虎番こぼれ話 日本で陽気キャラに変身した愛されミエちゃん「ドミニカ共和国の友人がみたら、そんなキャラじゃないと絶対笑われる」
阪神担当記者が取材ノートに温め続けていた虎戦士のエピソードを紹介する「虎番こぼれ話」。期待を背負って来日2年目に臨むも、11日に帰国しこのまま退団となる方向のヨハン・ミエセス外野手(29)を、新里公章キャップ(37)が取り上げる。誰からも愛されたキャラクターの裏には、日本野球に順応するための隠れた努力があった。 岡田前監督から「ミエちゃん」と呼ばれ、チームメートの誰からも愛されたミエセス。陽気なムードメーカーという〝キャラ付け〟もチームになじむための努力の結果だった。 「ドミニカ共和国の友人がみたら、そんなキャラじゃないと絶対笑われるよ」 2023年9月22日のヤクルト戦(神宮)。雨天中止となり、M砲はセーフティーバントのポーズから駆け出すと、シートで覆われた一、二、本塁の水たまりに豪快に頭から滑り込んだ。仲間もファンも笑顔にしたシーンだったが、本当は人見知りで心配性な性格だ。 来日1年目の開幕前に2軍落ちした際の一番の心配ごとは「ファームの人たちは1軍のように僕を受け入れてくれるのか」。慣れない環境のなか、担当通訳との二人三脚で必死に日本野球を学んだ。糸原や佐藤輝らとも積極的に会話し、来日後は〝未知との遭遇〟も乗り越えた。 昨季途中のこと。生まれて初めて馬刺しを目にし、友人に勧められても口にする勇気が出なかったが…。日本の文化に飛び込むため、意を決して目をつむって食べた。翌5月18日の中日戦(バンテリンドーム)では〝馬肉パワー〟で一回2死満塁で走者一掃の3点打を放ち勝利に貢献。「その日はとてもいい思い出」と笑顔で振り返った。 リーグ優勝した夜のビールかけ前のあいさつでは、岡田前監督から「ミエちゃん。主役ちゃうよ」ときついジョークを受けた。M砲が引き出した〝愛あるイジリ〟も順応しようと努力してきた結果かも? 出場機会がなくても試合後には室内練習場で打撃練習を欠かさなかった。インパクト抜群のミエセスは、海の向こうで新生タイガースの仲間の活躍を祈っている。(新里公章)