中国に奪われた自由 チベット高原から強制移住させられた人々が暮らす場所
甘粛省の小さな町中に建てられた、チベット人居住区の一つを丘から見下ろした。中国によって強制移住させられた遊牧民たちの暮らす場所だ。ずらりとプレハブ長屋の並んだ居住区の姿は、東日本大震災後の仮設住宅を思い出させた。 「世界の屋根」と比喩される、世界最大級のチベット高原。チベット人の多くは元来、この土地で遊牧や農耕をしながら自然と共に暮らしてきた。中国はそんな彼らから土地を奪い、定住を強いた。地下資源や観光地の確保は勿論、チベット人の抵抗力を削ぐ目的もある。定住によって家畜の数は制限され、牧民は一層貧しくなるためだ。埋蔵資源が豊富で、さらにインドやネパール、ブータンに近く、軍事的にも重要なチベット高原を中国が手放すはずがない。果たしてダライ・ラマやチベットの人々の抵抗が、実を結ぶ日など来るのだろうか。 居住区はまるで、自由を奪われた人間の檻のようにも見えた。 (2015年10月撮影)