栃久保誠

【PR】週末も家事で休めない妻――夫婦「休み格差」はなくならないのか

10/10(火) 15:24 配信

共働き家庭には、夫と妻の間に「休み格差」があるという。妻が休日に家事や育児をこなす「家庭での労働」に時間を費やす一方、夫は趣味などにあてる自由時間が長いという調査がある。妻だけが休日も家事に追われ、ゆっくり休めない――。そんな「格差」はどうして生まれるのか。探っていくと、男女間の家事に対する認識のズレや社会構造の問題が見えてきた。

妻が夫より5時間長い、休日家事の時間

土曜日の午前中。貴重な休日だというのに、川崎市在住の村川美津さん(仮名、36)は、ため息をつく。視線の先には、夫と保育園に通う2人の子どもが、喜々として公園に出かけていく姿があった。

いまから、まず数日分の洗濯に取り掛からねばならない。土曜日は2人の子どもが保育園から持ち帰った着替えやシーツ、タオル類もあるので、2回は洗濯機を回す必要がある。それから、平日散らかし放題だった部屋に掃除機をかけて、昨晩、力尽きて放置したまま寝てしまった山積みの食器を洗って……。

「負担を少なくするためにランチは外食にしたいのですが、午前中に家事が終わらず、そのままランチタイムに突入することも」(美津さん)(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

休日は、家族に3食用意することも大きな負担だ。外での仕事が休みでも、土日は「家の中での仕事」に、エンドレスで追われる。

「『俺が子どもたちを外に連れ出すからさ』と、夫はなぜか得意気。その間にじっくり家事できるでしょ、ということらしいです。夫は休日に子どもの相手をすることで、自分の役割は果たしていると思っているようですが、正直『ただ遊んでいるだけでは?』と感じることも。平日だって、夫の帰りは終電近いので、まったく戦力にならないのに……」(美津さん)

「調査の結果、妻の家事負担がまだまだ大きいことに驚いた」と鈴木准教授は言う(撮影:中道薫)

家族社会学を研究している東京大学社会科学研究所の鈴木富美子准教授によれば、共働き夫婦の休日には「休み格差」があるという。

「全日型」は夫が平日・休日どちらも家事・育児に関与、「休日型」は休日のみ関与、「無関与型」はまったく関与しない。「総労働時間」は、家事・育児などに費やした時間の合計だ(鈴木富美子「休日における夫の家事・育児への関与は平日の『埋め合わせ』になるのか」『季刊 家計経済研究』第92号をもとに作成)(図版:藤田倫央)

鈴木さんの研究によれば、夫婦の就労の有無にかかわらず、休日の場合、妻は夫よりも平均して5時間ほど多く労働(=家事・育児)に時間を費やしているという。また、夫は妻よりも教養・趣味などにあてる自由な時間が3~4時間多かった。

前出の美津さんは、「平日はトイレ掃除まで手が回らず、休日に繰り越します」と話す(撮影:森カズシゲ)

「家事は、料理や洗濯、掃除などの『待ったなしの家事』と、庭の手入れや切れた電球を替えるなどの『延期できる家事』に分けられます。現在の日本では前者を妻が、後者を夫が担うパターンが多いように思います」(鈴木さん)

「待ったなしの家事」は日々絶え間なく続くが、フルタイム勤務では、平日にその日の分をこなし切ることは難しい。当然、仕事のない休日にしわ寄せがいき、平日の不足を補いながら、休日分の家事も並行して進めなければならなくなる。妻が正社員でフルタイム勤務の場合、家事と仕事を合わせた平日の総労働時間は夫より 1〜2時間長くなっている。

「待ったなしの家事」の一つが掃除。平日はフロアモップなどで簡単に済ませ、休日にきちんと掃除機をかける共働き家庭もあるようだ(撮影:森カズシゲ)

「妻の負担を軽くするには、日々の『待ったなしの家事』への夫の参入が不可欠。休日はもちろん、平日からもっと家事・育児に関わることが必要です。夫の平日の家事・育児への関与が、妻の満足度や幸福度をアップさせるという研究結果もあります」(鈴木さん)

