Inside2014.12.17

「Yahoo!ニュース 個人」カンファレンスを終えて~オーサーと責任者に聞く展望と課題

12月1日に『「Yahoo!ニュース 個人」オーサーカンファレンス2014』を開催しました。カンファレンスではアワード創設などオーサー支援策を発表。その後、「良質なメディア作りと書き手支援の重要性について」をテーマにパネルディスカッションを実施しました。カンファレンス、パネルディスカッション、その後の懇親会あわせて計108人のオーサーにご参加いただきました。(※カンファレンスの様子についてはこちら

今回は、カンファレンス後の懇親会の会場でお聞きした一部オーサーの生の声や、「Yahoo!ニュース 個人」の今後の展望や課題についてご紹介します。

「専門的な分野は、書ける場が減ってきている」

田中 淳夫(森林ジャーナリスト)

――きょう発表されたアワードの創設などの施策について

森林に関する話題はPVにあたらないことも多い。PVだけでは評価されにくい専門的な分野でも評価してくれる場が出来たのはよいことだと思う。

――書き手への編集者の介入をめぐる議論もあるが

自分にとっては、「Yahoo!ニュース 個人」では好きに書きたいほう(笑)。自分のようなテーマを追っている立場としては、専門家向けの業界紙が廃刊になったりと、書ける場が減ってきている。自由に書ける場があるのはありがたい。

――田中さんにとって「Yahoo!ニュース 個人」とは?

世間の風や反応を感じる指標。

「フリーランスへの支援を」

大元 隆志(ITビジネスアナリスト)

――きょうのカンファレンスや発表をうけての感想は

自分自身は、「これから記事を書こう」というときに、既に同じテーマの話題がトピ(注:Yahoo!ニュース・トピックス)にあがってしまっているとモチベーションが下がってしまう。なので、オーサーアワードのような、別の評価軸の枠ができるのは非常にありがたい。

――「Yahoo!ニュース 個人」に今後求めるものは

プロの書き手は編集者がいるけど、僕らのようなサラリーマンはプロみたいに費やせる時間が少ない。今の「Yahoo!ニュース 個人」のスタイルは 好きだが、今後について述べるとすれば、フリーランスへの支援。例えば、ヤフーの施設を使って取材場所の提供などをしてもらえるとありがたい。組織に所属せずフリーランスで取材活動をする場合、会議室の予約などでも手間やコストがかかってしまう。

「既存メディアへのカウンターに」

藤田孝典(NPO法人ほっとプラス代表理事、社会福祉士)

――藤田さんといえば、子育て世帯臨時特例給付金の記事が非常に反響が大きかったのが印象的でした。Facebookでは48万シェアを集めましたが、当時の心境は。

実は書く前はあんなに反響があるとは思っていなかった。「教えてくれてありがとう」といった感謝のコメントをもらったりした。そもそも増税すら知らない人もいて、新聞を読んでない人が多くなっているという印象を持った。

――個人の書き手によるプラットフォームの未来をどう考える?

既存メディアでは本音が書けないこともある。本音で記事が書ける自由なプラットフォームは既存メディアへのカウンターになると思う。

時間の都合上、全ての参加オーサーの皆様に直接お伺いすることが出来ませんでしたが、SNS上や個人ブログなどでも、参加後のご感想やご意見をいただいております。

施策の意図や今後の展望は?~責任者に聞く

ここまでオーサーの生の声やご意見の一部をご紹介してきましたが、カンファレンスを終え、あらためて岡田聡「Yahoo!ニュース 個人」サービスマネージャーに、今回発表された支援策の意図や今後の展望を聞きました。

岡田サービスマネージャー(右)(※写真は12月1日のパネルディスカッション)

――オーサーアワード創設が発表された。PVだけでなく、別の指標で評価しようという意図は。

岡田 従来のメディアビジネスでいうと、原稿を執筆していただき、それに対価をお支払いするという、ごく当然の商慣習があるわけですが、実際は、単純にページ単価いくら、あるいは文字数いくら、というシンプルな評価ではないわけです。原稿の質や分量、取材の有無、これまでの媒体への実績・貢献度、締め切りまでの期間…など、あらゆる手間ひまをかけた要素が加味されて、書き手それぞれに対価が決まります。

