栃久保誠

【PR】「食卓は人間関係の質を示す場所」―― 忙しい家族が一緒に食事をする意味

2017/11/28(火) 10:06 配信

共働きで夫婦ともに帰りが遅く、子どもは毎日塾通い――。多忙な家族の生活時間を合わせるのは難しい。毎日の食事を家族一緒にとることは簡単ではないが、専門家は「食事の時間は心に大きな影響を与える」と指摘する。実例や専門家のアドバイスから「家族で食卓を囲む意味」を考える。

「一家団らん」は週1回あればいいほう

「昨夜も夫は23時頃帰宅して、1人で置いてあった夕飯を食べたみたいです。私は、すでに子どもと寝てしまっていたので、その様子は見ていませんが……」

川崎市在住の西田玲奈さん(仮名、37)は、保育園に通う3歳の息子と3人暮らしだ。メーカーの事務職で、勤務時間は平日の9時から17時まで。8時前に家を出なければ、始業時間に間に合わない。夫の幸平さん(仮名、40)は、ジムでインストラクターとして働いており、平日は基本的に午後から夜までの時間帯に勤務している。帰宅は深夜になることも珍しくなく、おのずと起床も遅くなる。

「夫が不規則な勤務のため、息子は私と2人きりの食事がほとんど。家族で食卓を囲めるのは週1日あればいい方です。仕方のないことだとわかりつつ、息子に大人数での楽しい食事や一家団らんをできるだけ経験させたいなと思ってしまいます。夫と食事をともにできないので、夫婦の会話も以前より減ってしまいました」

食事の「相手」と「距離」が心に大きく影響する

「食事は、日常生活で当たり前に繰り返される時間だからこそ、心に大きな影響を与えます。私は、食卓は人間関係の質をはっきり示す場だと考えています。いい食卓は、のびのびとして明るく温かい心を育みます」と、食卓コミュニケーションを研究する、室田洋子さん(臨床心理士・聖徳大学前教授・兼任講師)は言う。

「夕食を家族で一緒に食べるかどうか」と「身体のだるさや疲れやすさを感じることがあるかどうか」のアンケートのクロス表。だるさなどをしばしば感じるかどうかは、夕食を誰かと一緒に食べている子どもが15~20%程度なのに対し、一人で食べる子どもは30%を超えている。室田さんは「不登校やいじめの兆候の発見はここが基点になる」と話す。(日本スポーツ振興センター「平成22年度 児童生徒の食生活実態調査」から作成)

一方で、「問題のある食卓」は、閉ざされた心やキレやすい心を生んでしまう場ともなり得るという。

「『孤食』といわれる一人きりの食事や、母親がガミガミと怒りながらの食事は、当然いい食卓とはいえません。子どもだけに食事を『食べさせる』のではなく、大人も合わせて『一緒に食べる』ことが大切。心を病む子どもは、食卓に問題があることが多いんです」

室田さんは、食卓において注目すべきは「相手」と「距離」だと指摘する。

「近い距離で食事をともにする場ですから、大人はもちろん子どもは特に相手の影響を受けやすい。そのため、一緒に食事をする機会が最も多い家族から、食卓を通して感情の動きや考え方、人との関わる姿勢などを学びます」

また、1メートル前後に家族全員が座る食卓では、「言葉には表れない本音もわかってしまう」と室田さん。

室田さんが行う「小学5年生に食卓の絵を描いてもらう」という調査では、紙の端っこに自分1人だけの食事の様子が描かれたり、ガミガミと怒る大人が一緒にいたりと、さまざまな日本の食卓の風景が浮かび上がるという。この傾向は以前より増えており、「若者の対人関係能力の低下を意味する」と室田さんは言う。(イメージ:アフロ)

「態度や仕草などによる意思疎通をメタコミュニケーション(非言語コミュニケーション)と呼びますが、食卓ではこれが多く交わされます」

メタコミュニケーションが増えると、相手の様子をうかがいがちになり、緊張感が漂ってしまう。食卓を張り詰めた空気にしないためには、できるだけお互いに声かけをすることだ。「おいしいね」「今日、帰り道にこんなことがあってね~」といった他愛のない会話を交わすことで、食卓の雰囲気や子どもへの影響は大きく変わるという。

原風景に「モーレツ社員」の父親世代

意識的に夫婦、家族での食事時間を取ろうとしている家庭もある。都内在住の松本洋介さん(仮名、49)と妻の有希さん(42)は結婚10年目。夫はカメラマン、妻はライターと夫婦ともにフリーランスで、1歳の息子と3人暮らしだ。自宅を主な仕事場としているため、平日の夕方の流れはほぼ一定だという。

有希さんが会社勤めの時は、帰宅が深夜になることも。そのときは洋介さんが食事を作って待つ、外食に出るなど、食事の時間を確保する工夫をしていた(撮影:栃久保誠)

18時近くになると、洋介さんは保育園へ子どもの迎えに。同時に有希さんは、仕事を終わらせてキッチンに立つ。まず炊飯器にスイッチを入れ、20分ほどで味噌汁と子どもの分のおかずを作り終えると、ちょうど洋介さんと息子の帰宅時間。そのまま、洋介さんが子どもにご飯を食べさせ、有希さんは引き続きキッチンに向かう。10分ほどかけて夫婦分のメインディッシュを作り終える頃には息子の食事が済むので、イスに座らせたり遊ばせたりしながら、夫婦2人で一緒に食事をとる流れだ。

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