森カズシゲ

【PR】「相手への過剰な期待」が落とし穴――共働き夫婦、円満のヒント

1/16(火) 9:49 配信

共働き世帯は忙しい。互いに顔を合わせる時間が少なければ、ささいなことでけんかになることも。限られた時間の中で、家族がより通じ合える方法はないのか。共働き世帯のためのコミュニケーション術とは。

「業務連絡」しかできなかった

「日常会話なんて皆無でした。あの頃には戻りたくないですね……」

都内に住む太田幸夫さん(仮名、42)は顔を曇らせる。前職のゲーム会社に勤めていた10年ほど前、妻の恵子さん(仮名、42)はITエンジニアとして働いており、2人の息子は保育園に預けていた。通勤に1時間かかる恵子さんに対し、幸夫さんの職場は自宅から5分の距離。息子たちの送り迎えは、幸夫さんが担当することになった。

2001年に結婚した太田さん夫妻。長男と次男が年子のため、働きながらの家事・育児は夫婦にとって大きな負担になった(撮影:栃久保誠)

「夕方になると会社を抜け出し、保育園にお迎えに行っていったん帰宅。遅れて帰宅した妻に子どもたちを任せ、再び会社に戻っていました。深夜残業や休日出勤は当たり前、会社に泊まり込むことも少なくない職場だったので、1日のうちに妻と話せるのは子どもたちを引き渡すタイミングだけ。内容も、保育園からのお知らせなど必要最低限な『業務連絡』のみでした」

「けんかをする気力もなかった」という幸夫さん。家事を分担しようにも話し合う時間がない。恵子さんも「言ってもしようがない、と諦めていました」と当時を振り返る。お互い、不満を胸の内に溜め込んでいた。

2007年、恵子さんは転職。以前よりも時間に余裕ができた。夫婦で会話をする時間は増えたが、夫婦げんかも増えた。幸夫さんが変わらず忙しいままだったからだ。

「会話をしたくても聞いてもらえなかったり、『テーブルにペットボトルが置きっぱなし』といったささいなことが気になったり、以前よりストレスを感じるようになりました。私は物事を白黒ハッキリつけたいタイプなのですが、夫は曖昧なままでも気にしない性格。時間の余裕ができたことで、お互いの性格の違いを感じる機会が増えたのかもしれません」(恵子さん)

その後、幸夫さんは転職し、家族で休日を一緒に過ごせるようになった。子どもは2人とも中学生に。

「家族で会話をする機会が増え、けんかもだいぶ減りました。時間と心の余裕を確保することが、いかに大事かを知りました」と幸夫さんは振り返る。

自然な日常会話を交わせる余裕を確保したい(撮影:森カズシゲ)

「どうして自分だけ」が引き金に

結婚当初は感情をぶつけ合うだけだった夫婦げんかが、年月を経て「交渉の場」に変化しているという夫婦もいる。

山形市在住の田中詩織さん(仮名、35)は、夫(38)と小学生の娘(6)との3人暮らし。毎日の炊事や娘のお迎えなどは詩織さんが担当し、洗濯や掃除は夫が週末にまとめて行っている。夫婦で同じ出版社に勤めているが、繁忙期が異なるため、一方の残業や休日出勤が続けば「すべての家事・育児の負担が、もう一方の肩にかかる」(詩織さん)。

「PTA活動や学校行事などは日程が流動的なので、分担を決めず『忙しくないほうが行く』としています。ただ、学校の活動は夫婦間で引き継ぎしにくく、自然とどちらかばかりが行くようになってしまって……。お互いに『どうして自分だけが』という不満が募ると、けんかへ発展しがちなんです」

夫婦げんかはできるだけ避けたいが……(撮影:森カズシゲ)

そこで、どちらかが感情的になっているときは、「冷静になるまで2人とも話し合いを避ける」(詩織さん)という。頭が冷えてきた頃にどちらからともなく話し合いの場を持つ。

「話し合いの場で言いたいことを全部伝えられるよう、事前に自分の主張を書き起こしています。揉めごとを解決するための交渉の場になっていますね」

「他人同士」だと認め合う

自身も共働きのすれ違いから離婚の危機を経験した、伝える力【話す・書く】研究所の山口拓朗所長は「まずは、相手に対する『○○すべき』を手放すこと」だと強調する。

「『○○すべき』という考え方の裏には、相手への過剰な期待があります。この考えを持っていると、相手が期待通りに動いてくれないときに裏切られたと感じ、怒りを抱いたり失望したりしてしまう。『○○すべき』は、いわば“怒りのスイッチ”。相手がするべき、という思い込みを捨てることで、ネガティブな感情から解放されます」

言わなくてもわかるだろうという態度もまた、相手に対する過剰な期待の表れ。山口さんは「夫婦といえども『他人』であることを意識するとよい」と言う。「配偶者は自分とは別の人間。自分の要望や考えは、やはり口にしなければ伝わりません」

独自の文章術・コミュニケーション術を確立し、書籍のほか講演や研修を通じてノウハウを提供している山口さん(撮影:中道薫)

