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Ueno Yoshinori

結婚よりも愛 私たちのカタチ

2015/10/14(水) 16:54 配信

オリジナル

病めるときも、健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも......その命ある限り、真心を尽くすことを、誓いますか?

結婚という「一生の契約」は最上の幸せだとされ、無条件に祝福される。
では、従来の「結婚」の枠組みに入らない愛は、どこにいくのだろう。
2015年10月10日発売の週刊誌AERA(10月19日号)では夫婦関係の特集を組み、「常識外」な夫婦のあり方に迫った。

今回は、自分たちなりの愛の行方を探り続けている3組に、それぞれの想いを聞いた。
(Yahoo!ニュース・AERA編集部)

愛する人は1人じゃない【自由婚】

1対1の関係だけが、愛なの?

社会人類学を研究する深海菊絵さんの著書『ポリアモリー 複数の愛を生きる』によると、同時に複数のパートナーと合意のうえで関係を築くことを「ポリアモリー」という。パートナー以外の人と隠れて関係を持つ「浮気」とは異なる、オープンな関係なのだという。

日本にも少数ながら「ポリアモリスト」がいる。9月、ポリアモリーに関心がある人たちの交流会「ポリーラウンジ」が東京都内で開かれ、約30人が集まった。主催者のひとり、文月煉(ふづき・れん)さん(31、ハンドルネーム)は、妻のアスミさん(31)と恋人のケイちゃん(22)の両方を愛している。他にも好きな女性が複数いる。3人の関係性は、ぜひ動画で見てほしい。

相手も自分も縛らない

煉さんは大学生のとき、恋人ができた途端、他の女性と遊べなくなることを苦痛に感じた。「こんなにつらいなら、一人と付き合わなくてもいい」。互いに縛られない関係を望んだのが、アスミさんだった。

アスミさんも「別れてから違う恋をすることもあるのだから、同時に複数の恋が起きてもいい」と考えている。「浮気はOK」「ただし嘘はつかない」「一生の愛は誓わない」という合意のもと、交際を始めた。相手の心も、未来の自分の心も縛らない。

2年前に入籍したのは、親を安心させたいという思いがあったからだ。しかし関係性は結婚の枠にとらわれず、どんどん広がる。「新しく好きな人ができたんだ」「よかったね」。将来は、煉さんとアスミさん、煉さんの恋人のケイちゃんとその恋人も含めた、大きな「家族」をつくるのが夢だ。

人生を共につくるパートナー【同性婚】

愛していても結婚できないの?

現在の法律では同性同士が結婚することはできない。そのため事実婚を選択する同性カップルは、住宅の賃貸契約や病院の面会時などに家族だと認められないことがある。東京都渋谷区や世田谷区は、条例制定や公的書類の発行によってこうした社会的不利益を緩和する取り組みを始めたが、法律上で同性同士の結婚が認められたわけではない。

国際交流NGO「ピースボート」に勤務する室井舞花さん(28)の、中学2年のときの初恋の相手は同級生の女の子だった。保健体育の教科書の「思春期になると、誰もが異性への関心が高まるようになります」という記述に悩み、恋愛を避けるようにして思春期を過ごした。

2006年、同じピースボートに勤める恩田夏絵さん(29)と出会った。夏絵さんも小学2年のときから学校に適応できず不登校になり、自宅にひきこもって生きづらさを抱えていた。仕事やプライベートの悩みを相談するうち、2人は惹かれ合った。夏絵さんにとって、同性の恋人は舞花さんが初めてだった。

結婚式は「セーフティーネット」

「共に生きませんか」
そう伝えたのは夏絵さん。
「ふと気づいたら、隣にも自己否定して人生に絶望している人がいた。お互いに弱い部分もさらけ出せる。この人と一緒なら明るい未来が見えるはずだと直感しました」

2013年、東京都庁で約350人が見守る中、結婚式を挙げた。法律上の結婚ができないため、2人の関係性を周りに知ってもらうことで「セーフティーネット」を築こうと考えた。同性カップルが生きやすい社会になってほしい、と訴える2人。その声を、ぜひ動画で聞いてほしい。

私がしたい結婚をする【ぼっち婚】

ドレスだけの結婚じゃダメですか?

恋愛という理想と、結婚という現実がある。福山雅治の結婚に歯噛みするくらいなら、片想いでも「結婚」しちゃえばいいじゃない。

「人生最高の瞬間でした」

そう言ってウェディングドレス姿の写真を見せてくれたのは、今年1月に「結婚式」を挙げたヤスコさん(50)。しかし写真に新郎は写っておらず、花嫁ひとりぼっち。ソロウェディング、通称「ぼっち婚」だ。

「今日のプリンセスです」。スタッフにそう紹介され、「結婚式」は始まる。主催するのは、京都市の旅行代理店・チェルカトラベル。1泊2日のプランは、有名ブランドでドレスを選び、フラワーデザイナーとブーケを作ってホテルで1泊。プロのヘアメイクとカメラマンによる写真撮影をして、後日アルバムが郵送される。料金は平日32万円。

ヤスコさんの「ぼっち婚」のテーマは、30年間にわたって献身的な愛を捧げてきた、ミュージシャンの「カドさま」こと 角松敏生。松の屏風を背に角松の置物を置き、手にはお気に入りのツアーパンフレット。写真を見た母と兄弟が「角松さんと結婚したんだね」と微笑んだくらいのこの意気込み、ぜひ動画で見てほしい。

結婚しないための「結婚」

ヤスコさんには恋人がいるが、今のところ結婚は考えていない。カドさまの追っかけと趣味の着物で忙しいし、緊張感のある恋愛をずっと続けていたいから。「ぼっち婚」をやりたいと相談したら、彼は「楽しんでおいで」と送り出してくれた。

「ソロウェディング後は、前よりもっと、このまま独身でいいと思うようになりました。憧れていたドレスを着たことで吹っ切れたのかもしれません」

各地の写真館や結婚式場でも類似のサービスが急増している。永続する結婚生活は嫌でも、結婚の象徴であるウェディングドレスだけは着たい。婚活に疲弊し、結婚願望を断ち切るきっかけがほしい。恋愛と結婚、理想と現実のはざまで揺れる女性たちの心の拠り所が、「ぼっち婚」なのだ。(文中カタカナ名は仮名)


Yahoo!ニュースと週刊誌AERA(朝日新聞出版)は共同企画「みんなのリアル~1億人総検証」をはじめました。身近な問題や社会現象について、AERA編集部の取材による記事に動画を組み合わせてわかりやすく伝え、読者のみなさんとともに考えます。今回のテーマは「結婚は愛かコスパか」。5回の連載の中では、読者のみなさんからのご意見も紹介していきます。Facebookやメールでコメントをお寄せくださった方には、AERA編集部から取材のお願いでご連絡させていただく場合があります。

メールはこちらまで。
aera_yahoo@asahi.com



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映像監修:古田清悟