ではありましたが、就職活動の際は出版社の編集職などを中心に受けていて、報道はあまりイメージしていませんでした。ヤフーでも当初は営業職を希望していたのですが、最終面接で「入社後にやりたいことは?」と聞かれた時、自分が一番使っているサービスはYahoo!ニュースであると気付き、「機会があれば、将来的にはニュースに関わりたいです」と発言したのが、編集部に配属されたきっかけかもしれません。

――では、Yahoo!ニュース トピックス編集部での主な仕事内容は?

各媒体から配信される記事のセレクトとYahoo!ニュース トピックスの作成が中心でした。ほかにも、号外ニュースが配信された時、それをアプリでプッシュ通知で配信する際のガイドラインの策定なども担当しました。また、2014~2016年に福岡に転勤し、東京や大阪の編集部が災害で機能しなくなった時のために、第三の拠点を北九州市で立ち上げる業務も経験しています。

新聞記者の現場で感じたギャップ

――現在、神奈川新聞社ではどのような仕事を担当しているのでしょうか。

今は、横浜市役所の担当です。普段は本社ではなく市役所の記者クラブに常駐し、市の発表資料や会見、職員や議員への取材をもとに記事を書いています。月に数回は泊まり勤務があり、事件や事故があった場合は、朝刊の締め切りに間に合うように大急ぎで原稿を執筆することもあります。

横浜市役所内に設置された記者クラブでの業務の様子

――Yahoo!ニュース トピックス編集部での仕事とは内容が大きく異なりますが、ギャップを感じることも多いのでは?

働き方の面ではやはり、最初はさまざまな戸惑いがありました。例えばメインのコミュニケーション手段が電話なのもその1つです。また、新聞だから許されるスピード感というのも独特です。面識のない識者に突然電話をかけて、「この事件についてコメントをください」と言っても通用するのは、やはり日刊の新聞という媒体だからこそでしょうね。こういったコミュニケーションは、Yahoo!ニュース トピックス編集部にはなかったことです。

――IT企業の現場からは、大きな乖離(かいり)がありますね。

編集部では社内の誰かにアポを取る際など、メールやチャットツールであらかじめ候補日をもらうのが常でしたが、今は電話で「これからそっちへ行ってもいいですか?」と聞くのが普通になっています。おかげで、電話は電話で便利なところや必要な場面が多々あるのを、あらためて実感しています。タイムラグなく端的なコミュニケーションが取れると、物事が簡潔に進むのでありがたいですね。

――また、記者クラブというのも、Yahoo!ニュースでは本来縁のない世界なのではないかと思います。

記者クラブ制度の存在については賛否あるのも理解していますが、世間で言われるほどの特権はあまり感じないのが正直なところです。また記者クラブが新聞社にとって便利なのは事実ですが、こうした組織の有無とは無関係に、自らルートを切り開いて情報を集める優秀な記者の方だって大勢いることも現場で知りました。

――記者クラブに常駐して市役所の動きを中から見てきたことで、自治体に対する見方に何か変化はありましたか。

神奈川新聞本社から徒歩10分程度のところにある横浜市役所

私も神奈川県出身なので、それは大きいですね。自分も住んでいた横浜市を支えるために、多くの方が関わっていることを、取材を通して実感しています。普段何気なく目にしている行政の取り組みの詳しい背景を知ることができたのは、自分にとって世の中を見る目が変わる大きな発見でした。

今後のYahoo!ニュースに生かされること

――出向から1年余り。今、ご自身が感じている課題は何でしょうか。

まだまだ自分だけの力で原稿を仕上げられていない点ですね。取材をするのも原稿を書くのも、神奈川新聞社へ来て初めて経験したことです。初めて書いたのは大学図書館での展示に関する「街ネタ」記事だったのですが、とても緊張しましたね。

今でも書いた記事をデスクに持っていくと、「この部分はどういう意味?」「ここ、もっとこういう情報がほしいよね」とさまざまなアドバイスをいただきます。そこで慌てて原稿を書き直したり、追加取材をしたりといったことの連続で、1人で最後まで完結させられた記事はまだ少ないのが実情です。記者としてもっと精進しなければなりません。

――記者の現場を経験した今、紙とウェブ、それぞれのメディアの違いをどう考えていますか。

紙ならではの読みやすさは、この現場で改めて実感しました。特にレイアウトの力は大きくて、ウェブはスマホに最適化したレイアウトが日々研究・開発されているものの、新聞の紙面レイアウトは長い歴史を刻んできた分、一日の長を感じます。記事ごとの重要度の差がぱっと見でわかったり、長文でも疲れずに読むことができたり。一概に比較できるものではありませんが、ウェブメディアができることはまだまだ多いと感じています。

――ウェブと紙、両方のニュースの現場を経験した立場から、両社の未来についてどう思いますか。

紙媒体の発行部数が減少しているからといって、報道がなくなることはあり得ません。そして、新聞の現場で培ってきた取材のノウハウは、紙のみならずウェブメディアやこれから生まれるであろう新しいメディアでも生かされていくはずです。

――あらためて、新聞の現場で学んだ最も大きなことは何でしょうか。

日頃何気なく見ていた記事が、実は1行1行に大変な労力がかけられている、ということです。街ネタの短いニュースでも、まずそれを書くべきか否かという判断があり、それを当事者からどう引き出し、いかに読ませる記事に仕上げるかという点に、新聞ならではの高度な技術が盛り込まれていることを、身をもって知りました。

――そうした経験と学びは今後、Yahoo!ニュースにどのように生かされるのでしょう。

優れた記事とは何か、より多くの人たちに読んでもらうべき記事は何かという、私の中のYahoo!ニュース トピックス選びの基準は大きくアップデートされていると思います。それに、地域メディアの重要性や役割、こだわりを毎日感じています。地方紙だからこそ押さえられる話題がたくさんあり、それを伝えるために丁寧な取材が日々行われています。そういった事情を多少なりともくみ取れるようになったことで、編集部に戻ってから、記事提供元の力になるような仕事ができれば理想的ですね。

お問い合わせ先

このブログに関するお問い合わせについてはこちらへお願いいたします。