「『相手がやるのが当たり前』『言わなくてもわかる』という考えが前提にあるとすれば、パートナーに対する感謝の気持ちも湧かないでしょう。夫や妻である前に一人の人間であること、自立した存在であることを認めるのが大切です」

山口さんが勧めるのは、「雑談などで会話の頻度を増やすこと」だ。

「顔を合わせる時間が限られている共働き世帯には、メールやLINEなどで、必要な用件以外に『なんでもないこと』を送り合うのがおすすめです。ランチに何を食べた、こんなおもしろいものを見つけたなど、ちょっとした話題で構いません。離れて過ごしていても、日頃から夫婦で会話をしやすい空気を保っていれば、いざ顔を合わせた時もスムーズに自分の思いを伝えることができます」

山口さんの「夫婦は『他人同士』」という考え方は、妻との話し合いの中で生まれた。「お互い言いたいことは我慢せず言うようになりました。言ったことを理解してもらえなくてもいいんです。『本音を言える相手がいる』のが幸せなことですから」(山口さん)(イメージ:アフロ)

怒りは「二次感情」

ママ向けコミュニティーサイト「ママスタジアム」が2016年、子育て中の女性496人を対象に行ったアンケートによれば、「夫婦げんかをする」と答えた家庭は全体の約85%に上る。その頻度は「1週間に1回」が20.8%、「1カ月に1回」が28.8%。「毎日」と答えた家庭も4.8%存在した。

できることならば、夫婦の衝突は避けたい。だが、けんかをせずに不満を溜め込むのもストレスになる。夫婦円満コンサルタントの中村はるみさんは「夫婦げんかは必要」だと主張する。

「相手の感情を知るために、冷静な話し合いだけでなく、ある程度の夫婦げんかは必要です。会話に感情がともなうと、相手の本音のみならず、意識していなかった自分の欲求や価値観に気がつくことも。夫婦げんかは、お互いの本音を知るよい機会でもあるのです」

中村はるみさん。夫婦円満コンサルタントとして、これまで3000件以上の夫婦トラブルを解決。「男女が生きやすい社会」を目指し、講演やメディア出演も多数(撮影:中道薫)

夫婦げんかを生産的にするためには、怒りが「二次感情」であるということを知っておきたい、と中村さんは言う。

「心理学では、怒りの裏には、悲しみや寂しさ、不安、むなしさなどの『一次感情』があり、これらが満たされないことで怒りが生まれるといわれています。つまり、『怒っている人は困っている人』だと捉えてください」

毎日帰りの遅い夫は、会社の将来が不安で怒りっぽいのかもしれない。夫の帰宅を待つ妻は、寂しさから怒っているのかもしれない。もしも自分が寂しくて怒っていると気づいたならば、怒るよりも素直に「寂しい」と伝えたほうが問題の解決が早まる。相手と自分、それぞれの一次感情に気がつくことが、夫婦が歩み寄る近道となる。

とはいえ、いざけんかとなれば感情的に言いたいことを言ってしまうこともある。けんかがこじれてしまえば、関係を修復するのも難しくなる。中村さんは、「夫婦げんか」でトラブルを生まないためのルールをこう語る。

監修:中村はるみさん

子どもがいる場合の夫婦げんかは、さらに注意が必要だ。相手がいない場面で「パパはひどい」「ママは怖い」などと、子どもに愚痴をこぼさないでほしい、と中村さんは言う。「子どもはカウンセラーではありません。子どもが持つ『ママが好き』『パパが好き』という素直な気持ちを否定せず、大切に育むようにしてください」

「事実を伝えること」から始める

家族間の円満なコミュニケーションのために、「相手を認めていると、きちんと発信する」ことが必要だと、専門家は口をそろえる。

「パートナーの『自分はここに存在してもよい』『自分は必要とされている』という気持ちを満たすことは、夫婦生活を送る上でとても大切です。心理学では『自己受容』と呼ばれ、自分を否定せずにありのままの姿を受け入れることから、対人関係が前に進むとされています。感謝の気持ちを伝えたり、よかったことを褒めたり、相手の存在を認めてあげることを意識してください。言葉だけでなく、ハグなどのスキンシップも自己受容を満たす効果があります」(前出の山口さん)

「スキンシップには子どもの自己受容を育む効果もあります」と山口さん (イメージ:アフロ)

相手を褒めるときは無理に言葉を飾らなくてもよい、と中村さんは言う。

「事実をそのまま伝えることから始めましょう。部屋がきれいに片付いていたら『ピカピカだね』、食事がおいしかったら『おいしいね』でいいんです。特に、夫は妻を褒めることに照れを感じてしまいがち。まずは素直に言葉にすることを心がけてみましょう」

共働きの慌ただしい生活では、時には夫婦間で思うように意思の疎通が図れず、ぶつかることもある。だが、顔を合わせる時間が短いからこそ、言葉にすることを諦めないようにしたい。中村さんはエールを送る。

「1人だったらけんかをすることもできません。悩める相手がいるというのは、幸せなことなんですよ」

取材・文:井上マサキ
編集・制作:ノオト
[写真]
撮影:森カズシゲ 栃久保誠 中道薫
イメージ:アフロ
[図版]
藤田倫央


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