なぜレアルはCBの“緊急補強”に動かないのか?リュディガー、チュアメニ…アンチェロッティの算段。
分析の日々を終えて、ひとつの決断が下される。
欧州では、1月の移籍市場が開幕している。今冬、注目されているのがレアル・マドリーだ。守備陣に補強の必要性が生じているためである。
■アラバの負傷と主力の離脱
マドリーは、昨年12月17日のビジャレアル戦でダビド・アラバが負傷。左ひざの前十字靭帯断裂で、長期離脱を余儀なくされた。
マドリーはシーズン序盤、GKティボ・クルトワ、エデル・ミリトンがアラバと同様にひざの負傷で長期離脱を強いられている。デシモ・クアルタ(クラブ史上14度目のCL制覇)を達成したチームの守備の要が、次々に不在となった。
■マーケットの状況を注視
そのような状況で、マドリーの補強候補に、複数の選手が挙げられていた。
ゴンサロ・イナシオ(スポルティング・リスボン)、アントニオ・シウバ(ベンフィカ)、ジョルジョ・スカルヴィーニ(アタランタ)…。ポルトガルとイタリアで活躍する新鋭が、リストアップされていた。
彼らに共通するのはその「若さ」だ。イナシオ(22歳)、A・シウバ(20歳)、スカルヴィーニ(20歳)と、まだあどけなさが残る顔で、欧州の高いレベルでプレーしている。
とはいえ、彼らの獲得は簡単ではない。例えばA・シウバの契約解除金は1億ユーロ(約150億円)、イナシオの契約解除金は6000万ユーロ(約90億円)に上る。安価で確保できるヤングプレーヤーではない。
■復帰組の可能性
一方、マドリーは「復帰」の可能性を模索していた。ラファエル・ヴァラン(マンチェスター・ユナイテッド)、ラファ・マリン(アラベス)への関心が伝えられていた。
マドリーは2021年夏に移籍金4000万ユーロ(約60億円)でヴァランをユナイテッドに売却した。カルロ・アンチェロッティ監督の下、マドリーで69試合に出場したヴァランだが、ユナイテッド移籍以降は思うような活躍を見せられていない。
マリンは今夏、アラベスにレンタル移籍を果たしている。クリスマス休暇中断前の時点、リーガエスパニョーラで16試合に出場しており、着実に経験を積んでいる。
だがマリンに関しては1年レンタルでアラベスに移籍しており、契約解除条項等は付けられていない。ヴァランについては、今季終了時にユナイテッドとの契約が満了を迎えるが、マドリーとしては契約期間が残り半年の段階で移籍金を支払獲得する必要性を感じていない。
■センターバックへのコンバート
他方で、アンチェロッティ監督は選手のコンバートを考えている。その筆頭はオウレリアン・チュアメニだ。
今季の前半戦のリーガにおいて、アンチェロッティ監督はオサスナ戦でチュアメニをCB起用している。試合後、「チュアメニは怒るかもしれないが、彼はセンターバックとしても素晴らしい。彼ほどビルドアップの能力が高い選手は少ない。戦術的にも良いプレーができる。彼がボランチとセンターバックでプレーできるのは幸運だ」とイタリア人指揮官はチュアメニを称賛していた。
アンチェロッティ監督は今季、【4−3−3】から【4−4−2】へとシステムチェンジを行っている。ジュード・ベリンガムをトップ下に据え、彼の得点能力を開花させた。すでに、布陣変更と戦術のアップデートに成功している。
「このタイミングで、我々はセンターバックの獲得を考えていない。ケガ人が2人いる状況だが、我々は(起用可能な)2人のセンターバックを信頼している」とはアンチェロッティ監督の弁だ。
「それに、チュアメニや(ダニ・)カルバハルが、緊急事態と言えるシチュエーションでは、センターバックとして良いプレーができる」
マドリーは先日、アンチェロッティ監督との契約延長を発表した。新たな契約は2026年夏まで。長期政権を築くことになる。
この夏には、キリアン・エムバペの獲得が囁かれたが、マドリーは最終的に獲得に動かなかった。“パニック・バイ”的な補強を、フロレンティーノ・ペレス会長は好まない。
アンチェロッティ監督の契約延長と、実質的な今冬の補強ゼロ宣言。それが、クラブからマドリディスタに対する未来へのメッセージだ。