さらに、家庭環境の変化も家事の負担が重くのしかかる原因になっている。

「以前の共働き家庭は、両親と同居していたり、実家のサポートがあったりする場合が多くありました。そのため、妻にとっては、夫からの『大変だね』『ありがとう』などの言葉がけ、いわゆる情緒的サポートが重要でした。でも今は、こうした情緒的サポートだけでなく、夫も家事・育児に参加して手を動かす、実質的なサポートが必要です」(鈴木さん)

「夫が妻と同じ『土俵』に上がり、日常的にどれだけ家事・育児を助け合えるか。それにより、女性の働きやすさや満足度は変わってきます」(鈴木准教授)(イラスト:藤田倫央)

最近は家事・育児を行おうとする男性が増えたものの、「自分はいつでも『降りられる』と思っている人もいる」と鈴木さんは言う。

「妻の家事・育児は毎日の生活に張り付いていて、そこから降りることなどできない。そのような状況を夫が理解し、常に家事を『自分のこと』としてとらえられれば、妻が夫よりも家事を多く負担しているという現状が、変わってくるかもしれません」(鈴木さん)

男女の認識のズレも背景に

NHK放送文化研究所がまとめた「2015年国民生活時間調査報告書」によれば、家事をしている成人男性は1995年以降増加傾向にある。2015年の男性の家事従事の割合は、平日=42%、土曜=53%、日曜=58%と、1995年と比べていずれも10%ほど増えている。とはいえ、同じ期間で女性の家事従事の割合が90%前後で推移しているのと比べると、まだ差は大きい。

夫婦関係コンサルタントの高草木陽光(たかくさぎ・はるみ)さんは、夫婦の家事に対する認識のズレを指摘する。

洗い物は夫が担当するものの、シンクの掃除、その後の食器の片付けは妻任せという家庭も(撮影:森カズシゲ)

「夫は、洗い物をする、洗濯機を回す、保育園の送り迎えをするといった、わかりやすい『枠』で家事をとらえがち。ところが、枠におさまらない家事も多いですよね」(高草木さん)

例えば、トイレットペーパーなど生活に欠かせない消耗品を買いに行く、洗面所のタオルを取り換える、食べ残しの料理を冷蔵庫にしまうといった家事だ。

「町内会の集まりや子どもの学校行事への参加といった、家族全員に関することすべてが『家事』だという認識を夫も持つべき。その上で、すべての家事を夫婦で分担することが必要です」(高草木さん)

夫が担当する家事として多いのが、ゴミ出し、風呂掃除、子どもをお風呂に入れることなど。いずれも妻のサポートがあってこそ成り立つケースは少なくない(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

前出の鈴木さんは、別の視点からも家事について認識し直したほうがいいケースがあると話す。

「夫が担当することの多い家事が『ゴミ出し』ですが、多くの夫は妻に渡されたゴミ袋をゴミ置き場まで運んでいるだけではないでしょうか。その前段階の、今日はゴミの日だと思い出し、部屋中のゴミ箱からゴミを集め、さらにゴミ箱に新しい袋を設置する作業は、妻がやっている場合が多い。家事というのは連続した流れの中で行われていて、『ゴミ出し』はその中の一つにすぎないのですが、妻のサポートがあるため、そうした認識を夫は持ちにくいように思います」(鈴木さん)

家事にまつわる認識のズレを解消することは、家事に従事する時間の差を縮めることにもつながりそうだ。

根強い社会構造の問題

「男性=仕事」「女性=家事」という認識がなかなか変化しないことが問題だと語るのは、「男性学」の第一人者として知られる大正大学心理社会学部の田中俊之准教授。「これは個人の意識の問題ではなく、社会構造の問題」と強調する。

「日本は、結婚、妊娠、出産を経て女性が正社員、フルタイムで働くことが、まだまだ難しい社会なんです」と田中准教授(撮影:小野奈那子)

「そもそも、フルタイムの共働き家庭が一般化しているという認識自体が間違っているんです」(田中准教授)

それを示唆するのが、共働き世帯の一般化の根拠としてよく挙がる、総務省「労働力調査(詳細集計)」だ。1990年代半ばに共働き世帯が専業主婦世帯を上回ったという統計結果だが、実はここでいう「共働き世帯」には、妻がフルタイム正社員の場合だけでなくパートタイマーの場合も含まれている。

1990年代半ば、共働き世帯の数が専業主婦世帯を抜いた。そこから共働き世帯はどんどん増加し続けているように見えるが……(図版:藤田倫央)

