【毎日書評】ひとが動く「コンセプト」とは、なにか?どうやってつくっていくのか?
著者のことばを借りるなら、『コンセプト・センス 正解のない時代の答えのつくりかた』(吉田将英 著、WAVE出版)は「企画の本」。 「斬新なアイデアを生み出したい」「チームでの共創をスムーズに進めたい」「上司や取引先の承認をとりたい」「世の中をよくしたい」などの目的を持った、“企画に携わる人”に向けて書かれているということです。 ただしプランナーやクリエイターなど企画職の方だけをターゲットにしているわけではなく、根底にあるのは、広く「企て」をするすべての人に届けたいという思い。 人は「現状を変えたくて、企てる」ものなので、そうしたニーズに応えようとしているというのです。 とはいえ厄介なのは、「どうなったとき、その企てが成功といえるのか?」は曖昧であることが多いという事実。 「なにかもっと新しく」「ここままではなく、どうにかしたい」など漠然とした思いはあるものの、「とりあえず現状の延長線上は嫌だ」というように、その先が見えにくいことが少なくないわけです。 そこで、コンセプトです。 コンセプトとは、社会の既存の「当たり前」が見落としてきた、人々がまだ自覚できていない満たされていない欲求を満たし、理想の社会に今より近づくための「提案の方向性」のことであり、同時にアイデア創造の源泉であり、企画の骨子でもあります。 (「その違和感が、コンセプトの入り口になる ~まえがきにかえて~」より) コンセプトを起点にすることができれば、「ここではないどこか」とはどこなのかを、自分の内部で、あるいは他者とともにつかむことが可能。また、企ての中身の質や実行する際の推進力など、すべてによい影響を与えることができるといいます。 この本では、コンセプトを基点に世の中を見聞きし、企てを考え、他者と関係性を築いていく感情を「コンセプト・センス」と名づけ、いかにしてそれを体得するかを考えていきます。 (「その違和感が、コンセプトの入り口になる ~まえがきにかえて~」より) そんな本書のなかから、きょうは第2章「コンセプトは私たちに何をもたらすのか」内の「コンセプトとはどんなものか?」に焦点を当ててみたいと思います。