「え、本編では言ってないの!?」ガンダムの「超有名セリフ」なぜ劇中とは違う形で広まった?
アニメ『機動戦士ガンダム』は1979年の初放映から45年が経ち、今もなお新作が生まれている巨大コンテンツとなった。「ガンダム」という単語やトリコロールカラーのメカのイメージは、アニメをまったく観ない層にまで定着している。 【画像】「あれっ…確かに聞いたことない」 νガンダムに乗ったアムロのセリフ 初代ガンダムの主人公「アムロ・レイ」や、宿命のライバルである「シャア・アズナブル」の名前も幅広く知られており、彼らの有名なセリフ「アムロ、いきまーす!」や「坊やだからさ」などは作品の代名詞ともいえる。 しかし、なかにはアニメ本編では実際に言っていないセリフだったり、劇中とは少々違うかたちで世に広まってしまったケースも存在する。今回はそういったセリフを取り上げ、原作ではどうだったのかを振り返っていこう。
■才能あふれるパイロットと若き艦長の衝突
冒頭で紹介したアムロやシャアのセリフと同じくらい、世の中に知れ渡っている有名なセリフがある。それはアムロの「殴ったね、親父にも殴られたことないのに!」というセリフだ。 アニメの第9話でガンダムに乗って戦うことを拒否したアムロを、ホワイトベースの艦長である「ブライト・ノア」が叱責し、殴打した際に飛び出した言葉だ。 だが実際の劇中のセリフは、これとは微妙に異なる。正確にはブライトによる一度目の殴打の直後、アムロは「な、殴ったね」と言い返し、しばらく二人のやり取りが続く。そしてCMを挟んでカイやハヤトの戦闘シーンが描かれたあと、ブライトの二度目の殴打シーンがある。 そのときアムロが発したのが「ニ度もぶった」「親父にもぶたれたことないのに!」というセリフである。 つまり「殴ったね、親父にも殴られたことないのに!」というセリフは、厳密にいえば劇中では使われておらず、実際は少々離れたシーンのセリフをつなぎ合わせたものが、世間一般に広まってしまったことになる。 これは当時15歳のアムロが「怖いの嫌なんだよ」とガンダムに乗って戦うのを拒否した場面でのことで、追いつめられた彼は責められない。だが、叱責したブライトも当時はまだ19歳の若者だ。しかもホワイトベースを任されるという重責を担い、多くの人命がかかった危機的な状況下に置かれている。そんな中、つい手を出してしまったブライトを責めるのも酷といえるかもしれない。 なお、葛木ヒヨン氏によるコミック『機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男』(KADOKAWA)には、ブライトが当時のことを振り返る描写がある。ブライトは、艦全体のことで手一杯で、ひとりひとりを顧みるのがおろそかになっていたと後悔していた。