宮間FWの奇策が失敗。自力突破消滅のなでしこ佐々木監督の采配に疑問。
憔悴しきった心を引きずりながら、なでしこジャパンのキャプテン、宮間あや(岡山湯郷Belle)は試合後の取材エリアに姿を現した。 「勝つことだけを考えて臨んだので、結果はとても残念。内容は悪くないとは思いますけど、勝てないことが一番悪い」 大阪・キンチョウスタジアムで2日に行われた、リオ五輪出場をかけたアジア最終予選の第2戦。後半39分に先制した3分後にミスから追いつかれる展開の末に、日本は韓国と1対1で引き分けた。オーストラリアに喫した完敗に続く悪夢のドロー。6ヶ国中で5位という低迷状態は変わらず、上位2ヶ国に与えられる五輪出場権を自力でつかみ取る可能性が消滅した。 初戦に負けた後の宮間は胸を張り、毅然とした表情で巻き返しを誓っていた。一転して、韓国戦後は伏し目がちで明らかに落胆している。 「いい形はできているんですけど、得点にならない。相手につかまえられずにボールを受けるといった、日本のいい部分は出せたと思うんですけど、攻撃のスピードを上げるところや相手の隙を突くところで、まだ少しだけずれがある。そのずれが何なのか。そんなことを考えている場合ではないんですけど、とにかく強引にでも合わせて得点していかないといけない」 中1日の強行日程を考慮した佐々木則夫監督は、先発メンバーを6人入れ替えた。迎えたキックオフ。センターサークル内に陣取った宮間が、そのまま最前線でプレーする。佐々木監督から託されたポジションはフォワードだったと、試合後に宮間は明かしている。 「前で絡んでいけということだったんですけど……」 オーストラリア戦ではボランチで先発したが、157cm、52kgの小さな体ゆえに、大柄な相手のプレッシャーにさらされた。選手起用を含めた戦法がマンネリ化していると、相手に看破されていたことを佐々木監督も痛感したのだろう。 相手のマークが集中する大黒柱、FW大儀見優季(フランクフルト)の周囲で、宮間が自由自在に攻撃に絡む。右から川澄奈穂美(INAC神戸レオネッサ)が、左からは横山久美(AC長野パルセイロ・レディース)が得意のドリブルを積極的に仕掛ける。開始4分には、横山が思い切りよく放ったミドルシュートがバーを叩く。これまで見せたことのないなでしこの新しい攻撃に面を食らった韓国の選手たちが、自陣にほぼ釘づけにされる時間帯が続く。前半だけで日本が放ったシュートは、10本で韓国が2本。それでもゴールが遠い。 宮間によれば、所属チームでは「フォワードでプレーした経験はある」というが、代表チームでは、ほぼ初体験。ちょっとした感覚の違いが宮間の言う「ずれ」を生み出す要因になっていたとすれば、奇策でもある「フォワード宮間」は準備不足だったと言わざるを得ない。