森カズシゲ

【PR】離れた親と、孫の姿を共有したい――「デジタルの壁」を越えつながるヒント

2017/12/8(金) 7:00 配信

仕事や家事・育児に追われる共働き夫婦にとって、離れて暮らす親とのコミュニケーションは悩みの種だ。スマートフォンで連絡が取れれば楽だが、親世代は最新ツールを使いこなせないことも。電話で話そうにも時間が合わず、手紙を書いたり子どもの写真を印刷したりする余裕もない。スマホやネットが発達する一方で、埋まらない高齢者との「デジタルの壁」。親子3世代が互いの価値観を尊重しながら「つながる」にはどうすればよいか。その糸口を探った。

スマホと手紙、食い違うコミュニケーション手段

三重県の実家の父から、分厚い封筒が届いた。中を開くと、便せん5枚にわたって近況が綴られ、先日帰省した時の写真が同封されている。都内在住の竹中久美さん(仮名、30)はプレッシャーを感じた。70歳を超えた両親はスマホが使えない。この封筒の重さに見合うよう、返事を書くことができるだろうか。

竹中さん夫妻はともにIT業界で働いており、日中は2歳の息子を保育園に預けている。2016年11月に育休が明けて以来、仕事と家事・育児に追われる日々。気がつけば、復職前よりも親とのコミュニケーションの頻度は下がっていた。

フィーチャーフォンでは、スマホから送られた高解像度の写真が開けないことも少なくない(イメージ:アフロ)

久美さんの両親はフィーチャーフォンを持っているが、料金プランが従量制。スマホで撮影した写真や動画を受信すると通信料がかさむため、「ケータイには送らないでほしい」と言われている。息子が生まれた当初は、自宅で写真を印刷したりDVDにまとめたりして送っていたが、最近は忙しくて、その時間が作れない。

「スマホなら、家事・育児の合間にも片手でやり取りができるのですが……。両親もスマホに興味はあるものの、周囲に使い方を教えられる人がいません。私たちは年1、2回帰省する程度なので、つきっきりで教えるのは難しいですし」(久美さん)

「実家にもパソコンはあり、Skypeをセットアップしたこともあるのですが、何かの拍子で使えなくなりそのままになっています」(久美さん)(撮影:栃久保誠)

夫の雅史さん(仮名、31)は、母親とスマホでコミュニケーションを取っている。母親は埼玉県在住のため、アプリのインストールなどについて、雅史さんが定期的に相談に乗っている。都度、説明しないとならないが、LINEで写真や動画を共有できるのは、竹中夫妻にとって大きなメリットだ。

「私も両親にもっと孫の姿を見せてあげたいんですよ」と、久美さんは話す。しかし、遠方に暮らす両親のことを思いながらも、日々のタスクに忙殺され、時間だけが過ぎていく。封書が届いてから1週間後。結局、久美さんは、メールで簡単に返信を済ませてしまった。胸の奥がチクリと痛んだ。

雅史さんの母親がスマホを機種変更したときには、トラブルが起きた。「データの引き継ぎがうまくいかず、『スマホが壊れた』と連絡してきて……。電話では指示がうまく伝わらなくて、何度か直接会って対応しました」(雅史さん)(撮影:栃久保誠)

竹中さん夫妻とその親世代の例のように、IT(情報技術)を使いこなせる人とそうでない人の間に生じる、情報や機会などの格差を「デジタルデバイド」と呼ぶ。

厚生労働省によると、65歳以上の高齢者を含む世帯のうち3世代世帯が占める割合は、約20年の間に40.7%(1989年)から11.0%(2016年)まで減少。同時に、高齢者の単独世帯は14.8%から27.1%に、高齢者夫婦の世帯は20.9%から31.1%にまで増加している。核家族化が進み、祖父母世帯と離れて暮らす家族が増える中で、こうした格差の解決の難しさを感じているのは竹中さん夫妻だけではないだろう。

コミュニケーションは本来「共有」するもの

3世代が離れて暮らすことで、コミュニケーションにはどんな影響があるのか。KDDI総合研究所でユーザインタラクションの研究に携わる新井田統(にいだ・すまる)さんは、「共有」というキーワードを挙げる。

「コミュニケーションという言葉は、“共有”を意味するラテン語『communis』が語源といわれています。相手に何かを伝えることだけではなく、伝えた結果相手と何かを共有することが、本来のコミュニケーションの姿なんです」

顔が見えないコミュニケーションでは、感情を共有することが難しい(イメージ:アフロ)

「離れて暮らすことは、同じ時間を共有できなくなること」と、新井田さんは言う。

「コミュニケーションは、共有した時間が多いほどスムーズになります。逆もしかり。特に祖父母と孫は、年代も経験も異なるため、共有した時間の少なさがコミュニケーションの停滞につながりがちです」

母親が間に入ろうとしても、夫方の祖父母が相手になるとうまくいかないケースも多い。夫方の家族とは、母親も共有した時間が少なく、同様にコミュニケーションが難しいからだ。

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