Inside2015.02.25

“イエメン→イケメン”……Yahoo!ニュースの見出し「空目」はなぜ起こる？

（写真・ロイター/アフロ）

　「Yahoo!ニュースを見て空目（そらめ）した」というTwitterのつぶやきを見たことがありますか？
　「空目」という言葉は、広く一般的に使われているわけではないようですが、「ヤフー　空目」でリアルタイム検索をすると毎日のようにつぶやかれていることがわかります。

空目（そらめ）
実際にはそうでないものを、それと見間違えること。視覚における『空耳』と似た現象―「空目：実用日本語表現辞典」（Weblio辞書）

一体、なぜこのような現象が起こるのでしょうか。Yahoo!ニュースのベテラン編集者・北九州編集室室長の奈須川信幸に聞いてみました。

奈須川　Yahoo!ニュース・トピックスの見出しは、パッと見て情報消費できるよう、見出しの文字数を約13文字に制限しています。このため、見出しに盛り込むべき要素を極限まで削ぎ落とさなければタイトルをつけることができません。
　そうして作られた次の見出しを見てください。何についてのニュースかわかりますか？

トワイライト最終 直後に完売

……いかがでしょうか？トワイライトという映画もありますが、多くの方が、寝台列車のニュースだと想像がついたのではないでしょうか。この見出しを省略せずに書くと次のようになります。

3月に運行を終了する寝台特急トワイライトエクスプレスの最終便のチケットが販売直後に完売した。
（参考：＜トワイライト＞最終列車の切符、発売開始直後に完売 － 毎日新聞）

　しかし、これだけ長い見出しにしなくても、「トワイライト最終 直後に完売」で内容が概ね理解できますよね。
　これが人間の脳の力、「想起」です。想起とは脳科学的にも裏付けのある現象です。情報が省略されていても、脳が情報を処理する際にこれまでの経験や知識、固定観念などで省略されている部分を補うことができるのですね。

　Yahoo!ニュースの編集者は、この「想起」が働きやすいように（もしくは働くことを期待して）見出しをつけます。しかし、脳は人それぞれで記憶が異なります。個人の趣向や、直前まで考えていたことなどにも影響されます。こうして、見間違い＝空目がおきてしまうようです。

「空目見出し」を再現してみました

　それではここで、空目の例を、Yahoo!ニュース・トピックスのスマホ版デザインに落とし込んで8本あげてみました。もとの見出し、あなたはいくつわかりますか？（答えはこの記事の最後に）。

昔からあった「空目」　

（ロイター/アフロ）

奈須川　ところで、最近になって使われ始めたかのように見える「空目」という言葉ですが、実は平安時代の唄にも登場します。

そらめをぞ君はみたらし川の水　あさしやふかしそれは我かは（出典：拾遺和歌集）

　女性が男性に対し、「あなたは見間違いをしたようですね。川の水は浅かったですか、それとも深かったでしょうか、覚えていますか？あなたが見たというのは本当に私だったのでしょうか？」とはぐらかす恋の唄です。

　「空目」という言葉は、このように昔からあるにもかかわらず、最近になって特にネット上で使われ始めたかのように感じるのはなぜでしょうか。

　現代は情報化社会です。身の回りは数多くの情報であふれています。パソコンでメールを処理し、スマートフォンでSNSをチェック、タブレットでニュースをスクロール……と、絶えず多くの情報を処理し続けなくてはなりません。この結果、流し読みが増えていることが、「空目」の原因を引き起こしているのかもしれません。

　米国ではマインドフルネス（瞑想）を導入する企業が増えています（※参考リンク：注目集まる理由は？ - NHK特集まるごと）。情報過多のストレスを解消し、集中力を高める効果があるとされ、グーグルやインテルなど多くの職場で取り入れられています。
　情報とどうつきあうか、空目という現象はそんなことを私たちに問いかけているようです。


※先ほどの｢空目見出し｣の答えはこちら↓

  • 官邸ツートップ 異例の不在
  • 引越し業者 広がる家事支援
  • 小僧寿司 ラーメン事業進出へ
  • 二日酔いの自衛策、効果ある？
  • 羽毛の需要増 再生利用広がる
  • 悔い残る本田「未熟だった｣
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