大谷選手の「1015億円・長期後払い」契約。ファイナンシャル・プランナーが心配する「インフレリスク」とは?
筆者作成 10年後の大谷選手の年俸の現在価値は5312.5万ドル、現在提示されている金額である6800万ドルと比較すると約22%減となってしまいます。 これはあくまでも今後10年間のインフレ率が2.5%と想定した場合であり、この数値が上振れすれば、さらに大谷選手の2034年における年俸価値は減っていきます。インフレ率と、大谷選手が受け取る2034年の年俸の「現在価値」を表にまとめました(図表3)。 図表3 大谷選手が受け取る2034年時点の6800万ドルの「現在価値」
筆者作成 アメリカにおける今後のインフレ率が高いほど、大谷選手の受け取る年俸の価値はどんどん減っていってしまうことがわかります。もちろん、2034年以降に受け取る年俸の価値も、インフレが起きればそれだけ「現在価値」は目減りします。 大谷選手が2024年から受け取る年俸200万ドル、2034年から受け取る6800万ドルの現在価値を時系列にまとめたものが図表4です。2.5%のインフレがずっと続くと仮定しています。 図表4 今後大谷選手が受け取る年俸の「現在価値」(インフレ率2.5%の場合)
筆者作成 年俸が支払われる最終年(2043年)においては、実に39%、4割も価値が減ってしまう計算です。これは決して無視できるものではありません。
長期契約で損をしないための契約とは?
このような長期契約においては、インフレ環境が続けば続くほど、選手側が大きな不利益をこうむることを解説しました。 インフレが恒常的に起きるアメリカのような国においては、長期契約をする場合、選手側は年俸の「現在価値」を意識して契約を設計する必要があると言えるでしょう。 具体的には、毎年2.5%のインフレが起きると想定するのであれば、10年後に大谷選手が受け取る年俸は、現在価値(今年に年俸を受け取る金額)と比べて「約28%増し」とする契約を行えば、大谷選手側が損をすることはありません。 もちろん、このような契約をしたとしても、想定を上回るインフレが起きてしまえば、大谷選手にとって不利な契約となってしまいます。 今のところ、大谷選手がドジャースとの契約でこのようなオプションをつけているということは明らかになっていません。仮に年3%程度のインフレが起きたとしてもなお超高額の契約であり、大谷選手は気にしないのかもしれませんが、ファイナンシャル・プランナーとしては大変モヤモヤする状況になっています。 今後の報道でさらに契約の詳細が明らかになっていくと思いますが、大谷選手の一ファンとして、またファイナンシャル・プランナーとして、注目していきたいと思います。 出典 International Monetary Fund(国際通貨基金) 執筆者:山田圭佑 FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
ファイナンシャルフィールド編集部