一方で、インターネットの代表的な評価指標としてPVが存在するわけですけど、日々行われるページ改善やSNSの影響によって、流入から着地、回遊という経路が常に変化していて、単純なページ表示回数ではコンテンツの良さがわかりづらくもなっています。読了率や滞在時間で満足度を図ったりする評価もありますが、それも質を担保している完璧な指標かといえば、必ずしもそうでもない。

もちろん、それらの指標を掛け合わせていくことで見えてくるものはありますが、そうしたデジタルな評価だけでは捉え きれない、創造のための苦労や、コンテンツの質があると思っています。そこはアナログな評価をすることで解決したい。簡単にいえば「人の作ったものは、人でしか評価できない」という考え方です。

ですので、PVという指標とは別に、「Yahoo!ニュース 個人」の「発見と言論が社会の課題を解決する」コンセプトに沿って、数値だけでなく原稿の内容を見て表彰しよう、というのが今回発表したオーサーアワードの意図です。

この施策をきっかけにして、受賞オーサーの読者がひとりでも増えてくれれば嬉しいですし、同時に、金銭的に支援するための仕組みになると考えています。

今回、1PVあたりの広告売上から、レベニューシェア料率を30%から50%に引き上げましたが、それはオーサーへのお支払いの基礎にして、残りの50%の原資を、オーサーアワードやオーサーコメント、SNSからの流入貢献など、書き手の活動場所の拡大による新しい対価支払い、つまり「PVとは連動しない評価」を行うために使うことにしました。

――パネルディスカッションでは、記者証を出すかどうかという議論があった。ファクトを重視するのか、言論を重視するのか、どちらなのか。

岡田 まず取材のサポートという意味での記者証発行については、オーサーのみなさんに随時ヒアリングをさせてもらっていますが、現状では必要だという人もいるし、いらないという人もいる。必要という方には、どういう形が最適なのかをきちんと見定める必要があると考えています。こちらも「発見や言論が社会の課題を解決する」というコンセプトに、記者証という要素が大きな役割を果たすのであれば、取材内容を含めて検討すべきだと思います。

一方で、記者証を用意したところで実効性がないと意味がない。記者クラブなどは内部のルールがしっかりあると思いますし、海外などで「Yahoo!ニュース 個人」の記者証などが意味をもつのか未知数です。実効性についてもあわせて検討が必要だと思います。

言論なのかファクトなのか、については、どちらか一方を重視するというのではなく、オーサーのタイプ、専門性によって記事の内容が違います。現場取材に基づいたファクトの積み重ねで独自の発見などを記事にする方もいるでしょうし、それまでの知見や経験を生かして、事実として報じられている事象に問題提起をする方もいるでしょう。

発見や言論にはファクトはひとつの重要な要素だと考えていますが、現場取材でファクトを積み重ねる記事ばかりには、おのずとならないと考えています。

――編集部の関与やサポートについて

岡田 編集部の関与やサポートについては、既存のメディアのそれとは役割が少し違うものになるだろうと考えています。オーサーのみなさんに対して、運営の意向で弊社の利益や政治的な主張の代弁を依頼することはありません。いま話題となっているイシューについてのご提案はしますが、原稿執筆のきっかけにしていただければ良いと考えています。

「Yahoo!ニュース 個人」というサービスはプロジェクト名が「ホペイロ」というのですが、これはサッカー用語で「用具係」という意味です。表舞台に立つ選手がオーサーで、私たちはというと、みなさんが活躍できるように、様々な準備やアドバイスを行う裏方の役割です。「Yahoo!ニュース 個人」では、そのような形式はとても大事だと考えています。個人がネット上で情報発信をすること、それをお手伝いして社会や人の課題を解決すること、両方をやっていきたいですね。

カンファレンス詳細など

お問い合わせ先

このブログに関するお問い合わせについてはこちらへお願いいたします。