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塩田亮吾

「連合」は誰の味方なのか 神津里季生会長に聞く

2016/12/26(月) 09:22 配信

オリジナル

日本最大の労働組合「連合」が揺れている。「同一労働同一賃金」「長時間労働の是正」は進まず、非正規雇用はこの四半世紀で全労働者の2割から4割へと激増。労働問題は山積みだ。同時に、政治との関わりでも大きな問題を抱える。支持してきた民進党が、連合が嫌う共産党と選挙協力を続けてきたからだ。いったい連合は何を考えているのか。就任から1年、会長の神津里季生氏に尋ねた。(ジャーナリスト・岩崎大輔、森健/Yahoo!ニュース編集部)

労働組合の存在感は低下していないか

──1990年に808万人だった「連合」の組合員数は、2015年に682万人まで減少していますね。

組合員が減ったのは、いくつか理由があります。1つは産業構造の変化。労働組合は昔からサービス業よりも製造業のほうが多いのですが、その製造業が産業構造の変化で減ってきた。次に、労働者全体ではこの20年で正規労働者が減ったのも要因です。その分、非正規労働者が増えた。ただ、連合も特にこの10年ほど、非正規労働者の組合員の加盟に重点を置いて取り組んでおり、その結果、連合の中で非正規労働者の組合員は約15%まで占めるようになりました。2007年には「非正規労働センター」を設置し、パートタイムなど非正規労働者の抱える課題を解決する取り組みを今まで以上に推進しています。

以前は連合本部自体が組合員を増やす活動を直接的にあまりしてこなかったのですが、今はかなり力を入れてきています。

組合員数の推移を示す神津会長(撮影: 塩田亮吾)

──120万人も減ったところに、労働組合の存在感の低下を感じます。

最近は増加傾向に反転しています。今年4月から9月までの半年間で13万5000人。この短期間でこれだけ増えたのは、連合が始まって以来のことでね。すごく大きな変化だと思っています。

連合=日本労働組合総連合会は、労働者側の権利を主張する日本最大の労働組合の組織である。おもに大企業の労組が加盟しており、賃上げや労働環境の改善などで労働者を代表して経営者(使用者)側と交渉するのが大きな役割だ。毎年1~2月、連合は労働者の意思を代表して、経営者団体の日本経済団体連合会(経団連)と賃上げについて話し合い、加盟労組が各企業と賃上げ交渉をする。春季労使交渉(春闘)という毎年恒例の行事だ。

連合が発足したのは1989(平成元)年。総評(日本労働組合総評議会)、同盟(全日本労働総同盟)、中立労連(中立労働組合連絡会議)、新産別(全国産業別労働組合連合)の4労働組合が、「労働戦線統一」として集結するなど1980年代初めからの動きを経て結成した。組織基盤には、繊維、鉄鋼、自動車、電機電子などの単位産業別労働組合(産別)、地方自治体職員の労組「全日本自治団体労働組合(自治労)」などがある。

──組合員が半年で13万5000人増えたのはなぜですか。

それぞれの組織の努力の賜物です。連合本部や地方連合会(都道府県単位の連合の地方支部)の取り組みとして有効だったのは、“労働相談ダイヤル”です。この電話にパワハラ、セクハラ、マタハラといった相談がいっぱい来るわけです。昨年は年間1万6000件。たとえば不当解雇と思われるケースなら、地方連合会が「これは不当解雇だから、ちゃんと権利を主張すべきです」と助言をし、一緒に問題解決を図りましょうと働きかけた。そうしたサポートをする中で組合員が増えています。

──ということは、それだけ労働問題も増えている。

そういうことです。

神津里季生(こうづ・りきお)1956年、東京都生まれ。東京大学在学中は野球部マネジャー。卒業後、新日本製鐵株式会社入社。専従役員になって以降、在タイ日本大使館一等書記官、新日鐵労連会長、基幹労連中央執行委員長などを経て、2015年10月より現職(撮影: 塩田亮吾)

神津里季生氏は、鉄鋼業の出身だ。東京大学卒業後、1979年新日本製鐵(現・新日鐵住金)入社。1984年から組合の専従(組合の業務だけを行う)となった。2013年に連合事務局長(専従)、そして2015年10月から同会長を務める。

