ホラーより怖い!未体験のワン・シチュエーション映画3本を有村昆がレコメンド「100点満点の台本」
究極のワン・シチュエーション映画『FALL/フォール』
納涼という意味では、雪山のリフトに取り残されてしまう『フローズン』という映画がおすすめなんですけど、これはサブスク配信にあまり入っていなかったので、まずはこの『海底47メートル』から観ていただければと思います。 ワン・シチュエーションものって、設定だけなら誰でも思いつくかもしれません。取り残されたらイヤな、絶望的な場所を考えればいいだけですから。でも、そこからどうやって脱出するかというアイディアや、サスペンスを持続させる脚本力が重要なんですよね。 それにどうしても同じような画面が続いてしまうので、演出的なメリハリも試される。粗製乱造される安っぽいジャンルと思われがちですが、スタッフ側の映画偏差値が高くないと面白くならないんです。 そこでもう1本、これぞ究極のワン・シチュエーション映画といえるのが『FALL/フォール』です。 クライミングが趣味で、いろいろあって心に傷を負っているベッキーという女性を、友達のハンターという女性が、人里離れた荒野に立つ、いまはもう使われていない高さ600メートルのテレビ塔に登ろうと誘うんです。登頂すればベッキーがトラウマを乗り越えられると思ったんですね。 ふたりは無事、頂上までたどり着くんですが、登る時に使っていたハシゴが崩落してしまう。高さ600メートルの狭い足場に取り残され、降りることもできず、身動きがとれない。携帯の電波も圏外。さぁ、ふたりはどうなってしまうんでしょうか…。 これはもうあまり語らず、作品を観ていただきたい。次から次に襲ってくる危機、そしてサバイバル。これこそ100点満点の台本だと思います。 それに加えて、極限状態になると人間はどうなってしまうのか、という部分にも踏み込んでます。やっぱり幻覚とかも浮かんでくるんですよね。 右腕が岩に挟まれてしまう『127時間』でも、そんな究極に追い込まれた人間の精神状態が描かれてました。ゾクゾクした感覚を味わいたいなら、むしろ『127時間』のほうがいいかもしれません。 ワン・シチュエーションものは、映画の面白さがシンプルに伝わるし、もし自分だったらどうするかという想像をさせるところがホラーよりもリアルで、ヒヤヒヤするんだと思います。刺激的な時間がほしいかたに、観てほしいジャンルですね。
ENTAME next編集部