Inside2017.03.14

【ソフトスキル×エンジニア】Yahoo!ニュースで磨かれる自分の可能性とは

昨年5月に発売された書籍「SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル」(発行・日経BP社)。若いソフトウェア開発者に向けて、自身も開発者であるジョン・ソンメズ氏が、対人的な交渉・指導・意思疎通などをうまく行える能力や知恵「ソフトスキル」を元に、人生をより良く生きる方法を指南している一冊です。日本を代表するソフトウェア技術者のまつもとゆきひろさんは、この書籍について「成功者がその過程を語ることはめったにありませんから、本書は貴重」と、解説しています。そんな書籍の編集担当である田島篤さんと、著者へのインタビュー経験があるキャリアデザインセンターの伊藤健吾さんが進行役となり、コワーキングスペース「LODGE」でトークイベント「エンジニアに必要な『Soft Skills』ってなんだ?」が開催されました。Yahoo!ニュースから、部長やリーダー職に就く3人のエンジニアが登壇。Yahoo!ニュースに携わるエンジニアの「仕事観」の一端に触れていただければと思います。

登壇者
今坂 健一
ニュース・スポーツ事業本部 開発部部長
高橋 裕之
ニュース・スポーツ事業本部 開発部部長
小松 裕理
ニュース・スポーツ事業本部 開発部リーダー

メンバーと対話をする上で必要なこと

田島さん
まず、ご自身はソフトスキルを持っていますか。また、日々の業務を通じてその必要性を感じたことがありますか。
高橋
正直、自分は書籍に書かれているような大それたスキルは持っていませんが、実際、必要だと思っています。若いエンジニアが部下となった時、自分の思いを共感してもらえないと、仕事はうまく進みません。開発はチームプレー。仲間や部下にアピールすることで、生産性を高めることに力点を置くようにしています。
田島さん
部長職に就いてからも同様ですか。
高橋
毎日必要性を感じていますね。弊社では、上司と部下が1対1でそのときどきの状況を話し合う機会が定期的に設けられています。その中ではメンバーに共感してもらう、押しつけではダメ。この書籍の中に出てくるソフトスキルに直結しますね。
今坂
私も高橋と一緒で、ソフトスキルは先天的には持っていません。仕事をしていく上で自分の力を客観的に見るようにし、限界を超えたものになるべくチャレンジしようと経験を積んできました。そうすることでエンジニアとしての幅が広がり、結果的に「持っている」ということになったと思いますね。
伊藤さん
限界を超えてのチャレンジ、挙げられる例はありますか。
今坂
弊社にはベトナムに開発の子会社があるんですが、そこで新しい開発チームをつくることになり、自分が手を挙げました。周りの残ったメンバーには迷惑をかけましたが、私にとっては大変いい経験でした。
小松
私は「持っていたい」といつも思っています。現場のリーダーを任されるようになって4年ほどたちますが、その中で気づいたのは、「自分が幸せに仕事をするには、周りのみんなが同じように幸せであること」。それには高橋と同じで、自分の考えや思いを周りに到達させることですよね。
田島さん
その到達のためには、どのようなソフトスキルが必要だとお考えですか。
小松
それは相手によって違ってきますね。伝え方は相手に合わせますし、その場その場に応じたやり方があると思います。どれを選ぶかは経験から判断。たとえ100人の相手ができても、101人目にはまた違うアプローチが必要です。

400ページ超にわたってソフトスキルを元に「人生をより良く生きる方法」を指南

「助力者」としての立場

田島さん
書籍の中では「メンター」についてページを割いて触れられていますが、ご自身がメンターであることについてのお考えは。
今坂
高橋の話にありましたが、私は、部長とエンジニアの間に立つリーダー職のエンジニアと1対1で話をする時間があります。彼らは「プレイングマネジャー」としてメンバーの浮き沈みと常に接しているのでそのリーダー自身も悩むことも当然あって、私としてはなるべく彼ら自身で答えを出させるように心がけています。その時間、一緒に考えるようにしていますから、コミュニケーションを密にしています。
田島さん
「助力者」であることを心がけているわけですね。
今坂
私がリーダーだったころ、部長ごとに色や特徴が当然あって、断定的に答えを言う方もいれば、自由にやらせてくださる方もいました。いろいろな上司から学ばせてもらって振り返ってみると、悩んでいた時にこういう質問や指示で助かったなと。
伊藤さん
開発業務においても実はソフトスキルも重要と思いますが、この書籍の最後に書かれている、まつもとゆきひろさんの解説には「ほとんどの技術は、技術単体では存在価値がない」とあります。Yahoo!ニュースのサービスにおいても同じことが言えるでしょうか。
小松
Yahoo!ニュースにかかわる全員がそう思っているはずです。扱うのがニュースなので社会的意義、影響力が重要視されていますから、技術ばかり追い求めていては定性的な考え方を持つのは難しい。幸いYahoo!ニュースのエンジニアは、編集職のみなさんと接することが多々あり、彼らの考え方を吸収できます。そういうコミュニケーションがあることを踏まえても、ソフトスキルは必要ですね。
伊藤さん
技術単体で課題解決できないことは、普段実感していますか。
小松
ほぼ毎日ですね。エンジニアの考え方は極端に言えば、「画面に表示されていればいい」「早く表示されていればいい」。でも、それだけでは当然ダメで、「どういう仕様の出面にするか」「どういった人にどういう情報を届けるか」と、サービスに対して1歩も2歩も寄った考えや技術が必要ですからね。
田島さん
例えば技術系ではない部門から課題が下りてきた際、コミュニケーションで心がけていることは。
今坂
私は、なるべく平易な言葉で伝えるようにしています。あとは物事を単純化して説明する。難しい専門用語を並べて語ることはエンジニアの得意分野ですが、そうではなくて共通の表現や比喩表現。例えば、システム開発を車の整備に喩えたりですね。
高橋
数値で物事を語ることができるのは、エンジニアの強みです。そうしたエンジニアリングをベースにしたソフトスキルは、Yahoo!ニュースでは経験しやすいですね。サービスの規模が大きく、ユーザーが多い。メンバーには稀有なサービスであることを楽しんで、ソフトスキルを身につけてほしいと思っています。

