Inside2022.03.31

ユーザーとニュース配信各社をつないで記事制作「課題解決ラボ」の新たな試みとは?

Yahoo!ニュースには、毎日約670媒体から約7500本の記事が配信されています。そんな記事の配信元「コンテンツ・パートナー」の各社との新しい試みに挑戦しているのが「課題解決ラボ」です。

その試みとは、コンテンツ・パートナーから依頼のあったアンケートを、企業の課題をユーザーの力で解決する「Yahoo!クラウドソーシング」で実施し、その調査結果をコンテンツ・パートナーにフィードバックして記事化してもらい、Yahoo!ニュースで配信するというものです。

どんな課題解決を目指して始まったラボなのか、前田明彦(プロジェクトマネージャー)、仲里和(編集)、何佳煕(企画・パートナー開発)に聞きました。

前田明彦
プロジェクトマネージャー
仲里和
編集
何佳煕
企画・パートナー開発

コンテンツ・パートナーから「読者にこれを聞きたい」とどんどん調査依頼が

――そもそも課題解決ラボはどういう「課題」から始まったのでしょうか?

前田
Yahoo!ニュースは、媒体から記事を配信していただいているのですが、我々のほうからより良い記事の作成に役立つスキーム(枠組)が全然提供できていなかったんです。我々はいろんなユーザーの方に使っていただいているという特性をいかして、パートナーの方々の取材のお手伝いができないかと考え、このプロジェクトはスタートしました。ただ、ユーザーの方々とコンテンツ・パートナーの方々をいきなり直接つなぐことは難しいので、Yahoo!ニュースが間に入ってスキームを構築しようとしました。

――そうしたスキームの構築となると大変だったのでは?

前田
コンテンツ・パートナーの方々が知りたいことをユーザーの方々に聞いて、我々が収集するっていう骨子は、わりと早い段階で決まったんです。ただ、具体化するときに、どうしたらユーザーの方々の許諾を得て、法令や社内のプライバシーポリシーをクリアできるのかの確認は大変でした。

――Yahoo!クラウドソーシングを使うことは早い段階で決まったんですか?

前田
そうですね。いくつか外部サービスも検討しましたが、社内の機能を使う方が早いスタートを切れることもあり、すぐに決めました。
ちゃんとした回答が集まるかっていう不安はありましたが、実際やってみると、「あ、これは記事を書く側からしたら、鍵カッコに入れたいコメントだな」とか「見出しにとったら引きがありそう」とか思わせてくれるようなコメントが想像以上にあるなと感じました。

――当初、コンテンツ・パートナーの反応はどんなものでしたか?

前田
さまざまでしたね。沖縄タイムスさんは、沖縄の「慰霊の日」に関する調査をされました。沖縄では知らない人はいない日だけど、戦後75年経った今、全国的な認知度はどのぐらいあるのかを知りたいということでした。そういった要望が来て、我々も「そういう使い方があるんだ」と気づくことがあるんです。

慰霊の日「知らない」75.5% タイムス・ヤフー 全国調査 沖縄戦の知識 低い認知度
一緒にお取り組みしたコンテンツ・パートナーの中では、別の企画案で複数回リピートして連携する事例もあり、ご好評のお声を頂いているところもございます。課題解決ラボでは、今まで連携したことがなかったコンテンツ・パートナーと連携することが多かったりするので、パートナー開発の担当としては嬉しく思います。

――最初の記事はいつ公開されたのでしょうか?

前田
2021年2月に公開された、オトナンサーさんの記事です。

「鼻出しマスク」「顎マスク」、なぜする? 自分の身近にいたら、どう対処? | オトナンサー

――現在どれぐらいのコンテンツ・パートナーと組んでいるのでしょうか?

前田
当初は5社と連携していて、今は約20社です。

――これまでの総制作本数はどのぐらいでしょうか?

前田
約80本です。

――約1年でけっこうな記事が制作されていますね。アンケートの着眼点は、まずYahoo!ニュース側から提案するのでしょうか?