「フルタイムの共働きではなく、あくまで『妻が家事を担いながら短時間働く』という、専業主婦世帯の延長線上にある共働きの割合が高くなったのです」(田中准教授)

また、国立社会保障・人口問題研究所が発表した「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によれば、2000年代に入っても、女性の約25%は結婚で、約40%が出産で退職している。

「2010年代前半になると、ようやく出産後に育休を取って職場復帰する人の割合が、2000年代後半と比べて1割ほど増えますが、それでも女性全体の約4割。まだフルタイムの共働き世帯が社会のマジョリティーではない。意識の面でも社会構造の面でも、『男性=仕事』『女性=家事』という夫婦のあり方が解消したわけではありません。いわゆる性別役割分業は、古くて新しい社会問題なんです」(田中准教授)

田中准教授は「意識や社会構造を変えるのは時間がかかる。すぐ効く処方箋として、家事負担が大きいのであれば、乾燥機付き洗濯機や食洗機、ロボット掃除機などの家電に頼ってもいいと思います」と話す(撮影:小野奈那子)

「専業主婦世帯に生まれ、『男は男らしく、女は女らしく』と言われて育った世代の感覚は、なかなか抜けません。男性が家事を分担することに抵抗を示すのはもちろん、女性も『家事をしないなんて私はダメな妻だ』と自分を縛ってしまうことすらあります。家事の分担は、これまでの男女の生き方を根底から変えるほどの、大きな社会変化をもたらす社会問題です。このような認識を持って取り組まなければ、解決できないんです」(田中准教授)

この手の性別役割分業といった話題が、たびたびネットで炎上することもある。それは「社会問題と気づかずに個人の意識の問題だと勘違いし、自分と違う価値観を手当たり次第に攻撃してしまうから」だと田中准教授。個人的な感情を社会構造と関連づけて考えてみることが、家事における男女平等の第一歩になりそうだ。

時間軸で分担する「パラレル家事」を

妻と夫の休み格差をなくすための、具体的な解決策はあるのだろうか。家事シェアを推進するNPO法人tadaima!代表理事の三木智有さんによると、「家事分担は『掃除』『洗濯』など、ジャンルで考えるとうまくいかない」という。

「妻からの発注ではなく、夫も当事者意識を持ってともに家事を遂行すべき」と三木さん(撮影:藤原葉子)

「家事は、いつするかのタイミングがとても大切。時間軸ですべき家事をリストアップし、分担するのがおすすめです。まずは、夫の在宅が多い朝の家事から始めてみましょう。6時に起きて8時に家を出るのであれば、その2時間ですべき家事をリストアップし、2人で分担して効率よく進めるのです。コツは、夫が朝ごはんを作る間に、妻が子どものおむつ替えと着替えを済ませるなど、夫婦で同時並行して家事を行う『パラレル家事』をすることです。妻が料理をしている間に夫がスマホをいじるなど、どちらかの不満やイライラが生じるのを防ぐことにもなります」(三木さん)

夫婦でうまくパラレル家事に取り組むために、三木さんは次の3つのポイントを挙げる。

(1)家事のタスクのリストアップは夫婦で一緒に取り組むと、夫にも当事者意識が生まれやすい。妻の作ったリストを分担すると、夫は「押しつけられた」と感じてしまう。
(2)できるだけ家事を細かく可視化して、場当たり的な依頼や指示を減らす。前日などに「明日は○○をしよう」と決めておくのも効果的。
(3)子どもがいる場合、公園で遊ぶついでに買い出しをするなど、子どもと過ごす時間を戦略的に活用することが鍵になる。

今は「男性=仕事」「女性=家事」から、夫婦で仕事も家事も分かち合うスタイルへの過渡期でもある。「休み格差」問題の解決に必要なのは、家事が夫婦で助け合いながら取り組むべき「家庭内業務」だと意識を変えること。そして、何をもって家事なのかという男女の認識のズレや家事シェアの方法をさまざまな角度から見直すことで、少しずつ格差は縮まっていくのかもしれない。

取材・文:野々山幸(TAPE)
編集・制作:ノオト
[写真]
撮影:栃久保誠 中道薫 森カズシゲ 小野奈那子 藤原葉子
イメージ:アフロ
[図版]
藤田倫央


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