登壇したYahoo!ニュースのエンジニア3人(左から小松、高橋、今坂)

レコーディングにプラスアルファ

田島さん
書籍の中には自分のことを日々記録する重要性が書かれています。
伊藤さん
自分がどうありたいかを描き、そのために必要なことを書き出し、それができているかをリストアップ。生活サイクル、食事の内容に至るまでを書き残していくことを挙げていますね。
小松
書くことそのものは好きで、個人的には書きためています。ただ、それを人が見られる形にするのは苦手ですね。
高橋
書籍には「ブログをやりましょう」とありますが、過去に私は3日で挫折しました。どうせ読まれないだろう、私には向いていないなと。
今坂
私も難しいですね。ただプログラム設計が上手な人は、きれいなドキュメントを書きますよね。だから、書くテーマを与えれば、体系立てて書けると思います。
田島さん
ただ書き残していくのではなく、コミュニケーションにそれをどう使うか。チーム内でコミュニケーションを目的としたレコーディングを続けるにはどうすればいいでしょうか。
小松
テキストの質という部分では軽いんですが、社内のチャットシステムが非常に活発で、弊社のエンジニアは総じてアウトプットは得意です。ただそれが誰に届き、きちんと認識までされているかというと、難しいかなと。
今坂
レコーディング単独ではコミュニケーションの活性化は難しいかなと思います。プラスアルファとして自分のビジョンを語る、方向性を示す。定期的に発表する場を設けるべきでしょう。Yahoo!ニュースのエンジニアの中では3カ月に1度、そうした場で発表し合っています。

手を挙げる勇気で新たなステージに

田島さん
この書籍はアメリカのエンジニアが書いたもので、お金や待遇、処遇についてストレートに書かれていますが、日本のエンジニアの捉え方では違う部分もあると思います。
小松
私の周りでは、「仕事の成功は、人生の一番の幸せではない」と考えているほうが多いですね。あくまで仕事は人生のベースかなと。
高橋
書籍を読んだ印象ですと、アメリカが契約社会である以上、自己アピールしていかないと認められないし、認めない。日本では必ずしもそんなことはなくて、周りで働く仲間が見ています。この点では文化の差を感じましたね。
今坂
普遍なのは、実績とアピールは両輪ということ。どんな仕事でもこの2つは必要で、日本のエンジニアはアピールが苦手な部分があると思います。ですが、弊社では制度上、上司と1対1で話し合う機会が定期的に設けられ、アピールの機会が平等にあります。
田島さん
ソフトスキルが身につく環境ですね。
今坂
ご存じのように弊社はさまざまなサービスを提供し、コングロマリットな側面があります。自分で手を挙げれば、新たなサービスに挑戦することも可能です。手を挙げる勇気があれば、これまで経験したことのないステージに立てるんです。その経験を積んでいくことでソフトスキルは自ずと身につくと思います。人は変化を好まない傾向があり、時にはそれがストレスにもなります。だからこそ、変化を恐れずに勇気を持つ。小さな勇気でも必要です。
高橋
ハード、ソフトの両スキルを持っていれば、自分のやってみたいサービスに行きやすくもあります。この書籍の中でいいなと思ったフレーズに、「セルフプロデュースをしよう」というのがあります。一方で弊社のCTOは「得意分野を1つ持とう」と言っています。表現は違いますが、本質は一緒ですよね。得意分野を1つ持つことができれば自信となり、さらにさまざまなことに積極的にかかわるようになり、そして周りから信頼される。いいスキームがそこで回ります。
小松
ソフトスキルを身につけ、周りから認められることで可能性が広がります。裁量の範囲拡大は、エンジニアとしてサービスを前に進めるには必要なことです。あと、「やっかいな人」「面倒な人」と積極的に接していくこともまた大事ではないでしょうか。避けられない状況はいくらでもあって、そこで考えが合わないと人とコミュニケーションを通して理解を深められていることは、大きな経験だと思います。それもソフトスキルですね。

現場のエンジニアたちもコワーキングスペースに集まって「ソフトスキル」に耳を傾けた

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