役員から内職者まで…有業者一人あたりの平均所得をさぐる(2024年公開版)
厚生労働省では2024年7月に「国民生活基礎調査の概況」(※)の最新版を発表したが、それによると2022年時点における全世帯の平均世帯所得は524.2万円とのこと。この値は有業者の数や就業状況によって大きな違いを示す。そこで今回は、就業状況別に有業者における所得水準を確認する。
次に示すのは15歳以上における有業者の、就業状況別の平均所得。属する世帯全体ではなく、働き手本人の所得であり、世帯構成や人数で変化は生じない。なお「国民生活基礎調査の概況」では所得は給与・賃金以外に賞与も該当し、税金や社会保険料も含んでいる。現物支給の場合は時価で見積もった額に換算して含めている。ただし事業所得(自営業など)では収入から仕入れ原価・必要経費(税金・社会保険料は該当せず)を差し引いた金額となる。
調査対象母集団全体では360.8万円。これが会社などの役員となると倍ぐらいの678.7万円となる。正社員では469.7万円だが非正規では196.1万円と半分にも満たない。ただしこれはパートやアルバイトが混じっているからで、派遣社員や契約社員・嘱託では307.8万円となる。
自営業者は340.8万円。ただ職種によりピンからキリまでなので、あくまでも今調査の対象となった人の平均としての参考値程度に見るのが無難。むしろ内職などの場合、152.4万円との具体的な値が確認できたのは注目すべき。
これを男女別に見たのが次のグラフ。
女性は男性のおおよそ半分ぐらいの金額にとどまっている。これは不思議なことにどのような就業状況でも変わるところがない。役員の立場ですら、女性は432.3万円で、男性の正規の職員・従業員の平均より低い。
最後に経年変化。「国民生活基礎調査の概況」の今件項目では2003年以降のデータが収録されている。役員や正規・非正規それぞれの推移は他の調査でも取り上げる機会も多いことから、ここでは非正規の詳細区分として、「パート・アルバイト」と「派遣社員、契約社員、嘱託など」について、男女別の動向を確認する。
意外にも取り扱われている期間内ではパート・アルバイトも契約社員なども、所得に変化はあまりない。むしろこの10年ほどの間に、上昇する動きすら見受けられる。雇用市場の変化に伴い、ここ数年は非正規でも時給が上昇していることは他調査などでも確認できることもあり、今後は小さからぬ動きも見られるかもしれない。
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※国民生活基礎調査
全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2023年6月1日に世帯票、同年7月13日に所得票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収、または政府統計共同利用システムにより回答され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票が4万471世帯分、所得票が4674世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2023年分)は簡易調査に該当する年であり、世帯票と貯蓄票のみの調査が実施されている。
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