Technology2016.07.29

【参院選】全選挙区にスマホで開票速報を プッシュ通知の開封率「激戦区」で高く

「静岡、当確出ました」「静岡選挙区プッシュします」「はい、大阪も当確出てるよ、次のプッシュ準備して」――。

緊張感に包まれたオフィスにせわしなく担当者の声が飛び交います。参院選の夜の編集部の様子です。

7月10日に投開票が行われた参院選、Yahoo!ニュースでは新たな取り組みとして、特定の地域にのみプッシュ通知を配信する「地域別プッシュ通知」の機能を活用し、全都道府県のユーザーに地元の選挙区の当確情報をお届けしました。

今回はその舞台裏と、プッシュ通知の開封率(受け取ったプッシュ通知を開いた割合)から見えた、ある特徴をご紹介します。

Yahoo!ニュース編集部が伝えた参院選

●10:00

投票日に向けてYahoo!ニュースでは、政治情報を発信する「Yahoo!みんなの政治」で、争点の解説のほか、質問に答えると自分の考えに近い政党が分かる「相性診断」や、各政党の公約をグラフィックで比較できる「公約チェック」などのコンテンツを展開。投票日当日の朝にはプッシュ通知機能で「投票に行こう」と候補者の情報を確認できるページを配信しました。

投票日の朝に配信したプッシュ通知

●19:30

編集部のフロアでは開票速報を行う「Yahoo!みんなの政治」の担当者が慌ただしく走り回ります。投票が締め切られるのは20時。開票速報を迅速にページに反映できるよう最後の最後まで調整が続きます。一方、今回の参院選では、地域別プッシュ通知を配信するためのチームも組まれました。チームは、全選挙区へプッシュ通知が届いたことを確認できるよう、あらかじめ全45選挙区分の検証機を用意。私のスマートフォンも検証用に借り出され、まさに総力戦で臨みます。

各選挙区のプッシュ通知が届くよう設定したスマートフォン

●20:00

時計の針が20時を回ると同時に、各報道機関が事前の情勢分析や出口調査の結果を基に「当選確実」や「落選確実」といった情報を一斉に伝えました。Yahoo!ニュ-スにもせきを切ったように大量の記事が配信されてきます。それらを迅速に把握し、大事な情報を逃さず掲出するのはYahoo!ニュース トピックス編集者の腕の見せどころでもあります。

選挙速報を伝えるYahoo!ニュース トピックス

一方のプッシュ通知担当チームは20時と同時に「Yahoo!みんなの政治」の開票速報を全国にプッシュ通知で配信しました。まず全ユーザーに選挙情勢をお伝えした上で、各選挙区への地域別プッシュの準備に移ります。

●20:19 各選挙区の情勢が判明し始める

各選挙区の情勢が判明し始めました。ここからプッシュ通知担当チームはトイレにもいけない時間が始まります。

「福岡当確でました」「福岡県に地域プッシュします」「福岡県の検証機、届きました」「静岡も当確出てますよ」「いま配信システム問題ないか確認中です。静岡まだ待ってください」――。

次々に情勢が判明していく中、開票速報をチェックする「Yahoo!みんなの政治」の担当者、プッシュの配信ボタンを押す編集者、検証用のスマートフォンを確認するスタッフ、システムの状況を確認するエンジニア、あらゆる方向からそれぞれの担当者の声が飛び交います。

左:千葉県、山口県、茨城県に地域設定したスマートフォン(Android) 右:東京都に地域設定したスマートフォン(iOS)

「静岡選挙区プッシュしますよ」「だからもう少しだけ待ってください」。

担当者がここまで焦るのには理由があります。開票速報を迅速に届けるというのはもちろんなのですが、それに加えて深夜のプッシュ通知はユーザーの皆さまの就寝を妨げてしまうからです。ユーザーが寝静まる前にすべての選挙区に届ける――。プッシュ配信は同時に時間との戦いでもあるのです。それぞれの担当者が連携を取りながら、全選挙区に選挙区情勢を配信しました。

●7月11日6:15 改選121議席が確定

出典:Yahoo!みんなの政治

激戦区へ届け!プッシュ通知の開封率が記録的な数字を出した選挙区とは

では編集部が総力戦で届けた地域別プッシュ通知はユーザーの皆さまにどう受け止められたのでしょうか。下の図は、それぞれの選挙区のプッシュ通知の開封率を色で表現したものです。

色が濃いほど開封率が高いことを表します。

地域別プッシュの開封率の高さは以前の記事でご紹介しましたが、今回の参院選では全選挙区で、通常時の地域別プッシュの開封率の平均を上回りました。その中でも特筆して開封率が高かったのが以下の5県です。ある特徴が表れています。

開封率が特に高かった選挙区

5位:愛媛県
自民現職と、野党統一候補の新人が最後まで接戦を繰り広げた選挙区。情勢が判明したのは23:50ごろ。自民・山本順三氏が再選を果たす。

4位:三重県
三重県は民進・岡田代表が「ここを落とすようなら次の代表選には出ない」と明言し、背水の陣で挑んだ選挙区。情勢が判明したのは23:30ごろ。民進・芝博一氏が当選。

3位:新潟県
自民党幹部が相次いで応援演説に入るなど、最終盤まで接戦だった新潟選挙区。情勢が判明したのは23:45ごろ。野党統一候補の無所属・森裕子氏がわずか2000票差で当選。

2位:大分県
与野党それぞれの党幹部が次々に応援に駆けつけ、「全国屈指の激戦区」と言われた大分選挙区。情勢が判明したのは23:50ごろ。民進・足立信也氏が当選し、民進党が九州の1人区で唯一の議席を守った。

1位:青森県
青森もまた「全国屈指の激戦区」と言われた1人区。情勢が判明したのは24時直前。民進・田名部匡代氏が当選。8000票差の大接戦だった。

※参照:Yahoo!みんなの政治/共同通信

事前の報道で「注目区」「激戦区」とされた1人区のうち情勢がなかなか判明しなかった地域が開封率において特に高い結果になっていることが分かります。このうち1位の青森県は、開封率が平均に比べて2倍以上となり、Yahoo!ニュース史上過去最高を記録しました。

全国的に注目区や激戦区と言われた選挙区は、地元の有権者の皆さんも高い関心を持っていたことが垣間見えます。ちなみに上位5に続いて開封率が6番目に高かったのは長野県ですが、こちらも激戦の末、民進・杉尾秀哉氏が当選した1人区です。

プッシュ通知を担当したYahoo!ニュース編集部の前田明彦は、この結果について以下のように話します。

「政治のニュースというとあまり読まれないというイメージがあるかもれません。しかしこれまで県知事選の結果など地域の政治ニュースも地域別プッシュ通知で届けてきましたが、それらは意外に開封率が高く出ていました。

今回の選挙でも全体の選挙結果の通知より、選挙区の結果の通知が数倍近く開封されていて、これは驚きでした。これまで選挙においては全体の結果を素早く届けることを心がけてきましたが、今後はより地域ごとの選挙結果を見やすく素早く届けることにも注力していきたいと考えています」。

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