100社の評価制度分析から見えた失敗の要因
飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。
前回のコラムでは、【離職率が低い飲食店】を分析してわかった40の取り組みについてお話をさせて頂きました。
今回のコラムでは、100社の評価制度分析から見えた失敗の要因についてお話をさせて頂きます。
なお、今回の内容はYouTubeチャンネルでも解説していますので、よろしければ下記よりご覧ください。
(筆者作成)
評価制度で失敗する企業に共通する3つの理由
①制度が複雑すぎて運用できない
評価制度の導入を検討される社長の多くは自社の経営に対して熱心で、さらにはスタッフのことも考える「スタッフ愛」のある方が多いようです。そもそも、スタッフのことを大切に考えていない社長は評価制度の導入など興味がありません。
一方で、スタッフ愛のある社長ほど、「精度の高い完璧な評価制度をつくりたい」という想いが強すぎるがあまり、制度が複雑化する傾向があります。社長のこだわりを入れた評価制度を構築するのは決して悪いことではありませんが、あまり精度を高めようとしすぎると評価制度が複雑化しすぎて運用できないという事態に陥る危険性が高まります。
実際にいくつかの会社では、結局運用されずに、社長のデスクの片隅でほこりをかぶっている分厚い評価制度資料を目にしてきました。当たり前ですが、評価制度は構築して終わりではありません。「運用できる評価制度」を構築することが評価制度構築で成功する秘訣なのです。
②自社オリジナルの制度になっていない
評価制度導入で期待される大きな目的や効果に「スタッフのモチベーションアップ」があります。評価制度を導入することで、頑張っているスタッフを公平に評価することが可能になります。
さらに、その会社で上位役職者になるために求められる能力を明確化し、それらの指導や評価を通じて個々の成長実現をサポートすることで、仕事に対するやりがいと達成感が増し、スタッフのモチベーションが高まるのです。
本来、スタッフのために導入を決意したはずの評価制度も、構築や運用の仕方を間違えると、逆にスタッフのモチベーションを下げてしまうことにもなりかねません。
まれにコンサルタント会社等が汎用的にパッケージされた制度を導入する場合がありますが、こうした評価制度ではうまく機能しない可能性が高いでしょう。理由は、業種やその会社の特性、さらに言うと部署、担当の仕事の特性を評価制度に盛り込んでいないため、現場スタッフからの納得が得られず、導入後には逆に不満が続出してしまうからです。
これでは、せっかくスタッフのモチベーションを高めようと思い、導入した評価制度も逆効果になってしまいます。評価制度を構築する際には、最初に社内の事業部、部門、担当ごとの仕事の棚卸をしたうえで、個人の職務特性を盛り込んだ評価制度を構築することが重要です。
③社内の取り組みが多く、複雑化している
先ほどお話しした通り、評価制度の導入を検討する社長はスタッフ愛のある真面目な方が多い傾向にあります。勉強熱心で、さまざまなセミナーや書籍で学んでおり、多くの経営知識をお持ちです。
もちろん、経営知識をたくさん持っていることは素晴らしいことなのですが、一方で「経営理念はあの会社のようにコレを!」「経営計画はあのセミナーで勉強したあの形で!」「教育制度はあの会社を参考にして!」「評価制度は書籍で読んだアレを!」といったように、さまざまな要素を取り込もうとして会社の取り組みが複雑化しているケースが多いようです。
このように会社の取り組みが複雑化すると、社員や組織全体が〝頑張り疲れ〟を起こしてしまいます。
評価項目、必要とされるスキル、研修が個々に設定されてしまっている場合、研修を受けるモチベーションがあがらない、スキルアップしていくための方法もわからないという状態に陥ります。
理念の浸透、教育プログラム、評価制度、研修、全てをリンクさせて作っていくことが非常に大切です。このように、社内の取り組みを点ではなく面で作っていくやり方については、次のコラムでご紹介していきたいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
(筆者作成)
<筆者プロフィール>
飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント
代表取締役 三ツ井創太郎