Technology2016.03.01

スマホにプッシュで届ける地域ニュース 開封率「SMAP超え」の需要

写真/アフロ

「Yahoo!ニュース アプリ」には、編集部が厳選した重要ニュースをリアルタイムに受け取れるプッシュ通知機能があります。このプッシュ通知はこれまですべてのアプリユーザーに一律に届いていましたが、昨年12月からは新たに“地域別プッシュ通知”の運用を始め、特定の地域にのみプッシュをお届けすることも可能になりました。

地域別プッシュ通知は、開封率(受け取ったプッシュ通知を開いた割合)が高いという傾向があることも分かってきました。誰もがスマートフォンを持ち歩く時代、ユーザーがプッシュ通知で受け取りたい情報とは何なのでしょうか。「Yahoo!ニュース アプリ」のプッシュ通知にまつわるデータと、プッシュ通知の運用と改善に取り組んでいる担当者の思いをご紹介します。

プッシュ開封率とアプリ継続率の関係は

「東日本や北日本を中心に大雪のおそれ」「U23日本、逆転で5年ぶりアジアの頂点」「スキーバスが崖下転落」――これらは最近、全国を対象にプッシュ通知したニュースの例です。テレビの号外テロップのような感じで、天気から事件事故、スポーツなど皆さんに知っていただきたい重要ニュースを編集部が厳選してお届けしています。また1日3回の定時プッシュ通知もあります。「うまく情報発信すれば災害時に人命を救うことにもつながるかもしれない」と、Yahoo!ニュース編集部の苅田伸宏は狙いを語ります。

エンタメニュースは人によって好みが分かれ、通知にネガティブな反応も予想されるので基準をかなり高く設定しています。過去には国民的認知度を持つ福山雅治さんと吹石一恵さんの結婚やSMAPの解散騒動などを配信しました。

プッシュ通知を開封したユーザーは、開封しないユーザーに比べ、翌週のアプリの継続率が10ポイント近く高いということも分かってきました。それが以下の図です。Yahoo!ニュース アプリに限らず、プッシュ通知は、「アプリをダウンロードしているが使う習慣がまだあまりない」というユーザーに、アプリに触れてもらうきっかけを提供できる効果があると言えそうです。

ただし、プッシュ通知をたくさん配信すれば良いかというとそうではありません。以前、1日に5本のニュースを間隔をあまり空けずにプッシュ通知したところ、アプリのアンインストールが激増してしまったという失敗もありました(関連記事:激戦のプッシュ通知 Yahoo!ニュースアプリの「苦い」1日)。

重要ニュースをプッシュ通知するかどうか考える際は「即時判断」が必要で、PVやソーシャルのシェアなど世間の関心度を測定して指標にするような時間はありません。プッシュ通知で求められるニュースは何か、本数や間隔は適切か――失敗を踏まえ、日々議論しています。

開封率で「SMAP超え」 地域プッシュの可能性

昨年12月には新たに地域別プッシュ通知を始めました。これは、ユーザーがあらかじめアプリで気になる地域を設定しておく(現在地に限らず出身地など自由に指定可能)と、全国向けにお届けするニュースに加え、その地域のみを対象としたプッシュ通知も受け取れるというものです。どんなニュースをどの地域に向けて届けるかという判断はYahoo!ニュースの編集部が行っています。以下は実際に配信した地域別プッシュ通知の例です。特定の地域の人々が強い関心を持つと思われるローカルニュースを選んでいます。


プッシュの開封率を調べ、全国・地域で比較してみました。それが以下の図です。例えば、大阪府限定でプッシュ通知した「大阪・堺市、全有権者68万人の個人情報流出」(12月14日)の開封率は、「竹田圭吾さん死去」(1月10日)より低いものの、「SMAPが事実上の解散 木村拓哉以外ジャニーズから独立へ」(1月13日)や「SMAP存続 生出演で説明」(1月18日)を上回る数値となっています。そのほかの地域別プッシュ通知の開封率も、比較的高い傾向が出ています。

「エンタメはスポーツと並んでYahoo!ニュースで最もよく読まれるジャンルですが、地域ニュースには同じくらいニーズがあると言えそうです。全国向けニュースには硬い政治の記事や遠い外国の出来事に関する記事もあるなかで、自分にとって縁のある土地のニュースは身近に感じられたり、生活に関わりが深くて関心が強いのではないかと思います」(苅田)

地域別プッシュ通知のその先は

そもそも地域別プッシュ通知を始めた狙いはどんなところにあるのでしょうか。昨年9月の鬼怒川決壊の際のプッシュ通知の運用を例にご説明したいと思います。この時はまだ地域別プッシュ通知を運用しておらず、2日間で以下の10本のプッシュ通知を“全国向け”に配信しました。

  • 栃木県に大雨特別警報 土砂災害や河川の増水に最大級の警戒を(9月10日)
  • 茨城県常総市の鬼怒川ではん濫 流域は今後も雨が続く見込み(9月10日)
  • 茨城県ほぼ全域に大雨特別警報 栃木県も最大級の警戒を (9月10日)
  • 茨城・鬼怒川が決壊 集落孤立、救助要請相次ぐ(9月10日)
  • 茨城・常総 不明者10人以上か (9月10日)
  • 宮城県に大雨特別警報(9月11日)
  • 栃木県の大雨特別警報を解除(9月11日)
  • 茨城県の大雨特別警報を解除 宮城県全域では継続(9月11日)
  • 宮城県大崎市で渋井川堤防が決壊 1000人に避難指示、逃げ遅れ救助を求める人も(9月11日)
  • 宮城県の大雨特別警報を解除 発表の3県すべてで解除に(9月11日)

いかがでしょうか。本数が多いと感じられた方もいらっしゃるかもしれません。10本というのは「Yahoo!ニュース アプリ」が1週間に配信するプッシュ通知の“上限の目安”として設定している本数(定時プッシュ除く)です。「全国の皆さんにも被害の大きさをお知らせしたいという思いでしたが、いくら大災害とはいえ、あまり多いと対象地域以外の方にはわずらわしく感じられるだろうという点を心配しながら編集作業をしていました」と苅田は振り返ります。

しかし今後こうした台風や大雪といった気象ニュースを伝える際に、全国向けプッシュ通知と地域別プッシュ通知の両方を運用すれば、特に重要な情報は全国に、避難所や支援物資などの情報は地域に――と、細やかな情報提供が可能になります。ほかにも例えば国政選挙で選挙区ごとの当落を該当する都道府県にプッシュ通知するといったこともできそうです。また現在の地域別プッシュ通知は、都道府県単位で配信先を指定していますが、近く市区町村単位別のプッシュ通知の試みをスタートさせる予定です。

「地域別プッシュ通知は、開封率が高い傾向にあるものの、必然的に配信数が少なくなるため、どこまで手をかけるかは効率をみながら判断しなければなりません。数字を細かく分析しながら事例をため、『ユーザーに支持されるローカルニュースとは何か』を見極めたいです」(苅田)

さらに将来的には、Yahoo!ニュースの「テーマ」機能(「子育て」「日経平均」「本田圭佑」など特定のキーワードを設定することで好みのニュースを自動的に集める機能)と連携し、その人が設定したテーマの記事をプッシュ通知で届けるといったことも考えています。

「マス(知っておきたい重要ニュース、多くの人が関心を持つスポーツやエンタメのニュース)と、パーソナライズ(個人の好みにあわせた身近なニュース)の両方をテクノロジーの力を借りながら届け、よりユーザーに満足してもらえるアプリにしていきたいと思います」(苅田)

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