天皇の外戚として権力を固めた策謀家・藤原兼家
1月7日(日)放送の『光る君へ』第1回「約束の月」では、まひろ(のちの紫式部/落井実結子)の父・藤原為時(ふじわらのためとき/岸谷五朗)の出世と、母・ちやは(国仲涼子)の悲劇が描かれた。 ■運命の出会いの一方に訪れた悲劇 陰陽道(おんみょうどう)を司る役所・陰陽寮の庭で安倍晴明(あべのはるあきら/ユースケ・サンタマリア)が京に凶事が訪れることを予言した977(貞元2)年の暮れ、のちに紫式部となるまひろの家は、貧しさに苦しんでいた。まひろの父・藤原為時が不器用な性格ゆえに上役にうまく取り入ることができず、官職を得られずにいたためだ。 京では、上級貴族が熾烈な出世争いを繰り広げていた。貴族の出世の手段のひとつは、娘を入内(じゅだい)させること。入内とは天皇と結婚して内裏に入ることだ。天皇と縁続きとなることで、自らの権威を高めていたのだった。 一方、為時は、自分の博学をもとに官職に任じられることを目指している。そんな為時のもとで育ったまひろは、自然と漢籍を諳んじられるようになっていた。 そんなある日、藤原兼家(かねいえ/段田安則)の三男・三郎(のちの藤原道長/みちなが/木村皐誠)は、散楽に出掛けた。藤原氏を風刺する芸能劇だが、これを楽しめるほど、三郎は大らかな性格で、姉の詮子(あきこ/吉田羊)や母の時姫(ときひめ/三石琴乃)らにかわいがられている。その一方で、二男の道兼(みちかね/玉置玲央)からはいわれなき暴力を受けてもいた。 散楽の日に、まひろと三郎は偶然に出会って、不思議と惹かれ合う。 二人の出会いをよそに、兼家は為時に東宮(のちの花山/かざん/天皇)への漢文の指南を依頼する。さらなる出世を目論む兼家は、博学の為時を利用して宮中の情報を得ようとしていたのだった。 為時が職を得られたことを感謝するちやはは、娘のまひろを伴い、神社にお礼参りに出掛けた。その帰り道、馬に乗っていた道兼の前に飛び出して落馬させてしまったまひろは、怒りに任せた道兼に突き飛ばされる。そして謝罪するちやはを、怒りのおさまらない道兼は刀を取って刺殺してしまう。 従者の言動から、犯人を道兼と認識したまひろだったが、それを告げられた為時は、自らに職を斡旋した兼家の息子と知り、口をつぐむことを決意。まひろは納得できずに泣きじゃくるのだった。 ■策謀をめぐらせ権威を高めた兼家 藤原兼家は929(延長7)年に生まれた。父は右大臣を務めた藤原師輔(もろすけ)。 968(安和元)年に娘の超子を入内させることで従三位、翌年には中納言に昇進した。さらに972(天禄3)年には大納言にまで昇った。 しかし、兼家の兄である兼通(かねみち)は、自身に先んじた昇進を苦々しく思っていたらしい。