元祖「再現ドラマの女王」が明かす自転車操業の舞台裏 5年で300本、鍛えられた即興力
テレビのバラエティー番組でよく目にする「再現ドラマ」。今では人気芸人が登場したり、出演俳優がクローズアップされたりすることがあるが、以前は「やりたくない仕事」とされていた時代があったという。生活情報バラエティー番組「こたえてちょーだい!」(2001~07年)などに出演し、「再現ドラマの女王」と呼ばれた俳優片岡明日香さん=岡山県総社市出身=に、当時を振り返ってもらった。 【写真】「こたえてちょーだい!」で披露した学生服姿の片岡さんはこちら ■衣装の準備も自分で 片岡さんは2002年からの5年間、「こたえて―」「わかってちょーだい!」(2007年)の再現ドラマ約300本に出演した。「ドロドロ系」エピソードを担当することが多く、浮気する、もしくはされる主婦、ストーカー被害を受ける女性など、さまざまな役をこなした。 ヘアメイクも、衣装の準備も全て自分でする必要があった。帯番組のため、スタッフも自転車操業状態。ドラマの台本が当日の朝、仕上がることも珍しくなかったという。「朝、現場に来るまで、自分がどんな役を演じるか分からず、事前のおおまかな情報から想像力を膨らませて、衣装を複数用意していました。せりふもすぐに覚える必要があり、求められる役を瞬時に演じる『即興力』が鍛えられたと思います」と語る。 多い時は1日で7本撮りをすることも。ドラマのカットはばらばらに撮影するため、通常はつながりをチェックするスタッフがいるが、この番組ではいなかったため、役者自身がどんな格好、髪形だったかを細かく記録していた。「着替えて、せりふを覚えてと、忙しかったため意識がもうろうとしていた時も。オンエアを見ると、ドアを開ける前と、外に出た時で髪形が違っていたこともありました」と笑顔で明かす。 ■芝居がしたい一心 以前は再現ドラマに出ると、通常のドラマに使ってもらいづらくなると言われていたことがあった。それでも、当時27歳だった片岡さんに迷いはなく、「芝居がしたい一心だった」そうだ。出演する中で、知名度はどんどん上がり、雑誌に登場する機会に恵まれたり、街中で声をかけられたりするようになった。「電車に乗っていると、『こたえてちょーだい!』と番組の歌を歌ってくれる人もいました。もともと内気な性格だったので、売れていないのに顔だけばれて恥ずかしかったです」とはにかむ。 近年では「再現ドラマ俳優」が注目されることも増えてきた。「片岡さんの功績では」とたずねると、「『こたえて―』『わかって―』があったからこそ。再現ドラマ俳優を大事にし、スポットを当ててくれた。通常、再現ドラマに出演しても、役者の名前はエンドロールで紹介されることはありませんが、最後のころは名前を出してくれたり、スタジオに呼んでくれたりしました」と番組に感謝する。