神津会長の方針はきわめて現実的だ。就任後、安倍政権が掲げたGDP(国内総生産)600兆円の目標について、「絵に描いた餅」と批判するとともに、安倍政権が期待した春闘での3~5%という高めの賃上げ要求も「非現実的」とし、2%のベースアップ(通称ベア。基本給の賃上げ)要求という方針を決定した。政府が高い賃上げを推奨しているのに、労組の代表が低く要求するというねじれた事態。この神津会長の決定に対し、麻生太郎財務相は「3~4%の賃上げを要求するのが当然なのに」と神津体制を批判した。

だが、神津体制の方針は賃上げというときに、ボーナスなどの一時金で対応することは反対だった。通常、ベースアップというときに取りざたされるのは、ある産業の中心企業である。自動車であればトヨタやホンダ、日産に目が向けられる。だが、アベノミクスでそうした中心企業が賃上げをしても、子会社や中小企業、そして非正規雇用の労働者の賃金はあまり増えていなかった。そこで神津執行部は、それぞれの産業のピラミッドにおける下位組織までを対象とした「底上げ(賃上げ)」を図っていった。

「働き方改革」に実現性はあるか

──神津会長は官邸の「働き方改革実現会議」のメンバーで、同会議では「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金の実現」を訴えています。この「実現会議」、実際、どれほど実現性があるのでしょうか。

僕らとしては、「同一労働同一賃金」や「長時間労働の是正」なんて、ずっと前から言っている。政権には「風呂敷を広げたからには、お題目で終わらせることはないでしょうね」と念を押しています。

──長時間労働の問題は、電通の若い女子社員の過労自死の件もあり、社会の関心も高い。連合はどう考えていますか。

連合が主張しているのは「量的上限規制」と「勤務間インターバル規制」の2つの法制化です。「量的上限規制」については、EU(欧州連合)では1週間で48時間を上限としていますが、日本でもその時間以上労働させない上限の労働時間をつくるということ。

「勤務間インターバル規制」もEUで導入されているもので、必要な睡眠時間や自分の時間が取れるよう、仕事が終わって、翌日の仕事が始まるまで「11時間は空けなさい」という規制です。一部の労組では春闘で取り上げ、数年前からKDDI、三菱重工などで導入しています。

ただ、現状ではまったく十分ではない。たとえば、僕の出身の鉄鋼業の場合、つねに三交代勤務で回している。製鉄の高炉は熱した鉄を扱うから、一度稼働させたら止めることができない。誰かが「連休を取ります」となれば、別の誰かが連続で仕事をしないと現場が回っていかない。そうした関係から、勤務間インターバル規制には抵抗感がある。けれど、そうした産業や業種の事情だけを認めていたら、いつまで経っても法制化できない。EUにも鉄鋼業はあるわけで、「なんで日本でできないの?」と。

関係閣僚と有識者からなる「働き方改革実現会議」の初会合は2016年9月26日に開かれた(写真: 読売新聞/アフロ)

中小は「大手追随、大手準拠」を脱却できるか

──賃上げも連合の大きな役割です。ところが、安倍政権になってから、政権のほうが賃上げを訴えかけています。官製春闘と呼ばれていますが、これは本来連合がすべきことではないですか。

それは40年前の裏返しなんですよ。1973~1974年、オイルショックの際、超インフレが起きた。当時、福田赳夫大蔵大臣は労働界のリーダーに頼んだんです。このままインフレで春闘に持ち込んで前年比33%増などというレベルがさらにヒートアップしていったら、経済がパンクしてしまう、だからベア要求を抑制するよう求めた。そこで相場形成を担っていた金属労組がそれを受け入れて、超インフレが収まったんです。

現在は、安倍政権がデフレ脱却を経営側に頼んでいる。その球を返すのは経営側の話。それをもって官製春闘と呼ばれる。しかし、この呼称は本来あるべき労使間の交渉という観点からすれば適切ではない。実際、経団連は2016年春闘を前に一時金(ボーナス)を含めた年収ベースで考えようと言い出した。それで僕らは「それはおかしい。上げるなら月例賃金でしょう」と押し返したんです。一時金で上げるような扱いでは、収益次第で賃金が上下させられてしまう。それは労働者のためにならないからです。

