夏は昔と比べて暑くなっているのか、東京や大阪などの熱帯夜の日数から検証(2024年版)
「熱帯夜」を定義する
夏場の暑さについて「昔は夏の暑さなど我慢したもの。今も昔も暑さは変わりはない。今の人達は根性がない」との意見がある。気象庁の公開データを基に熱帯夜の数から、「昔も今も夏の暑さは変わらない」が本当か否か、その実態を検証する。
「暑い夜」をイメージする「熱帯夜」だが、気象庁の定義によれば( 【天気予報等で用いる用語】)、「夜間の最低気温が25度以上のこと」「気象庁の統計種目にはない」とある。実のところ定義の「夜間」に関しては具体的な取り決めはなく、したがって気象庁でも公式な統計は取っていない。一般的には1日の間(午前ゼロ時から午後11時59分)の最低気温が25度以上の日を熱帯夜としており、その区分ならば気象庁で統計も取られている。よって今回は「午前ゼロ時から午後11時59分の最低気温が25度以上の日」を熱帯夜と定義する。
熱帯夜をカウントする
それでは実際に、熱帯夜の数を年次ベースで抽出し、その動向から温暖化が進んでいるのか否かを確認する。観測対象地点は東京と大阪、そして消防庁の熱中症の公開データでは救急搬送者数の上位によく顔を見せる神戸を対象とする。
真夏日や猛暑日同様、確実にその数を増やしているのが分かる。一方で真夏日や猛暑日のように、選んだ地域の中では大阪が特に増え方が著しいということはなく(【増加する真夏日・猛暑日、「昔も今も暑さは変わらない。騒ぐのは根性不足」は精神論(2024年版)】)、どの地域も似たような増加の仕方をしているように見える。あえていえば東京がやや穏やかな伸び方のように見えるかもしれない。
ちなみに直近となる2024年では、東京で40日、大阪で59日、神戸では62日が熱帯夜の日数となっている(9月頭までの値)。
近似曲線で確認
先のグラフを見て「増えていない」と解釈する人はいないだろうが、念のために元のグラフにグラフ作成ソフトの機能を用いて線形近似曲線(点線)を引き、熱帯夜の動向を示す折れ線を透過する形にして、線形近似曲線を目立たせるようにしたのが次の図。要は点線部分が横ばいなら、熱帯夜は増えていない、右肩上がりならば増えている、右肩下がりなら減っていることになる。
今回観測対象となった東京・大阪・神戸ではいずれも増加傾向にある。印象通り東京はやや穏やかな伸び方、大阪と神戸はほぼ同じだが、神戸の方が増え方が急なようだ。
もう少し検証対象地域を増やし、さらに人口の増加率と掛け合わせれば、温暖化現象の一因とされるヒートアイランド現象との相関関係性も一層確かなものとなりそうだが、よほどの観測地点でなければ熱帯夜の有意な値は期待できないので、今回は省略する。
ともあれ熱帯夜の観点で見ても、日本の夏は確実に暑くなっている。これは間違いないと判断してよいだろう。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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