旅先でふるさと納税、「現地決済型」広まり 静岡県内68%が採用
旅行先などで寄付し、返礼品としてご当地でサービスを受けられる「現地決済型ふるさと納税」が静岡県内市町に広がっている。寄付者の自宅へ品物を郵送する従来の仕組みと異なり、地元に足を運んでもらって消費の波及効果を狙う。現地決済型の採用は68%の24市町に上り、前年度から約3割増えた。さらに3市町も導入に向けて準備を進めている。 河津町は8月に現地決済型の受け付けを開始し、これまでに旅館や飲食店、レジャー施設など地域性の強い町内8店舗が登録。利用者のスマートフォンに会計時の支払い額に応じた寄付額が表示され、その場で寄付の手続きをすると支払いが済む。20日に導入したホテル四季の蔵(同町)の岡本桂専務は「宿泊券を事前送付する作業が不要。ふるさと納税を使えることを知らないお客さまも多く、利点は大きい」と期待する。 会計額から寄付額を逆算するシステム「ふるさとGO」を提供するのは、沼津市のマイウェイ。現金との併用や釣り銭など支払いの過不足によるレジでの手間がなく、大幅な値上げで必要となる市町や国への申請手続きも不要になる。4月に提供を開始してから県内5市町が導入し、来春までに計10市町に広がる見込み。岩崎啓社長は「店と利用客の双方が使いやすい形に開発した。地域を訪れてサービスを受け、応援したいと思えばすぐに寄付できる」と説く。 数年前に各地で導入が始まった現地決済型ふるさと納税は、寄付額に応じ地域の対象店舗で飲食や買い物に使える電子クーポンを付与するシステム、特産品やゴルフ場の利用券をその場で受け取れる自動販売機などもある。新型コロナウイルス禍の収束で体験などの「コト消費」に関心が集まる中、各自治体は地域の特色を生かして人を呼び込む観光戦略を強める。河津町の担当者は「まずは来てもらうことが重要。周遊して町のいろんな魅力に触れれば、さらなる経済波及効果が期待できる」と語る。 <メモ>静岡県内で現地決済型ふるさと納税を取り入れる市町数は東部17、中部3、西部4で、このうち計10市町が本年度に開始した。未導入の自治体も事前の寄付に対して現地の店舗で使える電子マネーやクーポンを付与するなど、地域のにぎわい創出にふるさと納税を活用する動きが目立つ。 返礼品は地場食材を使った食事、温泉旅館の宿泊などのほか、自然を満喫できるキャンプ場やゴルフ場、レジャー施設の利用などさまざま。いずれも地域との関連が強いサービスなどに限られる。近く現地決済型の導入に向けて準備を進める3市町のほかにも、利用対象の店舗を増やしたり、システムを拡充したりする動きがある。
静岡新聞社