Media Watch2015.10.30

“ホッテントリ”と“ヤフトピ”はなぜ重複しない? はてブの中の人が考える「ニュース」、そしてユーザーへの思い

 8月に10周年を迎えた「はてなブックマーク」。ウェブサービスに関わる者にとっては、ユーザーの反応を知る手段だけではなく、日々の情報収集としてなど、日常的に使っている方も多いサービスの一つではないかと思います。「はてブ」をきっかけにYahoo!ニュースのコンテンツを知っていただくユーザーも多い昨今、「はてブ」の中の人が考える"ニュース"とは。そしてサービスを支えている「ユーザー」への思いとは――。はてなブックマークをはじめ、はてな運営の各種サービスを統括する、プロデューサーの石田樹生さん(id:jusei)にお話を聞いてきました。

「ニュースにこだわらない」ことがこだわり

――はてなブックマークの各カテゴリにはニュース記事をはじめ、さまざまな情報があがってきますよね。一体どのような考え方のもと、あのページがつくられているのでしょうか?

石田 サービス開始から続いている思想は、「ユーザーが面白いと思ったものをちゃんと表に出す」ということです。通常のメディアであれば、「コンテンツをつくる・調達する」→「(運営者側が)面白いと思ったものをユーザーに流して反響する」といった流れだと思いますが、はてなブックマークはその流れが逆で。ユーザーが面白いと思ったことをメディアにのせることで、ユーザーがこれまで気づかなかったものに出会う。起点が運営者側になくて、あくまでも「ユーザーが面白いと思った情報」が起点になっているので、そこが他のメディアなどとは違う特徴です。

 少しこだわった言い方をしますと、「ニュースにこだわらない」というのも一つの特徴かなと。他のニュースサービスでは、「ニュースとは何か」を定義した上で情報を提供されていると思いますが、はてなブックマークにあがってくる情報は、「インターネット上のコンテンツ」位の粒度で、「URLであればOK」というスタンス。ブログでも、プレスリリースのPDFでも、大学がHPで発表した研究の成果でも、動画でもイラストでも……「ユーザーが面白いと思ったものがそのまま、何でもあがってくる」、それが一番の特徴ですね。

――そのような考え方のもと、ユーザーの興味関心がうまく反映されるようなアルゴリズムを組んでいると。

石田 そうですね。(人の手で)コンテンツを取捨選択するということはしていません。ユーザーの行動に委ねる、ということを意識しているので。

Yahoo!ニュースとホッテントリ、被らないところに面白さがある

――記事がはてなブックマークの人気エントリー(hotentry 通称:ホッテントリ)にあがる際の要因としては、インフルエンサー的なユーザーのブックマークが起爆剤になるケースが多いのでしょうか?

石田 発信力の高い、有名なはてなユーザーの方がブックマークすると記事が広がりやすいという傾向はありますね。ただ、僕らが意識的にインフルエンサーを動かそうとしていることはありません。「あの人がブクマしている記事ばかり人気エントリーにあがってくる」という状態が続いてしまいますと多様性を失ってしまいますし、様々な個人の情熱が人気エントリーにあがるようアルゴリズムを組んでいます。

――Yahoo!ニュースのコンテンツも人気エントリーにあがっているのをよく見かけますが、折角の機会なので、Yahoo!ニュースに対する印象などをお伺いしてもよいでしょうか?

石田 私が入社した際に「不思議だな」と思ったことの一つに、「ヤフトピとはてブの人気エントリーはなぜ重複しないんだろう」というのがありました。ヤフトピ(Yahoo!ニュース トピックス)のように沢山の人に見られているニュースのネタは、はてなブックマークでも広がりやすいのかな、と一見思われますが、それぞれの並びで一番上に表示している記事は大体重複しないんですよね。それって、実は面白い所なんじゃないかなと思います。

  インターネット上のニュースに関してはYahoo!ニュースさんがリーダーなので、はてなブックマークはわざわざYahoo!ニュースさんに競合して新しくない価値を創りだすよりも、Yahoo!ニュースさんと競合しない、被らないところに面白いものがあるのでは、と常に意識しています。お互いにとっての役割分担が上手にできている状態なのではと思っていますし、私達も「役割分担」といえる位には、自分たちの役割を大事にしているつもりです。