──神津体制では、中小企業や非正規雇用の処遇改善を重視すると報じられていました。具体的にはどういうことですか。

今年の春闘で強く言ってきたのは“適正配分”です。上流から下流までのサプライチェーン(製造業での原料調達から、製造、物流、卸、小売までの流れ)の中で、付加価値や利益をちゃんと配分しましょうということです。

──結果、どうなったんですか。

親会社と同額か上回る額の回答(労使間協議で賃上げに妥結した額)を引き出した関連会社や子会社が出てきました。

日本の悪しき風習で、子会社には“大手追随、大手準拠”みたいなものがある。だから、あえてそこからの脱却を方針に入れた。要は「中小(グループ会社)もちゃんと要求しよう」と。ここ最近の中で賃金が上がるようになって2017年で4年目ですが、大手と中小の賃金格差を圧縮したのは今年が初めてです。物価上昇がゼロに近いのにベアが実現したのも初めてです。

──そもそも、中小の賃上げを意識しているのはなぜですか。

デフレがずっと続いて20年。消費をあげようにも、中小や子会社の賃上げは大手と乖離するばかりだからです。そもそも中小には組合自体がないところがほとんどで、賃上げ運動ができない。全雇用労働者で労組に所属しているのは17.3%ですが、従業員100人未満の企業となると、わずか0.9%しか労組に所属できていない。

──労組がないも同然ですね。

そういう中小の社員だと「デフレで物価も上がってないんだから、今20万円だけど、来年も20万円で頑張って」と言われてしまう。でも、本来、ある程度の定期昇給というのがあるべきです。定期昇給がないのは賃下げと同じこと。こうした格差は放っておくと、どんどん拡大する。

──そういう場合、個人加盟できる労組もありますよね。

たしかにありますが、加盟しても労使関係の協議まですぐには持ち込める力がないところがほとんどです。だから、僕ら「連合」がもっとやらなくちゃいけない。そこで今年になって意識的に、各地の中小企業の経営者と直接、話しています。みなさん「正直、私たちも賃金を上げたい」と言うが、同時に「だが、それを妨げる問題もある」とも言う。その問題の一つは大手とグループ会社の関係です。だから連合も政策を考え、ともに課題を解決していきましょうと。実際に、そうした中小の会社では、連合の助言のもと、組合を新たにつくるに至ったところもあります。

──中小の経営者の立場として見ると、連合に労組までつくってもらうというのは、やや不思議に感じます。

でも、中小に組合がないとすれば、僕らが中小の社員に代わって賃金のあるべき姿を見せていかないといけないのかなと思います。

中小企業の経営者には、中小企業家同友会全国協議会、全国中小企業団体中央会などを通じた働きかけもしているという(撮影: 塩田亮吾)

どの政党をどう支援するか

課題山積みの労働問題とは別に、連合には頭の痛い問題がある。政治との関わりだ。

連合の前身団体は社会党(当時)や民社党(当時)を支持していた。その政治的な源流から連合も、発足以来、政権与党・自民党と対抗する勢力を支持する活動を行ってきた。とりわけ、1996年に民主党(当時)が発足してからは、同党を支援。2009年の政権交代では、支援団体として大きな役目を果たした。

だが、2016年春から連合は難しい立場に置かれている。夏の参議院選挙を前に、民進党が共産党と統一候補を立てる“選挙協力”に動いたためだ。連合はその前身団体時代も含め、共産党に強い抵抗感を示し、相容れない立場をとってきた。

──去る10月末、神津会長は自民党の二階俊博幹事長と会食の機会をもちました。それが報道されると、「連合は自民党に軸足を移しているのか」と一部から批判も出ています。

いや、そんな大げさな話じゃありません。僕らは働く者の政策を、各政党、与党でも野党でも説明してきています。共産党は除きますが。ところが自民党とは、民主党が政権を取った2009年から、ボタンの掛け違いもあって疎遠になってしまった。僕としては、自民党との関係を元に戻したかった。それで1カ月半ほど前に、旧知の森英介さん(自民・元法相)に頼んで、二階さんと話をさせてもらう場をつくってもらったんです。

──連合は長く、民主党の支持基盤として機能してきました。しかし、共産党との“野党共闘”、選挙協力以降は違ってきている、という見方があります。

いや、今も足並みは揃っていますよ。少なくとも、民進党と連合がもっている政策の距離感は圧倒的に近いです。

共産党の志位和夫委員長は2016年の参議院選挙で、野党共闘に積極的な姿勢を見せた(写真: アフロ)

