えっ!「貸金庫」で相続トラブル!?~貸金庫を借りたら「遺言書」を残せ!という理由
三菱UFJ銀行の元行員による貸金庫窃盗事件は、貸金庫の信頼性を大きく失墜させてしまいました。実は、相続の場面でも、貸金庫がトラブルになることがあるのです。トラブルケースをもとに、解説したいと思います。
トラブルケース
高田愛子さん(58歳)は、父・慶彦さん(享年88歳)を3か月前に亡くしました。幸い、慶彦さんは愛子さんを遺言執行者とする遺言書を残してくれていました。そこで、愛子さんは慶彦さんの貸金庫の内容物を取り出すためにA銀行を訪れました。
銀行からまさかの一言
遺言書を提示して「私が執行者に指定されているので貸金庫の内容物を取り出しに伺いました」と行員に告げると、「申し訳ございませんが、貸金庫の内容物を取り出すには、『内容物を取り出すことに合意する』というご承諾を相続人全員の方から頂くことになっております」と言うではありませんか。相続人全員から承諾をもらうにはかなりの手間がかかりそうです。愛子さんは頭を抱えてしまいました。
トラブルを避けるにはどうすればよかった?
貸金庫には現金や金など財産的価値が高いものや遺言書や契約書など重要な書類が預けられている高い可能性があります。このようなものがあった場合、遺産分割協議や遺言執行に影響をおよぼすことになります。
そのため、相続人の1人や遺言執行者に内容物の取り出しを認めたら、銀行は他の相続人から「なぜ、相続人全員の承諾がないのに取り出しを認めたのだ」とクレームを付けられる可能性が否定できません。そのため、銀行は貸金庫の内容物の取り出しには慎重な態度で臨むのです。
したがって、貸金庫がある場合は、貸金庫を特定した上で、遺言執行者に貸金庫の開扉・内容物の取り出し等の権限を与える旨を明記しておきましょう。そのようにしておけば、銀行は安心できるので要求に応じるはずです。以下に、穴埋め式の遺言テンプレートを紹介します。遺言作成の参考にしてください。
【穴埋め式】遺言テンプレート・・・貸金庫の開扉等を行いやすくする記載例
第〇条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として次の者を指定する。
住所 ( )
職業 ( )
氏名 ( )
生年月日 ( 年 月 日生)
2.遺言執行者は、○○○○銀行□□支店の貸金庫(番号:××-××××)を単独で開扉・名義変更・解約でき、並びに貸金庫の内容物の取り出しも行う権限を有するものとする。
トラブルを回避するここがポイント!
このように、貸金庫がまさかのトラブルを引き起こすことがあります。貸金庫を銀行から借りている場合は、遺言書を残すとともに、遺言書に遺言執行者に貸金庫の開扉・内容物の取り出し等の権限を与える旨を明記しておきましょう。
☆参考・引用『穴埋め式遺言書かんたん作成術』(竹内豊著・日本実業出版社)