 はてなブックマークのユーザーは、「いまトレンドかどうか」というマインドよりも、「その記事自体がいつか読みたいかどうか」かという行為に基づいているので、遅効性のある記事でも人気が出やすいのかなと感じています。メディアとの会話で私達も気づかされることもありますが、コンテンツのタイプの違い、「フロー」か「ストック」 か、というところで違いがあるなと。その点では、「Yahoo!ニュース 個人」の側面から見ると、コンテンツクリエイターの発表の場として、人気エントリーに入る記事が最近増えてきたなという感覚があります。

「ユーザーの情熱」を人の手で吸い上げる

――10年目の新機能として、「特集」が始まりました。Yahoo!ニュースでは社内で「人の力×テクノロジー」がトピックになっているということもあり、特集機能のリリースのお知らせで書かれていた「編集とユーザー活動とエンジニアリングを融合」という言葉が気になったのですが。

石田 はてなブックマークが大きくなり、ユーザーの参加度が増していく一方で、埋もれていくジャンルや記事が出てきてしまっていると思っていました。あくまでもユーザーが起点のサービスなので、ユーザーが特定のジャンルに熱中していれば、一方で興味関心が薄れていくジャンルももちろんあります。アルゴリズムで漏れてしまった「多様性」を、人の手でうまく吸い上げることをやっていきたいなと。

 例えば、「学び」カテゴリにカーソルをあてると出てくる「図書館」という特集テーマ。こうしたテーマは一定のニーズは確実にあるのですが、一定の方々で止まってしまっている、という現状がありました。そこであえて特集をつくることで、「図書館に興味が湧いたからブックマークしてみよう」というユーザー活動を喚起できないか、という考えのもと設けています。まだ実験段階ではありますが。

――特集テーマのラインアップは編集が決めている?

石田 コンセプトや視点は編集担当がつくっていますが、そこに流れてくる記事については、ユーザーの活動、アルゴリズムに委ねています。さらに、そこに対して「いかにユーザーに介在してもらうか」ということを常に考えています。「図書館で働いている方が図書館の情報を長きにわたってブクマしている」とか、「将棋の話題をひたすらブクマしている」とか、情熱を持ってブクマ活動を行っているユーザーが沢山いらっしゃるので、そうした方々の情報を広く届けたい、紹介していきたい、という思いが強いですね。

次の20年目に向けて、海外進出も?

 
――変化の著しいインターネットの世界で、多数のユーザーを抱えながらサービスを長く続けるということは、大変な苦労が伴うことだと思います。はてなブックマークがこれまでの10年間続いてきた要因はどんなところにあったのでしょうか?

石田 私自身はサービスを担当して約2年ほどなので、歴代の担当者が乗り越えてきた苦労について自分の事のようにお話することはできないんですが……。10年続いた要因を分析すると、まずは「ユーザーの皆さんのおかげ」ということは明らかなことです。ビジネスとしては、国内でいち早くソーシャルブックマークサービスを提供して一定のユーザーにご利用いただけるようになって、競合がいない環境だったというのも大きかったのかなと思います。例えばニュースアプリの世界ですと「激戦」と呼ばれるような環境ですが、僕らはそうした激戦が起こっている世界とはまた違うところにぽつんといて、ユーザーと会話に集中している、という感覚に近いかもしれません。

――次の10年後に向けて、どのようなことを考えていますか?

石田 はてなの場合、業務で使っている自社のグループウェアに歴代ディレクターの言葉や、ユーザーの声を受けて過去にどのような開発や改善をしてきたかという歴史が残っているんですね。そうした過去の社員がやってきたことを継承していかないと、次の20年を目指す時に難しくなってくるのではないか、ということも意識しています。

 また、これまでは「テクノロジーに強いはてブ」といわれてきましたが、そうした強みを残しつつ、多様性のあるプラットフォームになっていくことも必要だと思います。この10年でインターネットがすごく普及して、「テクノロジーだけのインターネット」ではなくなってきました。リアルな場でインターネットとふれあう機会が増えてくるので、ユーザー側のニーズも多様化してきます。そこにしっかり追いついていくことですね。また、今のはてブユーザーが、10年後にも使いたくなっているサービスでいられるかどうか、ということも大事かなと思います。

 もちろん、今の中高生が社会人になった時に使っていて欲しいサービスでもあるので、今後PCよりもスマホに慣れている世代が増えていく中で、スマホに最適化したアプリとして、自分たちの価値を再定義する事を重要視しています。遠い未来では海外進出も考えています。国内のユーザーの変化にしっかり向き合った上で見えてくる未来だと思うので、至近の未来ではないですが。10年の視野でいえば、そういったことも自分たちの目標に持っていきたいよね、ということは話していますね。

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