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「この歳だからできた恋愛だと思います」。80歳の新婚さん。前田吟が噛みしめる人生100年時代の意味

中西正男芸能記者
80歳を迎え、今の思いを吐露する前田吟さん

 2022年、78歳での再婚が話題になった俳優・前田吟さん(80)。妻の箱崎幸子さんとABCテレビ「新婚さんいらっしゃい!」(9月22日放送)に出演するなど、傘寿を迎えて新たな一歩も踏み出しています。まさに人生100年時代を体現する歩みでもありますが「もうこのまま人生終わるのかな」と思ったところからスイッチが入った瞬間とは。

歳を取ったからこそできる恋愛

 今回「新婚さんいらっしゃい!」に夫婦で出してもらうことになりました。

 いやね、ひょっとしたらお話が来るんじゃないかと思っていたところはあったんです。ま、普通に考えて珍しいじゃないですか。78歳での新婚さんというのも(笑)。だから、もしかしたらとは思っていたんですけど、お声がけいただきました。

 スナックでたまたま出会って、いわゆる交際期間っていうのかな、それがかなり短かったんです。なので、結婚してから改めてお互いについて知るというかね。そういう部分が多いんですけど、それがまた楽しいなとも感じてます。一つ一つが新鮮ですし。

 最初に会った時に、思ったんですよ。この人しかいないと。それこそ石原裕次郎さんをはじめ、あらゆる大スターとご一緒させてもらってきましたし、あらゆる女優さんともお会いしてきました。吉永小百合さんと夫婦役もやらせてもらいました。ただ、こういうときめきはなかったんですよね。学生の時にクラスが一緒になった子に一目ぼれ。その感覚なんですよ。そのまま一気に結婚しました。

 これはね、変な言い方ですけど、歳を取ったからできる恋愛であり、結婚なんだろうなとは思ってます。

 互いに知らない状態で結婚する。そりゃ、新鮮かもしれないけど、イヤなところも次々に見えちゃう。それもよく分かります。

 ただね、この歳になるまでアレコレやってくると、悪いところを見るんじゃなくて、いいところを見る。うまく人付き合いをする秘訣として、それは自ずとやっていることなんです。これがあると、知らないことがほとんど魅力になってくる。

 ま、僕自身、結婚は3回目だからね。最初は子供を授かって20歳の時。その時はまだまだ若いし、役者として売れかけていた時期でもあったので、事務所も結婚や子どものことを隠そうとしてました。正直な話。

 2回目も、まだ25歳の時でしたからね。もう「男はつらいよ」も始まってましたし。いろんな意味で、この時もそういうことで騒いで欲しくない気持ちも周囲にあったと思います。「男はつらいよ」に迷惑がかかっちゃうし。ということはね、新婚を謳歌するということがなかったんですよ。

 もちろん、そういう時代ということもあったし、売れなきゃいけない時期でもあったし、今から思うと、それしかない選択肢だったんだと思います。ただ、新婚気分なんてものはなかった。今になってじっくりと新婚気分を味わっています。

 これもね、つくづく、つくづく今の歳だからしっかりと味わえているんだと思いますよ。これまであらゆる人にお世話になり、あらゆるものを見てきました。その蓄積があるからこそ、今の状況を心底楽しめているんだろうなと感じます。

 勝新太郎さんからは色気を失くしたらダメだということを学びました。田宮二郎さんからは人としての凛とした姿勢を学びました。そして、渥美清さんからはすべての人を平等に扱うことを学びました。いや、本当に、何もかもフラット。誰に対してもやさしい。大切なことを教えてもらいましたよ。さらに、お客さんに芝居の世界に没入してもらうため、私生活は隠す。その意味も学びました。

 そういう教えがあって今がある。そして、今の結婚がある。つくづくありがたいことだなと思いますね。ま、今、僕はプライベートを隠してませんけど(笑)。

2回目の人生

 人生100年時代。よくその言葉は聞きますけど、妻と会った瞬間にバンとスイッチが入ったんですよね。

 撮影の現場行くと、しっかり自分を出さないとお仕事にならないのでスイッチをバンと入れるんだけど、それが私生活で入ったというかね。もう年齢的にも、そして前の女房も亡くなり「もうネジを巻かないで、人生このまま終わるのかな」と思っていたところでのことでした。

 今はね、神様にもらった2回目の人生だと思ってます。80歳からまたいろいろと夢が広がる。今回の「新婚さん―」もだけど、全てにやりごたえを感じています。

 妻と二人で歌を歌って介護施設をまわろうなんてことも考えてますしね。何の加減か、ここにきてまた力をいただいたわけですから、その二人が生き生きとしていることを、もしよかったら見てもらう。烏滸がましい話ですけど、それ自体、意味があることなのかなとも考えているんです。

(撮影・中西正男)

■前田吟(まえだ・ぎん)

1944年2月21日生まれ。山口県出身。本名・前田信明。ティー・アーティスト所属。63年、劇団俳優座養成所15期生となる。同期は地井武男、原田芳雄、夏八木勲、小野武彦、村井国夫、林隆三、秋野太作、浜畑賢吉、栗原小巻、太地喜和子、赤座美代子ら。65年に「純愛物語」に主演する。69年、映画「男はつらいよ」(山田洋次監督)に車寅次郎の妹・さくらに惚れる諏訪博役として出演。その後、全50作全てに出演した。2002年、テレビ朝日系「スーパーモーニング」の司会を務める。21年、妻がすい臓がんで逝去。22年に歌手・箱崎幸子と再婚した。9月22日放送のABCテレビ「新婚さんいらっしゃい!」に出演する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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