「地方のことは地方が一番知っている」とは限らない?――地方発の記者らとYahoo!ニュースが考える、ローカルメディアの未来
当ブログがプロデュースするイベント「リアルnews HACK」。第2回目となるトークイベントが6月7日、「ローカルメディアの未来を考える」をテーマに下北沢B&Bで行われました。その模様の一部を、イベント参加者の皆様や弊社スタッフの実況ツイートを交えながらご紹介します。(前回のリアルnews HACKの様子はこちら)
今回のテーマは「ローカルメディアの未来を考える」。ゲストには、徳島新聞出身で現在は法政大学准教授、ジャーナリストの藤代裕之さん、沖縄の地上戦で亡くなった方々を追った「地図が語る戦没者の足跡」で「ジャーナリズム・イノベーション・アワード」特別賞を受賞した沖縄タイムスの與那覇(よなは)里子さんをお迎えしました。ヤフーからは、西日本新聞社(記者)からYahoo!ニュース・トピックス編集部へ出向中の三重野諭、Yahoo!ニュース・トピックス編集、大阪編集室室長、北九州編集室室長を経て現在はスタートページ事業部編成部部長の奈須川信幸が登壇。Yahoo!ニュースの岡田聡がモデレーターを務めました。
ローカルな話題を、全国の土俵にどうのせる?
前半、ゲストの普段の取り組みなどをフックに、ローカル情報を発信する上での課題などが話し合われました。社会部記者などを経て、現在デジタル部で「沖縄タイムス+プラス」や「ウェブマガジンW」の編集などを行う與那覇さん。アクセスログが首都圏中心のインターネットの世界で、「地元の情報を全国の土俵にどうのせればいいのかわからない。大きな絵が描けないままいる。書き方やみせ方をどうすればいいか、日々考えている」と現場担当者ならではの苦悩を語ります。
http://t.co/KkbaCy7w5d JCEJ「みんなでつくる、次世代のジャーナリズム」のデータジャーナリズム特別賞を受賞した沖縄タイムスの特集。まずはこの特集をWebコンテンツの形で表現することの意味をデスクに説得することからだったとか。 #newshack0607
— какunо (@kknmsm) 2015, 6月 7
與那覇さん「東京の人とつながるリアルな空間がない。ジャーナリズムイノベーションアワードがその役割になっている」 #newshack0607
— chie-chan (@crispytaffy) 2015, 6月 7
「野菜の売り方だって、東京と地方では違う」
藤代さんは、徳島新聞勤務時代の「苦い思い出」として、全国的に注目を集めた「葉っぱビジネス」を興した同県上勝町での取り組みを“地元紙の人間なのに見逃していた”というエピソード(参考※地域創生のカギ握る ネットでつながる「風の人」/日本経済新聞電子版)を交えながら、「地域のことは地域の人が一番知っている、というのは本当なんでしょうか」と疑問を投げかけます。「野菜の売り方も東京と地方では全然違う。地方も、全国に発信する際の売り方、見せ方を変える意識を持たないといけないのでは」。
ビールを飲みながらローカルメディアの話を聞いています。殻を破りにくい地方紙の方々のつらみ話が身にしみる #newshack0607 @ B&B https://t.co/nvNQqb8bqO
— tsuru (@tsuru) 2015, 6月 7
Y!さんは、地方紙にいって見出しのコンサルなどもされてるそうな #newshack0607
— ayabow(aya morikawa) (@ayabow7) 2015, 6月 7
ネットの世界は「10取材して1書け」が当てはまらない
トーク中盤では、実際の紙面を見ながら、紙面での見せ方とインターネットでの見せ方の違いについて話が及びました。
新聞記者が記事を書く際のマインドとして知られる言葉の一つに、「10取材して1を書け」というフレーズがありますが、トークの中では「10取材して10掲載できるのがネットの良いところ」という話も。新聞紙面では第3社会面に写真1枚と数十行で展開されていたストレートニュースでも、そのコンテンツをそのままネットに掲載するのではなく、写真を駆使してインターネットユーザー向けに見せ方や書き方を変えることで、多くの人に刺さるコンテンツになる、と藤代さん。「いつか地方紙がネットメディアに先を越される時代がくるかもしれない。個人ブログにストレートニュースが負ける時代になってきている。ネットの記事は長くても読まれるケースもあるが、地方紙は既存のみせ方の枠組みを変えられていない」。
一方、Yahoo!ニュースの岡田は、Yahoo!ニュースアプリの中の、ユーザーが現在地からの設定で地域別情報が取得できる都道府県タブのデータをスライドで開示し、「アプリの世界では、都道府県タブ、つまりローカルニュースの利用意向がエンタメやスポーツ、国内や経済など他のカテゴリに比べて非常に高い」と解説。「需要はある。地方の情報のそのものが全国に受けていないのではなく、“見せ方”次第で需要を掘り起こすことが出来る」と語りました。
「イケダハヤト氏のブログは、地方から東京への“手紙”」
おもしろいローカルメディア、たくさんあるよね。灯台もと暮らし http://t.co/8PwvSh6Zspマチノコト http://t.co/9BrYB4TLyB コロカル http://t.co/C2qO6UH3XN ローカルニッポン、リトケイなども #newshack0607
— какunо (@kknmsm) 2015, 6月 7
