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笹島康仁

【写真ルポ】海の向こうは北朝鮮 ――砲撃された韓国・延坪島で

2018/10/05(金) 06:38 配信

オリジナル

2010年に北朝鮮の砲撃を受けた韓国の「延坪島(ヨンピョンド)」は、韓国北西部に浮かび、北朝鮮との境界線まで最短で1.5キロメートルしかない。南北対立の最前線として、あるいは北朝鮮の「脅威」を実感する場所として、島は知られてきた。しかし、島の日常には緊張と同時に、平穏な暮らしもある。『海の向こうは北朝鮮――砲撃された韓国・延坪島の“日常と平和”』では伝えきれなかった島の様子を「写真ルポ」で紹介する。(文・写真:笹島康仁/Yahoo!ニュース 特集編集部)

高台から見下ろした島の中心地。住宅は南側に集中している

北朝鮮の見える島

北西部の岬に造られた監視所(手前)。向こうに見える島は北朝鮮

カメラの望遠レンズがとらえた北朝鮮の本土。海沿いに町も見える

北朝鮮との境界線近くには中国の漁船も現れる

砲撃と警戒

2010年11月23日、延坪島は北朝鮮から砲撃を受けた。砲弾約170発のうち半分ほどが島に着弾し、民間人2人を含む4人が殺された。民間人の死者が出たのは、1953年の朝鮮戦争の休戦以来初めてだった。

島を案内してくれたキム・ヨンシクさん。砲撃で壊された民家が保存されていた

島北部に残る砲弾の着弾痕。この場所で兵士1人が亡くなった

警備艇の手入れを行う韓国軍の兵士たち

砂浜にはいくつものトーチカがある

住民用シェルター、島に8カ所

今年4月以降の南北首脳会談などを経て、両国の関係は改善しつつある。2010年の砲撃後に造られた8カ所の避難所(シェルター)も、今では地域の集まりで使われるだけになってきたという。

シェルターの入り口。大きく重い扉がある

シェルター内には延坪島の景色を撮った写真が飾られていた

延坪島で警戒されているのは核兵器よりも化学兵器だという。シェルターにはガスマスクも常備されている

警報が鳴ると、島民は一斉にシェルターへ駆け込む。このシェルターの利用記録をのぞくと、ある日の警報では、225人がここに入った記録が残っていた

シェルターのすぐ横を登校する小学生

北朝鮮に故郷を持つ「失郷民」たち

延坪島では、住民のほとんどが北側から避難してきた人やその子孫である。だから、故郷に近く、実際に目で見ることができるこの島を離れられないという。彼らは「失郷民(シリャンミン)」と呼ばれている。

島の老人会長、パク・ラファンさん(77)。南北関係の「融和」に期待しているが、北朝鮮は信用できないという

敬老館には地域のお年寄りが集まっていた。「失郷民」も多い

朝鮮戦争の戦禍を逃れ、14歳で北から避難してきた女性。「島ではドアに鍵を掛けなくても安心して過ごせる。知り合いも多い。子どもたちは島を離れて(自分たちの所へ)おいでと言うけど、ここにいることが安心です」

学校の子どもたち

島の人口は約2千人。普段はのどかで、人々はのんびり暮らしている。島唯一の学校には、園児から高校生まで164人が通っている。

先生の伴奏に合わせて歌を歌う園児たち

島の生徒には特別な大学入学枠が用意されているという。そのため、高校進学時に島を離れる子どもはほとんどいない。大学進学率は約9割

小学6年生。日本の忍者アニメの影響だろうか、「俺は忍びだ!」と日本語で言った

港で、街角で、海岸で

仁川港と延坪島を結ぶ船は1日1往復のみだ。島民や観光客だけでなく、兵士たちに会いに来る恋人や家族も毎日のように乗っている。船着場には、再会を喜び合う人も、別れを惜しみ合う人もいた。

島の人口は約2000人で、島民には漁業関係の人が多い。街を歩くと、のんびりした風景が広がっている。

韓国には徴兵制がある。延坪島などに向かう船が出る仁川港の待合室にも、多くの兵士たちがいた

大延坪島の港で下船する人々。砲撃事件後に減った観光客が戻りつつあるという

日陰を求め、路地で休む島民。壁の新しい家はほとんど、2010年の砲撃で被害を受け、改築された家だという

港近くの飲食店。父親らしき人と一緒に昼食を取る兵士たちがいた

船の待合室に集まった兵士たち。ほとんどがスマートフォンを見つめていた

夜の島内。「カフェ」が営業中だった

早朝の延坪島。台風が近づいていたが、海はとても静かだった

港で再会を喜んでいたカップル。男性は兵士

海水浴場の入り口にあった警告。主に次のように書かれている。 「集中豪⾬で北からの流失地雷が流れ着くことがあります。発⾒したら触らずに、軍まで通報してください。 弱い衝撃でも爆発することがあります。絶対に触わらないこと」

この記事と同時に、現地の取材記事と動画『海の向こうは北朝鮮――砲撃された韓国・延坪島の“日常と平和”』も公開しています。

[写真]撮影:笹島康仁
[取材協力]李洪千:東京都市大学メディア情報学部准教授


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