宝富士が自身5年ぶり7連勝 「花のロクイチ組」の〝ラストサムライ〟が脚光/九州場所
大相撲九州場所9日目(18日、福岡国際センター)西前頭10枚目宝富士(37)は阿武剋(24)をはたき込み、3日目から7連勝で7勝目を挙げた。3大関は2日続けて安泰。琴桜(26)は欧勝馬(27)を押し倒し、美ノ海(31)を上手投げで下した豊昇龍(25)とともに1敗を守った。新大関大の里(24)は小結若元春(31)を寄り切って7勝目。1敗で琴桜、豊昇龍、平幕隆の勝(30)が首位に並ぶ。 枯れた味で、あしらう。37歳の平幕宝富士が、1敗だった24歳の阿武剋をはたき込んで7勝目。年齢がひと回り以上も若い相手を引きずり下ろした。 「体に染みついちゃった動き。苦しまぎれだけど、体が動いた」。右を浅く差されて寄られたが、引き足が速い。相手の差し手が抜けた瞬間、体を左に開いた。7連勝は令和元年秋場所(不戦勝を含む)以来、5年ぶりだ。 宝富士は昭和61年度生まれで、同学年で15人もの関取を輩出した「花のロクイチ組」の一人。すでに部屋を興した元横綱稀勢の里(二所ノ関親方)や元大関豪栄道(武隈親方)、いずれも元関脇の勢(春日山親方)、魁聖(友綱親方)、栃煌山(清見潟親方)、ともに9月の秋場所限りで引退した妙義龍(振分親方)、碧山(岩友親方)らが名を連ね、現役関取ではとうとう〝ラストサムライ〟になった。 「巡業に出ても同世代が少なくなってさみしい」。だが、長い巡業中でも先々でトレーニング施設を探し、ベンチプレスでは190キロを挙げる。この日で初土俵から休みなく土俵へ立つ通算連続出場が単独史上9位の1317回に。これも自己研磨のたまものだ。 相撲王国といわれた青森・中泊町出身。同県出身の幕内力士は江戸時代の安政3年生まれで大関まで昇進した一ノ矢が入幕して以来、明治16年から141年間、一度も途絶えたことがない。9月の秋場所では青森県出身は宝富士と錦富士の2人となり、宝富士は十両まであとがなくなった西前頭15枚目で10勝を挙げた。番付上、この記録を一人で支えた時期もある。「その日の相撲に懸ける。いまはそれしか(動機が)持てない」。ベテランの美意識には「侘(わ)び」「寂(さ)び」が漂う。(奥村展也)