後半はローカルニュースの「届け方、見せ方」をテーマに、「新しいローカルメディア」が持つ可能性について話が及び、事例としてリメンバーしまね、コロカル、ローカルニッポンなどがあげられていました。「野菜も地方と東京で売り方が違うように、これらのメディアは地域の情報を東京の人が食べやすいパッケージで作られている例。情報はどのクラスタに届けたいかでみせ方が変わってくる」(藤代)。
「実は究極な例が、イケダハヤト氏のブログ (※「まだ東京で消耗してるの?」)なのではないか。イケハヤさんのブログは高知から東京ユーザーへの“手紙”。つまり、東京のユーザーが目にとまるような切り口で書いているなと感じる」(岡田)。
「一方で西日本新聞がFanFunFukuokaをはじめるなど、伝統的なメディア発の取り組みも出てきている」(奈須川)。
沖縄タイムスの「W」。「どういう人が読んでいるか、空気感をイメージしながら書いている」(與那覇さん) http://t.co/LztRD3HqBi #newshack0607
— chie-chan (@crispytaffy) 2015, 6月 7
ローカルメディアの特徴:「ゆるふわ」感/ニュースっぽくなくりすぎていない/都会の若い人材が地方に移り住んで活動している/企業がローカル情報を発信する機運が高まっている?/地方から東京へ届けるための工夫が満載。顕著な例はイケハヤさん #newshack0607
— какunо (@kknmsm) 2015, 6月 7
「どれだけかき混ぜられるか」がカギ
質疑応答ではツイッターのハッシュタグを使って参加者から質問を募集し、登壇者が回答していきました。イベントは終盤へ。最後に登壇者がそれぞれの思いを語りました。
「地方紙の中の人間も、こういったイベントや人とのつながりを通してなどリアルな色々な場に顔を出していって、どう見られているのかの肌感覚や新しいことを知っていく、といった前向きな取り組みをすべきだなと感じました」(與那覇)
「究極的には、「ローカルメディア」という言葉がなくなっていくのが理想。地方だから、全国だからという対立軸にあてはめる考えは狭すぎる。将来は、区分せずに一緒に考えていくようになっていくべきだと思います」(岡田)
「地方が衰退していっている中で、自分達の地域の中にこもっていても何も生まれない。新聞がどうのこうの、というよりも、どうやって従来のみせ方やスタイルをかき混ぜていけるかが勝負だと思います。今が正念場だなと思っています。あらゆる人がインターネットで情報発信出来るようになったのだから、あらゆる人がプレイヤー」(藤代)
地方紙は地元の人たちを応援するのが、ひとつの役割。But!全国の人と地方の人を繋げるためには紙だけでは限界がある...by三重野諭さん(西日本新聞)。#newshack0607
— 安田真理 (@YasudaM719) 2015, 6月 7
「ニュースってとても大切なコンテンツ。ニュースの定義が最近は広がって来た。どういう情報がホントは重要なのか?東京にいると気づかないけど地方の大事な課題がたくさんある。それをすくい取る方法を考えていきたい」Yahoo! JAPAN 奈須川 #newshack0607
— natsuko nishimura (@natsuzo) 2015, 6月 7
「やっぱり、みんなで作っていきたいなと思う(新しいメディア、ジャーナリズムを)」by藤代裕之さん(法政大学准教授・私の論文指導教員)。最後にジーン(T_T)Yahoo!JAPANさんありがとうございました!#newshack0607 pic.twitter.com/CCzpiDH9ma
— 安田真理 (@YasudaM719) 2015, 6月 7
日曜日の夜にも関わらず「ローカルメディアの未来を考える」に参加してくれた皆さんありがとうございました!ローカルメディアはこれからもっと面白くなると思います。イベントで紹介したゼミ生の記事はこちらです→ http://t.co/sTCtK5WItq #newshack0607
— Hiroyuki Fujisiro (@fujisiro) 2015, 6月 7
Yahoo!ニュースからのお知らせ
7月3日(金)19時、Apple Store 銀座店にて「情報アクセシビリティ:過去、現在、未来 これからのニュースの届け方」と題し、情報とスマートにつながる方法の進化と未来についてパネルディスカッションを開催します。
- 出演 ショーン・マクアードル川上氏(経営コンサルタント)、渡邉康太郎氏・佐々木康裕氏(takram design engineering)、片岡裕・河野清宣(Yahoo!ニュース)
- 入場料 無料
- イベントの予約はこちら(※Apple Store銀座店ウェブサイト→「ストアで予定されているイベントとワークショップ」の「条件:イベント」で絞込み→7月3日の当イベント記載欄右の「予約する」へアクセス)。
- イベント詳細はこちら。
「news HACK」最近の記事~Yahoo!ニュースの裏側などをお届けしています
- 「えっ、これが“ニュース”なの?」~Yahoo!ニュースのスタッフが面食らった、大学生による“ニュースメディア”のアイデアたち
- いつ起こるかわからない“一瞬”のために働くということ~Yahoo!ニュース運用エンジニアのジレンマと醍醐味【ニュース×働く】
- 東京・大阪ではどんなブロック紙・地方紙ニュースが読まれているの?~Yahoo!ニュースのデータから~
お問い合わせ先
このブログに関するお問い合わせについてはこちらへお願いいたします。