──今年7月の参議院選挙では民進党と共産党が一人区の32選挙区で協力しました。共産党がほぼすべての一人区で候補を立てず、そこでの野党票が民進党へ流れた結果、一人区は3年前の参院選での2勝29敗から11勝21敗と民進・共産は大幅に当選数を増やしました。しかし、連合は、こうした民進党と共産党との選挙協力、野党共闘に「(共産党は)理念が異なる」と否定的なコメントを寄せました。なぜですか?

小選挙区でそれぞれ候補者が出れば票が割れる。それが野党の候補に不利なことは間違いない。だから、候補を一本化して政治の世界で成り立つのなら、それはどうぞやってくださいと言うしかない。問題は、僕ら連合がその候補と政策協定が結べるかです。政策が合えば推薦もするし、応援もする。ただ、選挙協力の現場に出てくる市民団体のみなさんは、僕らとやっていける人なのかどうか。実は中身は純粋な市民団体ではなく、地域の共産党員の方なのか……。地域によって、全然違いますからね。

──やはり共産党とは手を結べない。

そこは一線を画します。共産党は連合に対して、歴史的に攻撃してきたとか、あるいは強い影響を与えようとしてきた存在ですから。

連合結成の時も「共産党を支持したい」と離れていった人たちがいる。そうした人たちが「統一戦線促進労働組合懇談会(統一労組懇)」という(共産党系の)組織に合流してできたのが「全国労働組合総連合(全労連)」。僕ら連合の路線とまったく違うのです。

だから、選挙の現場で一生懸命やっている人からすると、志位(和夫共産党委員長)さんと僕ら応援する候補者が握手するなんて耐えられない。選挙事務所で共産党の人と一緒にやることも耐えられない。

2016年の参議院選挙で民進党の街頭演説に加わった神津会長(写真: 田村翔/アフロ)

──次の衆議院選挙も民進党が「野党共闘でいきます」としたらどうしますか。

僕はね、“共闘”という言葉に違和感をもっている。“共闘”というのは文字通り政策も合わせていくことでしょう。しかし、共産党と同じ政策なんてできるのか。

消費税とか社会保障、さらに言えば、天皇制や自衛隊への考え方。国の在り方に関わる根本がまったく違うでしょう。なのに、形だけ協定を結んで、お互いに推薦し合うのは欺瞞だと思っている。それが“共闘”なんですか、と。

──しかし、野党が協力しなければ“自民一強”を崩せない現実もあります。

実を言えば、政権交代となった2009年夏の総選挙、当時民主党代表代行だった小沢一郎さんは共産党の志位さんと水面下で話をし、100人以上の共産党の候補が立候補をとりやめたのです。

後になってそのことを聞き、小沢さんが水面下でとりまとめたその技術はすごいと思いました。つまり、放っておいたら与党の強い力に負けてしまう。何の話し合いもしないで候補が乱立するのはよくない。ですから、今4野党で話し合いをしている“選挙協力”を否定はしません。しかし、全面的な“共闘”は違う。

「原発再稼働もありうべし」の意味は

──連合は政治のどこまで関与するのですか。

僕らは労働組合ですから、政治に対しては、あくまでも応援団です。民進党がもっと大きく強くなり、世間にアピールし、ファンを増やしてくれ、という立場でしかない。政治の世界の“共闘”“協力”に対してどうこう言うことではなく、応援団としてどう考えるかということです。

日本最大の労働組合である「連合」は、前身団体時代から連なる労働運動の歴史を背負ってもいる(撮影: 塩田亮吾)

──では、たとえば連合は原発に対してどういう姿勢ですか。連合は各地に電力労組を抱え、その雇用のために原発支持ではないか、と見られています。実際、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が大きな争点となった10月の新潟県知事選では、もともと民進党は米山隆一氏(現知事)を立てようとしていましたが、米山氏が原発再稼働反対を掲げたことで電力労組をもつ連合新潟が反発、民進党は自主投票に踏み切ったと報道されました。つまり、新潟県知事選では民進党と意見が一致しなかった。連合としては、やはり原発再稼働ありきなんですか。

