「絶対に1番をとる」初のセンバツ優勝を狙う青森山田…プロ注目2人のエースの「想いを隠さない火花」
昨秋、主軸として先発マウンドに立った関のハイライトは、東北大会準決勝だ。勝てば翌春のセンバツ出場が当確となる一関学院戦で、2安打、12奪三振の完封を演じた。 「8年ぶりのセンバツがかかった試合で絶対に負けられなかったんで、いつも以上に気合いが入った結果だと思います」 背番号1の面目躍如。関の圧巻のパフォーマンスをベンチで見届けた背番号10の櫻田は、素直に喜ぶことができなかった。 「チームとしては勝ってセンバツに近づけたのは嬉しかったんですけど、個人的には悔しくて。素直に喜べなかったというか。でも、関がすごいピッチングをしてくれたことが、決勝での結果に繋がったのかなって」 青森のライバルでもある八戸学院光星との決勝戦。ストレートの走りを試合でのバロメーターとしている櫻田は、初回から「打たれる気がしなかった」と自信を漲らせていた。6回を過ぎたあたりからベンチがざわつき始めても自身に動揺はなく、「失点しなければいいや」と冷静に腕を振り続けた。 野球人生初となるノーヒットノーラン達成。不遇という印象が強かったこれまでの歩みが、報われた瞬間でもあった。 櫻田には「背番号に関係なく、マウンドに立つピッチャーがエース」といった概念はない。あくまでもエースナンバーにこだわる。 「自分は結構、負けず嫌いなんで『夏大(夏の大会)では絶対に1番をとってやる』って。そのためにセンバツでは結果を残したいです」 櫻田を追う立場から追われる存在となった関も同じだ。1年からマウンドを守ってきただけに、背番号の持つ意味を誰よりも知る。 「エースだった先輩方の姿を間近で見てきて憧れていましたし、自分もそういう存在になりたいんで。だから、1番にはこだわります」 想いを隠さず火花を散らしながら切磋琢磨する2人に、兜森は「背番号を意識し合える関係でいてほしい」と目尻を下げる。 青森山田が誇る二枚看板は、今やプロのスカウトが注視するまで成長を遂げる。 待ち受ける甲子園のマウンド。関と櫻田の熱気が、観衆にこう訴えかける。 俺こそがエースだ、と。 取材・文・撮影:田口元義 1977年福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル誌の編集を経て2003年にフリーとなる。『Number』(文芸春秋)を中心に、雑誌を中心に活動。共著に「戦力外通告 プロ野球をクビになった男たち」、同「諦めない男たち」「負けて見ろ」(秀和システム)「9冠無敗能代工バスケットボール部 熱狂と憂鬱と」(集英社)などがある
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