国民保守主義も「意識高い系」も自由を滅ぼす 表面的には対立する理念が実は通じ合う逆説
近年「WOKE」という言葉がよく使われている。「WAKE=目を覚ます」という動詞から派生したこの言葉は「社会正義」を実践しようとする人びとの合言葉になっている。 『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』著者のカール・ローズ教授は、企業が社会問題に取り組むことそのものが本音レベルで利益に直結する現代資本主義の構造と問題点を描いている。私たちはこの状況をいかに読み解くべきか。
近著『新自由主義と脱成長をもうやめる』著者の一人、佐藤健志氏が分析する。 ■世界が直面するジレンマ グローバリズムには弊害が多い。 さりとてナショナリズムに徹するには、地球規模の問題が多すぎる。 現在の世界が直面するジレンマは、このようにまとめられます。 そんな中、二つの注目すべき理念が台頭している。 一つは「国民保守主義(National Conservatism)」、もう一つは「意識高い系資本主義(Woke Capitalism)」です。
国民保守主義は、名前のとおり保守性を強調するもので、逆に「意識高い系資本主義」はリベラリズムを掲げる。 むろん前者はナショナリズム志向で、後者はグローバリズム志向。 言い換えれば、二つの理念は対立する関係にあるのですが……。 なんと、お立ち会い。 国民保守主義と「意識高い系資本主義」は、本質において見事に通じ合っているのです! どうして、そうなるのか? 国民保守主義から見てゆきましょう。 ■多数派の意向に合わせた権威主義
イギリスの週刊紙「エコノミスト」は最近、国民保守主義について次のような趣旨の論評を掲載しました。 いわく。 国民保守主義は国家による統制を重視し、「意識高い系」を否定する保守主義であり、国家主権を個人より尊重する。 レーガンやサッチャーのような1980年代の保守主義者と異なり、彼らは「大きな政府」にたいして懐疑的な姿勢を取らない。国民保守主義者は、巨大なグローバリズム勢力が人々を追い詰めていると見なしており、それを救えるのは国家だけだと構える。