その新潟県知事選について言うと、当時の報道が事実に反しているんです。米山さんは次期衆院選の候補で、連合新潟は米山さんと政策協定もあって応援することになっていた。また、新潟県知事選では、当初は泉田裕彦前知事と自民が推す森民夫という構図だと思っていた。

ところが、泉田氏が選挙戦から降りた。そこで連合新潟は、米山さんを含めた独自候補の擁立を民進党新潟県連に働きかけていましたが、県連は独自候補の擁立断念を連合新潟に伝えてきました。その県連側の理由はわかりません。県連の中で意思統一ができていなかったのでしょう。そこで連合新潟は長岡市長時代に推薦していた森民夫さんを、“推薦”よりも低い“支持”と表明した。その数日後、米山さんは他の野党3党の支援を受けて出馬を表明され、当選されたという経緯です。つまり、エネルギー政策=原発支持だから森支持を決めた、というわけではないんです。

原発については、福島の原発事故のあと、2012年9月に連合として考え方を一本にまとめました。

まず将来的、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会を目指していく。エネルギー政策では、生活者の視点を第一とする。その考え方の下に、すべての産別が連合としてまとまり、原発への依存度を下げていく。

一方で、現実に即して「安全性が国の責任の下、確認され、地元の同意が得られたものは再稼働もありうべし」ということ。

──現実路線と映りますが、要するに、原発支持ではある。

往々にして、メディアはそこだけ切り取るけど、原発ありきではないんです。実際、休止中の原発だって、中には燃料棒を抱えているわけで、リスクは変わりません。そして、今すぐ廃炉にはできない現実がある。そういう現実に立脚してさまざまな意味でのリスク管理をするのが、一番すべきことでしょう。

将来的には原子力エネルギーに依存しない社会を目指しつつ、国家財政や経済面でもちゃんと国民生活を成り立たせる。単純な二項対立ではなく、現実的に考えるしかない。

民進党の蓮舫代表、野田佳彦幹事長(写真: 読売新聞/アフロ)

──今の蓮舫代表、野田佳彦幹事長体制はどういう評価ですか。

いいんじゃないですか。素晴らしいと思っていますよ。

──ほんとうですか?

ほんとうに。蓮舫さんはやっぱりアピール力はあるから。台湾の二重国籍問題で出足からつまずいたけど、政治の世界では華がなきゃダメだから。

政治の世界は依然として男性が幅を利かせている。女性が本当に活躍しないと。政治の世界、経済の世界で女性が埋もれたままでいると、この国は沈没すると思います。蓮舫さんはその象徴だから本当に頑張ってほしい。そんな中で幹事長を引き受けた野田さんは火中の栗を拾うようなもの。2012年の「社会保障・税一体改革」で民主・自民・公明の「三党合意」を成した首相としての実績があり、いまさら幹事長という役職を引き受けてもプラスになることはないのに、よく引き受けられたなと。身を捨てて頑張っている。

──連合に加盟している組合員は大企業の正社員が中心ですが、全労働者5385万人のうちの37.6%にあたる2025万人が非正規労働者になった現在、労働者の分断が起きていませんか。

連合はすべての労働者の思いを代弁しなきゃいけない。冒頭にもお話ししたように、非正規の組合員の増加がジワっと進んでいます。非正規の連合組合員は100万人近くになった。ただ、満足しているわけではない。もっと理解を広めていかねばいけないと思っています。

連合の本部は、東京都千代田区の連合会館内にある。連合発足前は、「総評会館」だった場所(撮影: 塩田亮吾)


岩崎大輔(いわさき・だいすけ)
1973年静岡県生まれ。ジャーナリスト、講談社「FRIDAY」記者。主な著書に『ダークサイド・オブ・小泉純一郎「異形の宰相」の蹉跌』、『団塊ジュニアのカリスマに「ジャンプ」で好きな漫画を聞きに行ってみた』など。

森健(もり・けん)
1968年東京都生まれ。ジャーナリスト。2012年、『つなみ――被災地の子どもたちの作文集』で大宅壮一ノンフィクション賞、2015年『小倉昌男 祈りと経営』で小学館ノンフィクション大賞を受賞。
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[写真]
撮影:塩田亮吾
写真監修:リマインダーズ・プロジェクト
後藤勝