【独占】パレスチナ自治政府治安部隊准将が語る「不法者」。自治政府揺るがすパレスチナ人武装勢力との緊張
パレスチナ自治区ガザでの停戦とイスラム組織ハマスによって誘拐された人質の解放に向けた交渉で、イスラエルとハマスは双方が合意したと、日本時間16日深夜、ロイター通信が報じた。仲介役のカタールの交渉担当は「合意に近づいているように見える」と述べていた。間も無く、カタールのムハンマド・サーニ首相がドーハで会見を行う。
停戦や人質の解放が速やかに進み、多くの市民が犠牲になってきた人道危機が一刻も早く改善することを願ってやまない。
しかし、一方で、ヨルダン川西岸で長年続く過剰な入植や市民生活への圧力は非常に深刻だ。イスラエルの占領下にあるパレスチナでは、前回の記事でも書いた通り、イスラエル軍の狙撃兵によって10代の子供や若者を含む市民らが殺害されるなど、非人道行為は続けられている。
8bitNewsには、昨晩、現地にいるパレスチナ人の男性から「難民キャンプが空爆され6名の市民の命が奪われた」と、映像が送られてきた。
パレスチナ自治区ジェニンは、ヨルダン川西岸地区の「レジスタンスの象徴」として知られており ここには長年、イスラエルに抵抗する武装勢力が根を下ろしている。
イスラエル軍は度々「テロリストを排除するため」として、ジェニン難民キャンプや西岸地区の街を攻撃し、武装勢力と対峙しているが、武器を持たない非戦闘員の市民たちがその都度犠牲になっている。
こうした状況を、パレスチナ自治政府の治安当局はどのように考えているのか。今回、ジェニンにある治安部隊の専用施設を訪ね、カンワ・ラジャブ准将に独占インタビューを行うことができた。
ラジャブ准将はインタビューの中で「不法者」という表現を使って、治安部隊が向き合う相手を非難した。
ラジャブ准将が語る「不法者」とは一体誰のことを指しているのか。実は、イスラエル軍に加え、自治政府に対しても反抗する武装勢力のことを指している。
特にジェニンでは、「パレスチナ・イスラーム聖戦(PIJ)」が強い影響力を持つ。この武装勢力はイランの支援を受け、自治政府の権威を弱体化させようとしていると言われ「こうした「不法者」の存在が、イスラエルだけではなく自治政府にとっても課題だ」と、ラジャブ准将は語った。
緊張が続くヨルダン川西岸での治安部隊へのインタビュー。限られた30分の取材だったが、これまであまり語られてこなかった、パレスチナ自治政府が語る、パレスチナ人武装勢力への姿勢が明らかになった。
動画と共にぜひみなさんにも知っておいていただきたいメッセージがそこにある。
インタビュー:
私はパレスチナ治安部隊の広報官、カンワ・ラジャブ准将です。この役職を任命されたのは約1か月前のことです。今回のインタビューでは、特にジェニン難民キャンプでの現状、治安作戦「祖国防衛作戦」についてお話しします。
◆ジェニン難民キャンプの現状と問題の発端
この作戦は、パレスチナの政治的指導部、特にアッバス大統領が主導する「治安維持と法の支配、自治政府の権威を強化する」という方針に基づいています。これは、国際的な合意や正当な国際決議に基づくものです。
この方針に基づき、治安部門は治安維持の計画を策定し、西岸地区全域での実施を目指しています。
ただし、地域ごとの特性、無法状態の度合い、法の外にいる者の影響力の違いによって、アプローチが異なります。
最初にジェニン難民キャンプが対象となったのは、同キャンプが無法者の支配下に置かれ、現地住民の生活を脅かしていたからです。この無法者グループは、地元勢力や一部の派閥から支援を受けており、キャンプを孤立した飛び地にしようとしています。
その目的は、パレスチナ自治政府が治安を維持する能力がないことを示し、自治政府の権威を弱体化させることです。
地域不安を煽る勢力の背景 これらの派閥は、イランの支援を受けており、イランが主導する勢力の一部です。イランはガザ地区、レバノン、シリア、イラク、イエメンなどで混乱を引き起こしてきました。
