世界でも類をみない難しい技術で作る 世界で評価される「川俣シルク」
福島県内で長く愛される老舗の今にスポットを当てる「老舗物語」。今回紹介するのは、川俣町の伝統産業を継承する会社です。世界でも類をみない難しい技術で世界に誇れる製品を生み出しています。 【写真を見る】世界でも類をみない難しい技術で作る 世界で評価される「川俣シルク」 里山に囲まれた自然豊かな川俣町。このまちで1300年以上続いている伝統産業が絹織物です。今も残る「川俣シルク」は品質が高いと世界から評価を受けています。 そんな絹の町で伝統を守り続けているのが「紺野機業場」。玄関には趣を感じる看板が掲げられています。 --紺野峰夫さん(紺野機業場 5代目)「今年で(創業して)106年目になります。創業以来ずっとシルクを織り続ける会社です。」 創業大正7年。川俣町にある織物会社の中でも最も歴史が古いといいます。工場にずらりと並ぶ機織り機。大きな機械で力強く織られているものが川俣シルクです。なんとも繊細で薄い生地なのが特徴です。 --紺野峰夫さん(紺野機業場 5代目)「非常に薄い、「シルクオーガンジー」と呼ばれている生地が川俣シルク。触ってみると蜘蛛の糸のように細いので、扱いも非常に大変です。」 髪の毛の3分の1という細さの絹糸を用いて織られているシルク。思わず触れたくなるしなやかさです。この美しい生地が生み出される理由。それはここでしか受け継がれていない技術にありました。 これは水が入ったバケツの中には絹糸が浸かっています。大事な糸を濡らしてしまって大丈夫なんでしょうか? --紺野峰夫さん(紺野機業場 5代目)「川俣だけでなく日本で唯一、細い糸を濡らして織るということが他ではできない織り方になっています。髪の毛とシルクの糸は近い特性がある。髪の毛も濡らすとしなやかになるように、シルクも濡らすとしなやかな糸に変わります。非常に細い糸を専門として扱うので、ぬらすほど切れやすくなってしまいます。それを上手に技術でカバーすることで、どこにもないような美しい生地をつくれます。」 「濡れよこ」と呼ばれる、細い糸を湿らせて織るという伝統的な製造方法は、世界でも類を見ない難しい技術と言われていて、日本で唯一、紺野機業場が継承しています。この技法で、独特な柔らかさとハリ、透明感がうまれるんです。世界に誇れる技術だからこそ技法の継承を大切にしている紺野さん。しかし家業を継ぐ際、織物という事業に限界を感じていたといいます。