アジア大会の混乱環境を乗り越えて森保U-21ジャパンが16強突破戦へ挑む
たしかに、ディフェンスラインから攻撃を組み立てて、マークを剥がしていくのはチームコンセプトのひとつ。しかし、目的は繋ぐことではなく、いかにハーフウェイラインを越すか。指揮官も「状況に応じた判断が大事だ」と口が酸っぱくなるくらい話しているが、1月のU-23アジア選手権、3月のパラグアイ遠征と、ビルドアップにおけるミスで簡単に失点するゲームが続いているのだ。指揮官が熱くなるのも当然だろう。 「これまで本当に蹴っていいんだろうかという迷いがそれぞれにあったと思う」と明かしたのは、3バックの左を務める杉岡大暉(湘南ベルマーレ)である。 「でも、今日の練習ではっきりやる(大きく蹴る)ところはやっていいということで、GKもはっきりやっていたし、何回かミスも起こりましたが、今日ミスしたことで、試合ではなくなると思います」 今大会のここまでの傾向のひとつに、東南アジア勢の躍進がある。インドネシアはパレスチナ、香港などと同居したグループAを首位で突破し、マレーシアはA代表のエースであるソン・フンミン(トッテナム)を招集した韓国を下し、日本もベトナムに不覚を取った。しかも、日本がベトナムに敗れたのはアップセットなどではない。 たしかに日本が21歳以下のメンバーで臨んでいるのに対し、ベトナムは23歳以下に3人のオーバーエイジを加えて戦っているが、彼らは今年1月のU-23アジア選手権で準優勝した力のあるチーム。19番のグエン・クアン・ハイは中村俊輔を彷彿とさせる左利きのテクニシャンで、オーバーエイジで10番のグエン・バン・クエットもスピードと技術を備えた好選手だった。近い将来、A代表同士の戦いでも、苦戦を強いられるときがくるかもしれない。 日本の決勝トーナメント1回戦の相手は、韓国を下したマレーシアである。おそらく彼らも日本のビルドアップを狙ってハイプレスを仕掛けてくるだろう。気持ちで負けず、状況に応じて最適な判断を下せるかどうか。杉岡が言う。 「次は負けたら終わり。でも、しっかり練習できて、コミュニケーションの部分も深まったので、一体感を持って戦えれば必ず結果はついてくると思う。結果にこだわってやりたいです」 指揮官が大会前に掲げた目標は「ベスト4以上」。その目標に到達するには、あと2勝以上が必要だ。本来の実力を示して、ベスト16をしっかりクリアしてもらいたい。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)