同様の戦略がジェニンでも行われています。 特に注目すべきは、ソーシャルメディア上で無法者たちが公開している映像です。彼らはイランやハメネイ、革命防衛隊への忠誠を示し、パレスチナの旗を降ろしてイランの旗を掲げる行為を行っています。
これらの行為は、パレスチナ自治政府を弱体化させる目的で行われており、結果的にイスラエルの極右政府の戦略とも一致しています。
◆イスラエルの極右政府の計画と目的
イスラエルの極右政府は、西岸地区の再占領を計画しており、地域の地理的・人口的構造を自らの計画に合致するように再編しようとしています。そのため、自治政府を弱体化させることが彼らの目的の一つです。
彼らは、パレスチナの資産を没収し、財政的に圧迫することで自治政府を弱体化させ、占領軍による西岸地区への侵入、家屋の破壊、大規模な逮捕作戦を行っています。2023年10月7日以降だけでも、西岸地区で10,000人以上のパレスチナ人が逮捕されています。
さらに、ユダヤ人入植者による犯罪行為が頻繁に行われています。彼らはパレスチナ人を殺害し、農作物を焼き払い、家畜に毒を盛り、土地を奪うなどの行為を続けています。これらの行為は、後に政府がその土地を合法化するための第一歩です。
◆ジェニンの「無法者」たちの行為
ジェニン難民キャンプの無法者たちは、市街地での車両爆破や大量の爆弾設置など、市民生活を著しく脅かす行為を行っています。彼らは病院や公共施設を占拠し、治安部隊からの避難場所として利用しています。
さらに、これらの無法者たちは日常生活を破壊し、一般市民の平穏な生活を妨害しています。民間施設や病院を攻撃し、これらの施設を隠れ場所として利用することもあります。これらの行為は、治安を脅かす要因となっており、これがパレスチナ自治政府が治安作戦を開始する決定を下した理由の一つです。
これらの行為が続くことで、ジェニン難民キャンプは他の自治領土から孤立し、イランからの支援を受ける派閥の拠点となっています。
このような状況を放置すれば、イスラエルの極右政府にとって西岸地区再占領の口実となるため、治安作戦が開始されました。
◆国際社会の無力さとパレスチナ自治政府の誓い
国際社会はパレスチナ人の保護はおろか、ガザ地区への最低限の人道支援すら提供できていません。公式・非公式の世論が変化しているにもかかわらず、アメリカの偏った支援がイスラエルを法的、政治的、軍事的に支えています。
イスラエルの極右政府は、2023年10月7日の攻撃を機に「国際的な正当性を得た」と主張しています。ネタニヤフ首相は「ガザでの対応は正当化されるべきだったが、当時は正当性を得ていなかった。しかし、今は違う」と発言しました。
しかし、私たちはそのような過ちを繰り返すつもりはありません。
パレスチナ自治政府は、イスラエルの占領政策に対抗するため、平和的な抵抗、政治・外交・法的な闘いを続けます。
平和の定義 平和とは、パレスチナ人が完全な権利を得ることです。それは、1967年の国境に基づく独立国家の樹立、東エルサレムを首都とすること、そして難民問題の公正な解決を含みます。
75年間にわたる経験が示すように、パレスチナ人が完全な権利を得ない限り、この地域に安定も平和も訪れることはありません。いかなる不完全な解決策も、持続可能な平和と安定をもたらすことはできず、占領国であるイスラエルにとっても同様です。
◆平和とは何か、その定義
平和とは、パレスチナ人が完全な権利を得ることです。それは、1967年の国境に基づく独立国家の樹立、東エルサレムを首都とすること、そして難民問題の公正な解決を含みます。
75年間にわたる経験が示すように、パレスチナ人が完全な権利を得ない限り、この地域に安定も平和も訪れることはありません。
いかなる不完全な解決策も、持続可能な平和と安定をもたらすことはできず、占領国であるイスラエルにとっても同様です。