レアル・マドリーとリヴァプール。欧州屈指の矛と矛が激突。
今季のチャンピオンズリーグ(CL)で、決勝に進んだのは、レアル・マドリーとリヴァプールだ。3連覇が懸かる王者と、14年ぶりの優勝を目指す挑戦者が激突する。
ヨーロッパで屈指の攻撃力を誇る2チームの対戦である。観衆が期待するのは打ち合いの展開かもしれない。
■「MSN」と「BBC」以上の破壊力
2014-15シーズン、メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの「MSN」がCLで27得点を挙げ、バルセロナが欧州の頂点に立った。2016-17シーズンには、ベイル、ベンゼマ、C・ロナウドの「BBC」がCLで28得点を挙げ、マドリーが連覇を達成した。
サラー、マネ、フィルミーノ。この3選手は今季CLで29得点を挙げている。今季のリヴァプールの攻撃陣は「MSN」と「BBC」以上の破壊力があるということだ。
対してマドリーはC・ロナウドが今大会15得点と圧倒的な決定力を示している。ポルトガル代表FWは準々決勝ユヴェントス戦まで11試合連続ゴールをマークして新記録を樹立。加えて、2013-14シーズンに自身が記録した大会記録の17得点に、あと2ゴールと迫っている。
■マルセロの裏
ポイントとなるのは、サイドの攻防だろう。マドリーにとっての左サイド、リヴァプールにとっての右サイド。マルセロとサラーの一騎打ちである。
今季マドリーで公式戦46試合(出場時間3581分)でプレーしているマルセロだが、対戦相手がブラジル代表DFの裏のスペースを狙っているのは明らかだ。
マルセロが出場した試合で、マドリーは46失点を喫している。その失点のうち、50%が左サイドを破られた末に訪れた。
リヴァプールとしては、マルセロの裏を突きたいところだ。フィルミーノがMFとDFの間のラインでボールを受け、カセミロを引き出し、相手のボランチを喰い付かせてマルセロの後方のスペースを狙う。そこにサラーを走り込ませる形が理想だろう。少なくとも、スペースが多くある状態でサラーとマルセロの1対1の状況を作りたい。
そして、鍵を握るのはリヴァプールの前線からのプレッシングである。敵陣でカセミロ、クロース、モドリッチからボールを奪い、雪崩の如きカウンターで一気に仕留める。決勝トーナメント進出以降、ポルト戦、ローマ戦では速攻から4対3の場面をつくり、ゴールを陥れている。
■スタメン争い
マドリーはスタメンの論争が続いている。GKナバス、DFカルバハル、ヴァラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ、MFカセミロ、クロース、モドリッチ、そして前線のC・ロナウドの出場は間違いないだろう。
残り2枠。これをイスコ(今季出場時間2896分/9得点/10アシスト)、アセンシオ(2863分/11得点/9アシスト)、ルーカス・バスケス(2812分/8得点/16アシスト)、ベンゼマ(3148分/11得点/12アシスト)、ベイル(2333分/19得点/8アシスト)の5選手が争う格好だ。
ジダン監督にとっては嬉しい悩みだ。一方でこれはシステムの柔軟性を保証する。
■戦術のバリエーション
そのシステムとは4-3-3、4-4-2あるいは4-1-4-1だ。
ベイルが昨年9月26日のドルトムント戦で負傷して長期離脱を余儀なくされ、ジダン監督が今季初めて「BBC」を起用できたのは1月21日のリーガ第20節デポルティボ戦だった。4-3-3の練度を上げる時間はなく、この布陣は試合中のオプションになるような気がする。
4-4-2であればポゼッションが確約され、4-1-4-1であればサイドが補填される。4-4-2ならイスコが、4-1-4-1ならアセンシオとL・バスケスがスタメンに近づく。
ただ、1トップだった場合、C・ロナウドが前線で孤立する。CLで通算120得点を挙げているC・ロナウドを生かすためには、パートナーが必要だ。「C・ロナウドの理解者」としては、ベイルよりベンゼマの方が秀でている。
マドリーの左サイドはウィークポイントにも、ストロングポイントにもなり得る。ベンゼマはその点でも貢献度が大きい。彼は攻撃の起点をつくるため、左サイドに流れる傾向がある。マルセロ、クロース、ベンゼマがトライアングルを形成してサイドを崩せれば、リヴァプール攻略の筋道ができる。
■矛×矛
マドリーは2015-16シーズン、守備を武器に決勝まで勝ち進んだアトレティコ・マドリーにPK戦の末に競り勝ち、優勝を飾った。
昨季の決勝ではユヴェントスと対戦した。ユヴェントスの昨季公式戦での1試合平均失点数は0.6点。CLに限れば、決勝までの12試合で僅か3失点と驚異的な守備力を示していた。だがマドリーはそのユヴェントスから4得点を挙げ、4-1で勝利してビッグイヤーを掲げた。
今季のファイナルでは、攻撃力が自慢のリヴァプールと対峙する。観る者を魅了するノーガードのスペクタクルの末に王者が誕生するならば、フットボールの歴史に新たなページが刻まれることになるだろう。