前田
コンテンツ・パートナーの方々から「これを聞きたい」とテーマをどんどんいただく感じですね。
基本は前田の言う通り、コンテンツ・パートナーからテーマを頂くのがほとんどですが、2022年1月に発生したトンガ付近の大規模噴火に伴う津波の影響に関しては、その影響と注目度の高さもありましたので、正しい防災知識を伝える「知る防災」プロジェクトに取り組まれているtenki.jpさまに我々から企画案のご提案をさせていただきました。
実際にアンケートでは、津波警報・注意報が出た当日ユーザーはどういった行動をしたのかを調査し、その結果の分析、また津波の正しい知識をtenki.jpさまに解説いただきました。

トンガ噴火に伴う潮位変化 もし津波警報・注意報が発表されたら? 正しい知識を解説

全国を対象に調査をして、短期間での集計が可能

――これまでの中で、特に印象深い記事を教えてください。

さきほど挙がったオトナンサー様の記事のほか、日刊工業新聞社様は、一回アンケートを実施して、回答してくださった方にYahoo!ニュースを介して「もうちょっと詳しく聞かせてください」とさらに調査をして、副業に関しての本音を引き出した記事を制作してくださいました。「こんなに聞き出せるんだ」って印象に残ってますね。

「月収100万円」「徹夜続きで疲弊」…コロナ禍で始めた副業のリアル
tenki.jp様には、いろいろな設問をご提案いただきました。それに対して気象予報士の方がすごく詳しく書いてくださって、他ではなかなかできない読み物を記事化できたなと思います。


あなたは冬が好きですか? 雪や寒さの厳しい地域での生活は? 全国の地域差を解説
さきほどの沖縄タイムス様の「慰霊の日」の記事も、たくさんアイデアを出してくださって、それをうまく聞く方法を編集としても試行錯誤した思い出のあるアンケートです。地方紙様は、「普段自分たちでアンケートをするときは、自分たちの発行エリアに向けてしかアンケートが取れないけれど、このスキームだと全国に聞いて比較できるのが良い」とおっしゃってくれます。
前田
投票するようなシステムとは違って、Yahoo!クラウドソーシングを使った場合は、15問とか20問とか聞けるんです。回答する方の年代、地域も指定できます。「こういう視点ではどうか?」と多角的に深く聞けますね。

――フジテレビ、TBSの番組とも連携もしているそうですね。

フジテレビ様とは、選挙特番で「あなたが注目している選挙区を教えてください」というアンケートを実施しました。TBS様とは、新型コロナ関連で「国のさまざまな施策についてどう思いますか?」「どういうことに気をつけていますか?」というアンケートを何回か実施して、夕方のニュース番組で使っていただきました。放送ではなくウェブですと、テレビ東京様ともアンケートを実施しています。実施から結果が出るまでのスピードに関して、「こんなにすぐ集まるんだ」と、どこの会社からも評価していただいています。

――何日で回答をコンテンツ・パートナーに戻せるのでしょうか?

アンケートによってさまざまですが、回答者の方の属性を制限しなければ、早いとアンケートを実施して24時間以内には回答が集まります。その後、結果をまとめる作業があるので、実際にお渡しするまでには、早いとアンケート実施から3日ぐらいです。

トピックス編成の知見をフィードバック

――コンテンツ・パートナーからの反応で印象的なものはありましたか?

雑誌の方からですと、「自分たちの読者層とは違う層にもアンケートができる」と評価していただきました。また、課題解決ラボでは「みんながどう思ってるんだろう?」というのを重視しています。そのため、ある程度はどのような話題でもアンケートの実施をOKとしているのですが、その点も評価していただいていますね。個人情報保護の観点から聞けない質問や、「この聞き方だと誤解されて炎上してしまうんじゃないか」という場合は、「この設問で聞くのは難しいかもしれないです」と私たちからご相談したこともありました。しかし、基本的にはどんな話題でも「ぜひ聞いてみましょう」という姿勢で、それに対しても「良かった」と言っていただいています。

――アンケートに関して意識していることはどんなことでしょうか?

「こういう視点がちょっと足りないかもしれない」ということがあれば、私たちからコンテンツ・パートナーの方に相談しています。また、回答する方が答えやすくするためにはどうしたらいいのかは、コンテンツ・パートナーの方にはなかなかイメージしづらい点だと思うので、私たちからしっかりご提案しなければいけないと思っています。そのほか、読者に関心を持っていただけそうな記事か、記事の見出しを工夫できそうか、もし仮にトピックスに取り上げる場合に14字の見出しをイメージできるかについても意識しています。課題解決ラボだけでなく、Yahoo!ニュースのトピックスの更新業務も担当しているのですが、その経験が生かされています。

――今後大きくしていきたい課題解決ラボのメリットは、どんなものでしょうか?

前田
やはり多くの人にアンケートを答えていただけるのは大きな強みなので、そちらを磨いていこうと話をしています。ユーザーの規模感が日本一あることをいかして意見を吸い上げていくことに磨きをかけて、コンテンツ・パートナーの方々やユーザーの方々に貢献していきたいです。

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