プロレスラーから大統領へ ~米史上最も偉大な大統領は”アメリカ版猪木”だった!?~
現職の第45代アメリカ大統領のドナルド・トランプが、大統領就任前にプロレスのリングに上がっていたのは割と有名な話である。トランプの話術はプロレスラーを参考にしたとも言われており、プロレスから学んだことを政治の世界でも生かしている。また、世界最大のプロレス団体WWEの殿堂入りを果たしている唯一のアメリカ大統領でもある。
日本でも「燃える闘魂」ことアントニオ猪木が参議院議員を務めたのを始め、文部科学大臣を務めた衆議院議員の馳浩などプロレスラー上がりの政治家はそれなりにいる。
アメリカでも猪木と対戦経験もあり、WWEの殿堂入りも果たしているジェシー・ベンチュラがミネソタの州知事を務めた。
日本ではプロレス上がりの総理大臣はいないが(プロレス・ファンの野田佳彦前総理大臣が首相を辞任直後の2013年に週刊プロレスの表紙を飾ったことはあるが・・・)、アメリカではトランプ以外にもプロレス上がりの大統領が存在する。しかも、レスラーとして戦っていないトランプとは違い、本物のレスラーとして強敵を倒してきたツワモノがいた……。
現在の新日本プロレス所属の日本人プロレスラーの中で最も大きいオカダ・カズチカ(191センチ)よりも2センチ背が高いエイブラハム・リンカーンは身長193センチ、体重82キロの恵まれた身体で、「400戦無敗」のヒクソン・グレイシーに匹敵する300戦で1敗しか喫しなかったエリート・レスラーだったと言う。193センチ、82キロは身体の線が細い感じがするが、幼少のときから肉体労働で鍛えられた筋肉質の身体を誇った。ちなみに新日本プロレスに入団したときの前田日明が192センチ、73キロだった。
21歳のときにイリノイ州の郡チャンピオンになり、ジャック・アームストロングとの一戦は後年まで語り継がれている。1800年代の話なので、リンカーンの300戦で1敗はヒクソンの400戦無敗以上に都市伝説的だが、リンカーンがレスリング技術に長けた強いレスラーだったことは事実なようだ。
リンカーンが戦ったのは今のプロレスのような形ではなく、アマチュア・レスリングに近いものだったが、賞金がかけられていたのでリンカーンを「プロレスラー」と呼んでも間違いではない。WWEの殿堂には入っていないが、米ナショナル・レスリング殿堂はリンカーンのレスリングでの功績を讃えて「Outstanding American(優れたアメリカ人)」賞を授けている。
レスリングのチャンピオンだった大統領はリンカーン以外にも存在する。
初代アメリカ大統領のジョージ・ワシントンは、バージニア州のレスリング王者で、47歳のときでもマサチューセッツ州からやってきた7人の挑戦者に勝ったという。
第26代大統領のセオドア・ルーズベルトはホワイトハウスにレスリング・マットを持ち込み、レスリングの練習を日課としていただけでなく、ボクサー、レスラー、柔道家などと「異種格闘技戦」もどきのスパーリングをしていた。
サウスダコタ州にあるラッシュモア山にはワシントン、トーマス・ジェファーソン、ルーズベルト、リンカーンの4人の偉大なる歴代大統領の胸像が彫られているが、ジェーファソンを除く4人中3人がレスラーであり、米ナショナル・レスリング殿堂にレリーフが飾られている。