兵庫知事選で斎藤前知事の演説に人が殺到 SNS駆使した選挙戦術でまさかの出直し再選はあるのか
来ていた人たちに聞くと、多くの人がSNSで演説の情報を得て来たという。 同じ日の夕方、斎藤氏は神戸市北部に移動し、神戸市営地下鉄・名谷駅前に立っていた。斎藤氏がマイクを握ると、商業施設の2階通路まで人で埋まり、大きな歓声がバスターミナルにこだましていた。 ここでは出陣式でも見た人物が数人、確認できた。斎藤氏の訴えに呼応して、絶妙のタイミングで、 「そうだ」 と声をあげるシーンもあった。 動員なのか、熱烈なファンなのか。話を聞こうと思ったが、人込みの中で見失ってしまった。 斎藤氏はSNSを駆使した選挙戦を展開している。LINEアカウントを開設して、写真提供や投稿を呼び掛けている。斎藤氏陣営のボランティアは首からQRコードがついた紙を下げて、LINEへの登録を呼び掛けていた。斎藤氏の演説にも、 「ハッシュタグ、斎藤知事頑張れ、斎藤知事負けるなというトレンドが続いている」 というフレーズがあった。 ■斎藤氏は「動員はまったくない」 都知事選では、元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏がSNS戦略で支援を広げたが、その戦略とそっくり。聴衆の熱気や雰囲気も似ている。 斎藤氏を直撃して聞くと、こう話した。 「たくさんのご支援はとても嬉しい。(聴衆の)アルバイト動員とか、まったくない。(N党の)立花氏とは面識がなく、こちらから声のかけようもない。SNSはスタッフがやってくれている。石丸氏を意識? いや、わからないが、支援の輪がSNSで広がっているのは、ありがたいことです」 知事選に立候補しているのは、斎藤氏、立花氏のほか、前参院議員の清水貴之氏、前尼崎市長の稲村和美氏、医師で共産党推薦の大沢芳清氏、レコード会社経営の福本繁幸氏、会社経営の木島洋嗣氏。過去最多の7人の争いとなっている。
■自民党の中からも斎藤氏支援の動き この知事選で自民党と公明党は自主投票の方針を決めているが、自民党議員らは稲村氏や清水氏、そして斎藤氏を支援する動きを見せている。 稲村氏は、自民党の一部が支援するほか、立憲民主党や国民民主党、連合が支援している。稲村氏の出陣式には自民党の松本剛明元総務大臣や国民民主党の向山好一衆院議員、県内首長や県議らが応援に駆け付けていた。 清水氏は「日本維新の会」を離党しての出馬だが、実際には維新の議員が支援するほか、神戸市の自民党市議団が清水氏を支援する方針を明らかにしている。 そして斎藤氏についても、自民党の明石市議らが支援を表明している。 選挙戦前のメディアの情勢調査などでは、稲村氏、清水氏、そして斎藤氏が、他の候補をリードしているとみられていた。 淡路島で斎藤氏の演説を聞いていた地元市議に聞くと、こう話した。 「聞くところでは、稲村氏がリードしていて、斎藤氏だけはアカンという話だったが、実際に見てみると印象が違う。SNSなどの斎藤氏の人気はヤラセかと思っていたが、淡路島の田舎で動員なんてかけようがない。これはほんまもんかもしれない」 稲村氏の陣営でも、こんな話を聞いた。 「斎藤氏の街頭での人気ぶりは伝わっている。正直、うちが本命という意識はあったが、これはちょっと違う。県民の意識が『斎藤氏は悪人』から、変化しつつある。悪名は無名に勝るや」 自らの疑惑によって失職した斎藤氏だが、ネットを駆使した選挙戦で“石丸旋風”の再来を起こし、まさかの再選を果たすことがあるのだろうか。 (AERA dot.編集部・今西憲之)
今西憲之