埼玉・深谷の「ディープバレー」構想 農業特化のビジコンで表彰式
農業版「シリコンバレー」を目指す埼玉県深谷市主催のビジネスコンテスト「ディープバレー・アグリテック・アワード2024」の表彰式が18日、深谷市役所で開かれた。自治体主催の農業技術に特化した顕彰制度は全国的にも珍しく、第6回となる今回は過去最多の31社がエントリーした。米国の農業技術推進機関が特別協賛団体として加わるなど、グローバル展開も視野に入ったようだ。 ディープバレーは「ディープ(深い)」と「バレー(谷)」をかけて「深谷」を表している。米国のハイテク集積地シリコンバレーの向こうを張っての心意気である。 深谷市は、最先端技術を農業分野に生かしているアグリテック企業の誘致(ディープバレー構想)に取り組んでおり、その呼び水として19年に同アワードを創設した。農業、食にまつわる技術、アイデアのコンテストで、専門家が将来性などを審査し、上位入賞者には市が計1000万円を出資金として提供する。市は当該企業の誘致を含め、その技術を生かした農業振興につなげる狙いがある。 今回は、化学物質を使わずオレンジの皮などを原料にした新素材EFポリマーを開発した沖縄科学技術大学院大学発のベンチャー企業「EFポリマー社」が最優秀賞に、AI(人工知能)を活用した無人販売所を提案した「積水樹脂」が優秀賞に決まった。 新素材EFポリマーは土壌に混ぜることで保水性が向上し、農薬の低減も図れるとしている。今回から参加した米ノースダコタ州の農業技術機関グランドファームが早速熱い視線。ジョン・マンさんは「干ばつ対策になる」と称賛し、同機関が所有する実験農場の使用提供を申し出た。 EFポリマー社取締役の下地邦拓さんは「ディープバレーと聞いて、深すぎてはい上がれないのではと心配していたが、深谷市の懐の深さのおかげで世界への道が開けそう。今後もこの関係性を大事にしていきたい」と述べ、小島進市長を感激させていた。 協賛企業として埼玉りそな銀行、神鋼鋼線工業も加わり、同アワードの存在は全国の関係者の間で知られてきたよう。市産業振興部の小暮正樹係長は「これまで参加企業は20社前後でしたが、今回は急増した。深谷市が農業に強いまちであることが知られてきたのだと思います。米国の団体までが注目してくれているのはうれしいですね」と語った。【隈元浩彦】