米探査機が近接通過実施へ、太陽から610万キロ 史上最接近
(CNN) 米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」は24日、太陽への接近通過(フライバイ)を行い、太陽表面から610万キロ以内に接近する。これは人類が太陽に最も近づく記録的な飛行となる。 【画像】探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の模型を手にするユージ―ン・パーカー博士 NASAによると、探査機は時速69万2000キロで飛行する。この速度は米首都ワシントンから東京まで1分未満で到着できるほどの速さだという。NASAは16日、ユーチューブで、この高速接近通過によりパーカー・ソーラー・プローブは史上最速の人工物になると発表した。 2018年8月12日に同探査機が打ち上げられて以降、このミッションは今回の歴史的な節目に向けて準備を進めてきた。打ち上げにはユージン・パーカー氏も出席。同氏は太陽研究分野である太陽物理学の先駆者となった天体物理学者で、探査機の名前の由来となった人物だ。 この探査機は21年12月に太陽の大気「コロナ」を飛行して粒子と太陽磁場の試料採取に成功。「太陽に触れた」最初の宇宙船となった。 7年間のミッションのうちの6年間でパーカー・ソーラー・プローブは太陽にまつわる大きないくつかの謎を明らかにするためのデータを収集してきた。太陽物理学者は長い間、太陽から絶え間なく放出される粒子である「太陽風」がどのように生成されるのか、また太陽のコロナがなぜ表面よりもはるかに高温なのかを疑問としている。 科学者は、太陽の外層大気からイオンガスの大きな塊であるプラズマと磁場が放出される現象「コロナ質量放出」がどのように構成されているかを理解したいとも考えている。 こうした放出が地球に向けられると、地球の磁場に大きな乱れを引き起こす「磁気嵐」となり、衛星や電力・通信インフラに影響を及ぼす可能性がある。 パーカー・ソーラー・プローブが最も太陽に近づく最後の接近通過によって長年の疑問が解決する可能性がある。同時に未知の太陽領域を探索することで新たな謎が明らかになるかもしれない。 探査機の最後の接近通過は3回行われる。初回は米東部時間24日午前6時53分ごろで、残りは来年の3月22日と6月19日に予定されている。 パーカー・ソーラー・プローブが最初に打ち上げられてからわずか1年あまりで、太陽は新たな活動周期に入った。NASAによれば、探査機が太陽に最も接近するにあたって太陽は「極大期」を迎えており、このミッションは太陽活動周期の大半とその大小の推移を観察する機会を得たという。