真央が復帰戦で残した課題と可能性
ソチ五輪代表で昨年の世界女王、浅田真央(25歳、中京大)が3日、さいたまスーパーアリーナで行われたジャパン・オープンで、昨年3月の世界選手権以来、553日ぶりの復帰リンクに立った。代名詞のトリプルアクセルに成功するなど、ブランクを感じさせない演技で日本チームの優勝に貢献した。 参考記録ながら昨年2月のソチ五輪で記録した142.71の自己ベストに迫る141.70(技術点71.88、演技構成点69.82)をマーク。この日は、昨年の世界女王でトリプルアクセルを飛ぶトゥクタミシェワ、ソチ五輪金メダリストのソトニコワという最強ロシア勢・ライバルが出場していたが、真央が最高得点だった。 試合後、浅田は「初戦にしては、今までのジャパン・オープンで一番いい演技だったと思います。得点をつけるなら55点ぐらい。復帰戦にしてはいい演技でしたが、まずは、昨年の世界選手権の状態まで戻すことが、最低レベルの目標です。もっと上を目指せるという意味をこめて55点」と、厳しい自己採点を語ったが、果たして真央が見せた演技は、復活と呼べるものだったのか。 元全日本4位で、フィギュアに関する著書もある現在インストラクターの今川知子さんは「シーズンの開幕戦としては、素晴らしい演技内容でブランクは伝わってきませんでした。プレッシャーから縮こまることもなく生き生きして見え、風格を感じました」という感想を抱いた。 プログラムの冒頭に組み込んだ代名詞のトリプルアクセルも見事に着氷。回転不足の認定もなく成功した。 「踏み切りにも躊躇がなく、ジャンプの高さ、幅と、ピーク時のトリプルアクセルとそう変わらなかった。相当練習を積んできたのでしょう」と今川さん。 フリーの選曲は、オペラ「蝶々夫人」。和服をイメージしたパープルカラーの衣装には、蝶の飾り付けが散りばめられてあり、大人の艶やかさが表現されていた。ただ、プログラムの表現力の深みや、浅田が目標としている昨年の世界選手権のレベルに比べると、まだスピードとパワーは不足しているように感じた。 今川さんは、「まだスピードやジャンプの回転のキレ、スピンの回転、力強さはピーク時に比べると物足りないかもしれませんが、これから本格的なシーズンに入り、滑り込んでいけば戻ってくるでしょう。どちらかと言えば、スローのテンポな悲劇の曲を選んでいたので、そのあたりも目立ちませんでした。それが戦略かどうかはわかりませんが、円熟期を迎えたスケーターにふさわしい曲だとも思えました」と見ている。